2020年12月28日月曜日

Olly Richards "101 Conversations in Intermediate French" [中級フランス語の101会話]

なんか会話の勉強でもしようと思って読んだが…。確かに101の会話が収録されているのだが、すべての会話が全部つながって一つの物語になっており、会話集というより、これ一冊が映画の台本みたいな感じで読める。著者は最近流行りの「だいたい分かればいいから辞書なんか引かないでどんどん読め」というスタンスの人で、対象読者としてはA2で十分と言っている。少し難しい単語には全部英訳がついているので、確かにA2でほぼ筋は終えるかもしれないが、普通に接続法も出るので、完全にスキなく理解するためにはB1は必要だ。

(だいたいどの言語でも接続法は上級扱いだが、実際には些細な日常会話でも接続法は避けられないのが通例で。)

で、これが会話の勉強になるかというと…。この本の最大の問題は話が面白過ぎるという点にある。各会話の冒頭に地の文として説明があり、その後に会話が続き、この時点で映画台本だが、内容が警察の腐敗を扱っており、アメリカのテレビシリーズ「24」のように状況が二転三転し、バカバカしいとは思いながら、読ませるのは間違いない。少なくとも語学学習書と称するもので、こんなに内容が大人向きで面白いものは見たことがない。その結果、話は確かに面白かったが、特に有益なフレーズとかが記憶に残ることもなく、しかしextensiveとか多読とかいうのはこういうことなのだろう。冷静に読み直せば有益な文も回収できるのかもしれないが、わざわざ読み直す気にもならない。そもそもわたしはTCFでだいたいB2レベルをクリアしており、実際この本はわたしには易し過ぎるのだが、まあ、それでも面白かった。

Le pire problème avec ce livre est que l'histoire est trop intéressante. Je ne souviens aucune phrase utile, parce que je me suis concentre sur le contenu.

Independently published (2020/3/11)
言語:フランス語
ISBN-13 : 979-8613055326

2020年12月21日月曜日

Howard Phillips Lovecraft "The Call of Cthulhu" [クトゥルーの呼び声]

少し前になぜか流行ったクトゥルー神話の中の一つの短編。しかし、信者の人には申し訳ないが、これ自体が果たして名作かというと…。主題自体は面白いのでこれを原案に作家何人かで会議してマンガなり映画なりに…みたいな…。もともとホラー小説があまりというところもあるけど、これみたいにクトゥルーの物理的な実体が出てくると盛り下がるのを感じる。そういうことでは"The Shadow over Innsmouth"のほうが面白かったが、どっちにしろマンガでも読んだほうが良さそうだ。

Ia! Ia! Cthulhu fhtagn! Ph'nglui mglw'nafh Cthulhu R'lyeh wgah-nagl fhtaga....

Independently published (2020/8/5)
言語: : 英語
ISBN-13 : 979-8672658582

2020年12月17日木曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts Vol. 22: 1993-1994" [Peanuts完全版1993-1994巻22]

Martin Luther Kingの話をPeppermint PattyとFranklinがしているが、このマンガじゃないと無理な話かもしれない。Ethanが登場してインディアンの矢とかいう話も、今じゃ無理なんだろうな。

時事としてはSnoopyが最高裁判事になるというエピソードがあり、Snoopyが指名されると上院司法委員会の公聴会に呼び出されることになる。Linus "Now, you're facing the senate judiciary committee, and senator Biden asks you a though question.. How will you respond?"ここで出てくるBidenが現時点の次期米国大統領だ。あんまり政治家の名前の出てくるマンガではないが、Bidenは上院司法委員会に長くいて有名だったんだろうな。時事というより薄っすら記憶にある話で"Men are from Mars, Women are from Venus"というタイトルは懐かしい。Lucyが携帯電話を持ち始めた。テレビは相変わらずデカいが、リモコンは使っている。

Beagle Scoutの点呼で"Woodstock! Conrad! Bill! Raymond! Fred!"というのがある。Snoopyにウサギを追わせようとするエピソードが超久しぶりに出たが、これはFriedaの役だったはず。見た目が全然違うのは、作者も適当なのだろうか。 ここまでこのマンガでは、野球アメフトアイスホッケーは良く出ていたが、バスケだけはあまり出なかった。ここから急に増えてくる。LinusとSnoopyがからまって寝ているシーンは前からあったと思うが激増。Spikeが砂漠で一人で暮らすことになった理由が語られるが、かなり重要なエピソードだ。LucyとCharlie Brownのフットボールの件が音だけで画面に出なかったのは初めてのはず。

Joe Biden was mentioned by Linus here!

Canongate Books Ltd (2015/6/4)
言語: : 英語
ISBN-13 : 978-1782115199

2020年12月6日日曜日

Tom McLeish "Soft Matter: A Very Short Introduction" [やわらかい物質:非常に短い入門]

目次:1.やわらかさの科学 2. 乳状性と混濁とインク 3.粘液性と粘性 4.ゲル化と石鹸性 5.真珠性 6.生命性 結論.やわらかい物質から生命へ

タイトルが魅力的過ぎるので即買いだが、期待は裏切られなかった。自然科学系VSIで、なかなかここまで初耳な世界に出会うことは最近少ない。単純なコロイドの話とか液晶の話くらいは聞いたことがあるが、ポリマーのやわらかさと量子力学の関係とか、液晶と超電導の関係とか普通は知らないだろう。ちょっと勉強になることが多過ぎて簡単に紹介できないが、話の頂点は液晶の自己組織性から生物の動作に至るところだ。普通に大学くらいで勉強している人間でも、バクテリアの運動はバクテリアの意志で行われているくらいにしか思っていないと思うが、この本を読んでいると、ただの化学反応にまで還元されつつあることが分かる。なぜただの化学反応がバクテリアを特定の方向に移動させられるのかというと、構成分子自体に方向性があり、たとえば石鹸の疎水基と親水基や液晶の分子みたいなことだが、これにブラウン運動などか加わると統計的に一定方向に移動することになるというような、生物と物理化学の隙間がどんどん埋められていく。

ただ、この本、VSIの中でもかなり難しいほうの本であるのは間違いない。難しい話をかなり易しく書いてくれてはいるが、有機化学やら量子力学やら超電導やら統計熱力学やら結晶学やら、大学レベルの広範な世界からの総合科学みたいなことになっている。しかし、考えてみれば、我々の体や目の前の液晶をはじめ、身の回りにはやわらかい物質が多いのに、この巨大な世界が盲点になっていた。それはこの本を読んだから気付いたことで、知らなければ盲点は盲点と認識できない。一応、多くの人は流体力学くらいはやるので、粘性とかレオロジーとかいいう言葉くらいは知っているかもしれないが、この本は原子レベルまで戻って、結晶の対称性から論じているから、想像がつかないかもしれない。紹介しきれず、とにかく一読してもらうしかない…。

I really appreciate this book.

ISBN-13 : 978-0198807131
Oxford Univ Pr (2021/1/2)
言語:英語

2020年12月1日火曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts Vol. 21: 1991-1992" [Peanuts完全版1991-1992巻21]

記憶のあるマンガが増えてきた。ここから先は大体一度は読んだことがあるのかもしれない。このマンガでスクリーントーンは初めて見た気がする。Marcieのセリフ"How is it you are called?"と"What is it I am thinking of?"というのはフランス語直訳調ということなんだろう。Cormac登場。時々レギュラー陣より若い子が出てくるのはかわいい。Franklinが黒く描かれていないコマがあるが、単なるミスかpolitical correctnessか? Woodstockが経理をする時にサンバイザーをしているが、この時代は確かに事務は袖カバーのほかにサンバイザーが普通だったのだ。

Still lots to enjoy.

ISBN-13 : 978-1782115182
Canongate Books Ltd(2015/6/4)
言語:英語

2020年11月26日木曜日

Random House Direct "Spanish 2021 Day-to-Day Calendar" [スペイン語2021日めくりカレンダー]

毎日スペイン語を一フレーズ学べる机上サイズの日めくりカレンダー。当然まだ読んでいないが、まあ勉強になるだろう。スペイン語は西検四級を取って以来、基本的には勉強していないので思い出す必要がある。この程度のスペイン語なら分からないこともなさそうだ。職場にはSports Illustratedカレンダーを置こうと思っていたが、やはり無理があるような気がしたので、こっちにする。テレワークが普通になったらあまり意味がなくなってしまうが、現状、そうなりそうにない…。

Mi novia speaks Spanish so I want to learn some phrases.

ISBN-13 : 978-1524857417
Andrews McMeel Publishing(2020/7/21)
言語:英語

Jeff Kinney "Diary of a Wimpy Kid #15: The Deep End" [軟弱な子供の日記15:深い底]

「グレッグのダメ日記」シリーズの本編としては15作目だが、日本語訳はとうとう出なくなったか…。スピンオフが続いて本編は一年ぶりだからしかたがないか…。ちと残念な気がする。ある程度の品質は常に確保されているわけだしな…。それに、別に1から読まないといけないものでもない。

今回の話は一家でcamper vanで所謂グランピングみたいなことだが、例によってドタバタで、日本なら普通に警察案件としか思えないような話もある。あらためて考えると、このシリーズは当初からPTAが好む児童書とも思えなかったし、だからこそ人気があるのだとしても、親から有害図書と認識されたら売れないわけだし、その意味でも日本語訳が停止するのもやむを得ない。わたしてしても関係ないから笑って読んでいられるんで、実際にこんなキャンプ場があったら近寄りたくないものだ。まあ日本人が「アメリカは酷いなあ」と思って読む分にはいいのではなかろうか。

Hilarious.

ISBN-13 : 978-1419748684
Harry N. Abrams (2020/10/27)
言語: : 英語

2020年11月4日水曜日

Peter Farrell "Math Adventures with Python" [Pythonによる数学の冒険]

Pythonで数学を学ぶという本だが、数学について言えば、日本では高校生でも楽に読めるだろう。Pythonについては、そもそもプログラミング自体の初心者を相手にしている感じで、結局、全体的に高校生に向いていると言える。英語も高校生で読めるような気はする。従ってムダにbrainyな高校生くらいが夏休みに読むのだろうか。大学生だと少し易し過ぎると思うが、本当にプログラミング初心者ならありかもしれない。ちとわたしには対象読者を正確に判定しかねる。個人的にはCOVID-19でヒマな時期に入手したもので、多少Pythonが分かったが、もちろん易し過ぎた。

For brainy high-school students.

ISBN-13 : 978-1593278670
出版社 : No Starch Press; Illustrated版 (2019/1/8)
言語:英語

2020年10月16日金曜日

Curt Siodmak "Donovan's Brain" [ドノヴァンの脳髄]

これは面白くて二日で読んだ。実際、何度も映画になり、翻訳もされている。マッドサイエンティストが脳を培養器に浮かべている、という古典的なホラーSFの絵を確立した名作だ。1943年の出版らしい。

ネタバレしない程度に言うと、脳を生体外で生かす研究をしている医者が、事故で偶然生きている人間の脳を盗み出すことに成功して培養器で研究し始める。テレパシーで脳の思考を読み取ることに成功するが、この脳が元富豪かつ極悪人で、そのうち医者の体を乗っ取って犯罪的なことをし始めるという…。

良く言えばハードボイルド、悪く言えば何の工夫もない文章で、最初のうちはそんなに面白くないような気もしたが、どんどん謎が深まっていく。謎というのは脳の構造の謎ではなくて、培養器の中の脳が科学者を操って何をしようとしているのかという謎で、そんなに複雑すぎることもなく、わたしでもついていける話だ。

基本的にはこの医者の日記という形式だが、この医者自体がそもそもサイコパスで、サイコパスの主観手記はそれだけで面白い。ただ、後半になると、脳のほうがそれを上回るサイコパスぶりを発揮し始めて、医者は邪悪な霊に体を乗っ取られた正常人みたいなスタンスになり、それはそれで面白いが、面白さの種類が変わっている。

この小説は、児童向けにも何度も翻訳されていて、わたしも小学生の頃一度読んだ記憶がある。翻訳というより翻案に近かったと思うが、今原作を読んだ感じのほうが面白い気がした。

The horror SF with the image of "a brain in a test tube".

ISBN-13 : 978-1584450788
Pulpless.Com Inc (1999/7/4)
言語: : 英語

2020年10月13日火曜日

Matthew Cobb "Smell: A Very Short Introduction" [嗅覚:非常に短い入門]

目次:1.どのように我々は嗅ぐか 2.遺伝子で嗅ぐ 3.においの信号 4.においと位置と記憶 5.においの生態学 6.文化の中のにおい 7.未来のにおい

においに関するあらゆる話というようなことで、とにかく該博で、一体何の専門家なのか分からない。こういう人は例えば第六章なんかは、それだけのために急に文献をリサーチしているのだろうか…。というような印象だが、実際には多分、昆虫の嗅覚の専門家なのだろう。もともと昆虫の話は面白話が多いものだが、この本でも一番熱いのは昆虫の話だ。

人間の話もあることはある。なんでも雄豚の唾液に含まれるアンドロステノンという物質は豚に対してはフェロモンとして作用するが、このにおいは人によって良いにおいと言う人と臭いという人がはっきり分かれ、両者に対応するDNAのシーケンスが判明している。つまり、DNAシーケンスからその人がアンドロステノンを良いにおいと言うか臭いというかが正確に予測できるし、逆も予測できる。そしてそれが豚肉の好き嫌いにも影響していることが分かっており、豚肉を食べるとか食べないとかは文化とか宗教というより、その下にある遺伝子の問題に過ぎないのではないかとか云々。

という話もあるが、やはりこの本の中心は昆虫なんで、人間の話は期待しないほうが良い。人間については、人間のフェロモンというものは未だ発見されておらず、そんなものを謳う香水の類は全部インチキとか。昆虫の話はそれなりにグロかったりするが、虫好きの人は平気だろう。わたしとしては、昆虫にあまり興味がないが、たまにはこういう話も面白かった。

関係ないが、この本を読んでいる間に神奈川県東部で異臭騒ぎが頻発していてまだ原因不明である。神奈川県の東京湾側は埋め立て地で、もともと水が淀んでいて掘削すると臭いらしい。わたしとしては数百年のうちに蓄積した有機物がここのところのステイホームでついに飽和して青潮が発生したのではないかと思っている。そんなことはこの本と関係なく、この本は悪臭公害のことはほとんど書いていないが、火星の表面は鉄とマグネシウムと硫黄なので、人が呼吸できる大気を作っても臭くて住めないとかそんなことは書いてある。

A book for insect lovers....

ISBN-13 : 978-0198825258
Oxford Univ Pr (2020/7/1)
言語:英語

2020年10月12日月曜日

"Sports Illustrated 2021 Swimsuit Calendar" [スポーツイラストレイテッド2021水着カレンダー]

そろそろ来年のカレンダーの手配をする時期で、今年はこれを自室で使っているが、来年はこれを職場に置こうかと…。わたしの机の上なんか覗き込まないと見えない。今年はLiz Climoだったが、見たことがあるマンガが多い。この日めくり+月カレンダーが毎日ついているというパターンは日本でもあると良いのだが。これには日本の祝日が書いていないという重大な弱点があるが、一応机の上がリゾート気分にはなる。

A good old plain day-to-day calendar.

ISBN-13 : 978-1438874128
Dateworks (2020/7/15)
言語:英語

2020年10月7日水曜日

Jeff Kinney "Rowley Jefferson's Awesome Friendly Adventure" [ローリー・ジェファーソンの恐ろしくフレンドリーな冒険]

Diary of a Wimpy Kidのスピンオフの二冊目。日本語訳が出ないのは残念なことだ。最初あまり面白くないのかと思ったが、そんなことはなかった。翻訳すれば売れそうだが、本編のがどれだけ売れているのかにもよるか…。

こういう構成がよくあるのかどうか知らないが、ローリーが書く物語と、それに対するグレッグの批評パートが交互に来る。純真な作者と金儲けとクレーマーの心配ばかり考えている編集者といったところだろうか。最終的には伏線が全部回収されているし、かなり練られたプロットに思われる。我々が知っているローリーの書ける代物ではないというのが正直なところだが、面白いからいいだろう。読むのに半日もかからない。

I love this series.

ISBN-13 : 978-1419749094
出版社 : Harry N. Abrams (2020/8/4)
言語: : 英語

2020年9月25日金曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts Vol. 20: 1989-1990" [Peanuts完全版1989-1990巻20]

Olaf登場。フロリダに住んでいるというSnoopy父登場。スヌーピーは8きょうだいということになっているが、別に作者が深く考えている風でもない。Charlie Brownはblondという情報。さらにPeggy Jean登場。また四コマに戻ったりしてコマ数が自由になっている。Beagle Scoutsの点呼で"Woodstock, Conrad, Fred, Raymond, Bill"となっている。少なくともWoodstockは常にいるし、Harrietは女の子だし、Raymondは黒いのだけは守られている。

Peanutsを全部読み終わったら町田のスヌーピーミュージアムに行くつもりだけど、この調子では来年の夏くらいになるだろう。

Keep enjoying.

ISBN-13 : 978-1782115175
出版社 : Canongate Books Ltd (2015/3/5)
言語: : 英語

2020年9月24日木曜日

David Benatar "Better Never to Have Been: The Harm Of Coming Into Existence" [生まれてこない方が良かった:存在してしまうことの害悪]

いわゆる反出生主義というと第一に挙がる本だが、一般人にとってはテクニカル過ぎるというか、倫理学内部の議論が大半なので、あまり一般には売れないのだろうと思う。

日本に関しては「生んでくれと頼んだ覚えはない」みたいな反抗期の子供か、「子供を作るような社会環境じゃないので生みません」みたいな実は自分の利害を基準にした言い草が反出生主義を名乗っている場合が多い。それはそれで無意味な主張とは思わないが、その点でこの著者の考えの特徴は①功利主義的②生む側の利害ではなくこれから生まれる側の利害が判断基準③どんな状況でも非存在が存在に勝るという三点にまとめられると思う。

従って部外者、特に日本人からすると前提条件が多すぎるかもしれない。「生まれてこないほうが良かったなあ」みたいな話は論理というより単純な詠嘆であり、その主張を正当化するためにキリスト教圏ではこれくらい論証する必要があるのかもしれないが、仏教圏ではこんなのは常識に過ぎない。インドでは輪廻を脱して存在を消滅させるのが昔からの究極目標だった。我々が普通に考えれば、「既に存在しているので善悪を論じても手遅れ」「悪いのならせめてこれ以上の再生産はやめよう」「他人が再生産するのは残念ながら阻止できない」くらいだろう。

筆者の基本的な構成は「子供を作るのは既に存在している人間の利益のためであり、これから存在させられる子供にとっては害でしかなく、自分の利益のために他人に害を為すのは悪である」ということになる。一歩進めれば、政府は出産を奨励するべきではないし、子供を産んでその子供を人質に取って政府に金品を要求するような行為は許されないことになる。こうなると多くの人は黙っていられなくなってくるだろう。とすると、やっぱり、現行の法体系というか倫理体系の中でこういう主張をするのは無意味ではない。

障害者がどうとか安楽死がどうとか妊娠中絶がどうとか大量の論点があるのは誰でも分ると思うが、ただわたしとしては、そこまで議論の詳細に興味を持てなかった。結局のところ人口の再生産は自然現象だし、日本人が減っていると言っても、いずれ減少は止まると思っている。縮小再生産は人間/生き物の本質に反する。いくら論証したところで、出産は祝われ続けるだろう。社会正義のシステムは出産が善である前提で構築されていて、作り直すのは困難だ。むしろ背理法的に筆者の拠って立つ根拠が否定される可能性のほうが高い。ただ、真剣に倫理学の枠内で議論したい人にとっては必読書のように思われる。

Obvious is obvious. What we need is a method through which we stop existing.

ISBN-13 : 978-0199549269
出版社 : Oxford University Press(2008/9/15)
言語: : 英語

2020年9月3日木曜日

Andrew C. Scott "Fire: A Very Short Introduction" [火:非常に短い入門]

目次:1.火の要素 2.火の深い歴史 3.火と人類 4.火を封じ消すこと 5.新しい技術と火政策 6.火と気候変動

例によって酷いタイトルだが、この本は基本的には森林や草原の自然火災と生態系との関係について語っている。なので、この"Fire"は「火災」と訳すべきなのかもしれないが、こんなタイトルを付けたために多少都市火災とか戦争における火とかも適当に触れられているくらい。日本語版を出す時はよくよくタイトルを考えたほうが良いと思うが、翻訳する価値があるというのは、こういう話を日本語の本でもその他の情報でもほとんど聞いたことがない。多分、環境運動家でもほとんど知らないのではないか。

なんでも自然火災は陸生植物が出現して以来普通のことらしく、それは古い地層の研究からも明らかだし、今でも人工衛星でそこら中の自然発火の森林火災・草原火災が普通にモニターされている。例えばアフリカのサバンナは以前は人類が森林破壊をしてサバンナになったと信じられていたが、実際には人類が出現するはるか前からサバンナで、森林になる前に定期的に火災でサバンナに戻されていた。そして生物も生態系も定期的に火事がある前提で進化してきており、環境保護のために消してはいけない山火事も多い。

とは言え、著者が詳しいらしいイギリスやアメリカ、オーストラリアなどでは、住宅をどんどん森の近くに建てる傾向があり、火災に対する対策も必要だ。この本を読んでいる間にもカリフォルニアで大火事があったが、日本ではもうドーナッツ化現象とかいう時代ではないが、アメリカは相変わらず郊外志向らしい。イギリスの場合は泥炭火災とかもあるらしく、対策も論じられている。

でその対策の一つとして昔ながらの伝統的な野焼きや焼き畑が結構推奨されていて、実際読んでいると有効というかそれしかないようにに思えるが、非科学的な環境保護運動家とかがヒステリックに反対するのだろう。大体そんなことだが、こういう話はあんまり聞いたことがなかった。

A book on the fire hazards and the ecology.

ISBN-13 : 978-0198830030
Oxford Univ Pr (2020/9/1)
言語: : 英語

2020年8月31日月曜日

Tiphaine Riviere "Carnets de thèse" [博論日記]

フランス語のマンガ(BD)。世界中で売れているらしい。アラサー女の博士課程日記というところで、なんで世界中で売れるかというと、博士課程なんかに入るとどこの国でもこういう目に遭うからだろう。しかし、実際には修士課程でもこれくらいの目に遭うことは簡単だ。わたしもそんなことは良く知っている。

内容はというと、指導教官がやる気がないとか、事務員が怠惰とか、家族の理解がないとか、経済的にどうとか、恋人と破綻するとか、仮に博士号を取れたところでとか、まあ何というか、多分筆者の経験をそのまま描いたようなことで、特に取材したとかそんなことはないのだろう。この女の博論のテーマがカフカなのに、ドイツ語の勉強をしようかとか、まあそんなくらいでは驚かない。世界中の入院経験者はみんな似たような経験をしているに違いないし。

というわけで大学院の世界を知っている人は読んでフランスも同じですかと思うし、知らない人がこれを読んでも大学院の世界を誤解する恐れはないというようなことで、まあ売れるのも分かる。

C'est la même chose dans tous les pays, même ici au Japon....

ISBN-13 : 978-2021125948
Le Seuil (19 mars 2015)
Langue:Français

2020年8月28日金曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts Vol. 19: 1987-1988" [Peanuts完全版1987-1988巻19]

SophieとClaraが出てきた。Marcieもこの中の一人だったはずだが。Leland登場。Beagle scoutに色違いのRaymondが来た。ここまで基本四コマだったが、途中から三コマになる。Snoopyが車に乗っているシーンが増えた。Whateverはもはや定番。このマンガ、vanillaという選択をpuristと呼ぶ傾向があり、あまり納得していない。Snoopyは色々な職業のフリをし、不運な時もそれに相応しい状況設定でやっているが、深い気がして来た。separtation of church and stateという言葉がようやく出てきた。学校でクリスマス劇が中止になったりしているが、これもこのくらいの時代のことか。

I begin to think of me as an extreme enthusiast of this comic. Snoopy is surely loved all around the world, but I wonder how many of them have ever tried to read it all through....

ISBN-13 : 978-1782115168
出版社:Canongate Books Ltd (2015/3/5)
言語:英語

2020年8月17日月曜日

Sports Illustrated Special : Swimsuit 2020 [スポーツイラストレイテッド水着特集2020]

日めくりカレンダーをデスクに置いている縁で初めて入手してみた。表紙みたいなシンプルな図はいいが、変に状況を設置されると面倒くさくなり、カレンダーでいいよという感じ。はっきり言えるのは、雑誌となると、紙質も印刷品質も日本より随分劣る。実際には真剣にこういうのが好きなわけでなく、単にお洒落だと思っているだけなんで、一回見たら納得する。来年のカレンダーどうするかねえ…。

Nice pictures.

Time Inc.(2020/8/2)
言語: 英語
ASIN: B08DSSZBGR

2020年8月14日金曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts Vol. 18: 1985-1986" [Peanuts完全版1985-1986巻18]

このマンガの代名詞とも言える"Good Grief!"と"Whatever."は、この巻になって少し出始めてるくらい。

この巻も昔の記憶が呼び覚まされるところが多い。ganglionをbibleで叩くクダリとか。新キャラとしてLydia、MarcieのいとこMaynard、Tapioca Puddingなど。つまり、これがタピオカミルクティーの前のタピオカブームの時期なのだろう。関係ないが、この前初めてroot beerをKALDIで買って飲んでみたが、甘いサロンパスのような味で、ほぼ捨てた。食べ物で言えばこのマンガは一貫してココナッツが嫌いで、わたしも嫌いだ。時事としてハレー彗星とかLAオリンピックが二年前とか。

Beagle Scoutの構成が気になっているが、毎度数が変動するし、Bill・Harriet・Woodstock・Olivier・Conradが一気に呼ばれるコマもあり、あまり作者も真剣に考えていないのかもしれない。ただ、名前としてはこの五羽が固定だ。

Lucyが8歳と言っているのでCharlie Brownは10歳を越えていることになるが、もはやこの類の計算は無意味か。Marcieがペラペラフランス語を話している。わたしは分かるがこれは読者が理解することを想定していないのだろう。Snoopyが車に乗っているのは珍しい。

このマンガで引っかかることの一つがSpikeの扱いで、基本的に「独りぼっちは詰まらない」というこを笑いにしている感じだが、なんかあんまり笑えない。

Spike rules.

Canongate Books Ltd (2014/11/6)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1782115151

2020年8月4日火曜日

J. L. Collins "The Simple Path to Wealth" [富への単純な道]

日本語訳「父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え」が書店で平積みになっていなければ手にも取らなかった本だが、読んで損したとも思わない。良い邦題で、成功者の静かなお言葉だが、推奨している方針は確かに単純で、インチキ投資本ではない。ただ前提条件が多すぎる。

言っていることは単純だ。まず話の前提として、借金をするな(しているならまずそれを解消しろ)、収入の範囲内で生活しろ、余った金は直ちに全額投資しろ。そうすれば会社から自由になれる。投資対象は全額バンガードの全米株インデックスが最強。資産が年支出の25倍を越えれば資産は減らない(いわゆる4%ルール)。ある程度金融リテラシーがあれば常識ばかりだが、こういうのは語り方でも印象が違うので、目を通すくらいしてもいいのではないか。

わたしも基本的にこの推奨通りの生活をしている。常識からすれば超攻撃的ということになるが、余剰は全額株に突っ込んで放置しているしドルコスト平均法なんか最初から信じていない。どんなに暴落しても売りはしない。多少の買い替えはあっても、基本的に買いばかりで全額貼り付けだ。インデックスはあまり相手にしていないが、十分に分散していればインデックスと大して変わらない。十数年そうしているが、会社から自由になれる金からはまだ遠い。いくつかこの本の前提条件からはずれているからだ。

・まず時期が悪い。著者はだいたい1975年からの資本主義の黄金期で考えている。今は低成長の時代だ。
・場所が悪い。米国株は確かに伸びているが日本株は低迷している。
・筆者みたいにそもそも稼得能力が高くて、仕事をやめてもすぐに必要な時に再就職できれば「会社から自由になれる金」は小さいが、わたしはそうではない。

ただ、これだけ文句を言ったところで、低コストインデックスが最強であることに変わりはない。インデックスに採用される銘柄はプレミアがつくし、全米株は良い選択だろう。国際分散も著者の言う通りで、米国の会社自体が国際分散して事業しているから、別に他国の株を買う必要はない。

初耳だったのはいわゆる4%ルールで、基本的には、資産の4%以内で生活していれば資産が減らないというくらいの緩い法則。かりに生活費を年に400万使っていたら、1億の資産があれば減らないという計算になる。しかしこれも前提に満ちた話だ。総じて夢のない話に思えたが、これが現実だろう。金の話はこれくらいにして、もっと面白い本でも読むか…。

Just simple buy & hold.

Amazon Digital Services (2016/6/18)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1533667922

2020年7月30日木曜日

Jane Caplan "Nazi Germany: A Very Short Introduction" [ナチスドイツ:非常に短い入門]

目次:1.ヒトラー神話 2.国家社会主義 3.ミュンヘンからヴァイマール経由でベルリンへ 4.権力 5.民族共同体:共同体と排除 6.民族共同体:統制と所属 7.戦争準備 8.戦争 9.テロから民族殲滅へ エピローグ:過去と和解すること

ナチと言えば、大学の時にナチを研究していた先輩を思い出す。今はどっかで教授をやっているらしいが。そいつはナチをやたら褒め称える傾向があり、わたしがゼミで聞いたのは、ナチは有意義な公共事業をしたとか、ドイツの社会保障制度を確立したのはナチだとか。

まあそれ自体は事実なのだが、別に公共事業だの労働者福祉だのはナチの発明ではなく、当時流行りのケインズ経済学で、アメリカならニューディール政策だし、世界中で流行の政策だったに過ぎない。アベノミクスが安倍晋三の発明でなく、世界中で常識化している財政出動の流行に過ぎないのと同じだ。その前段に当時既に時代遅れだった新自由主義を頑固にやっていた民主党が酷すぎたのであり、その民主党にしても小泉竹中路線を引き継いだに過ぎない。脱線したが、別にナチが政権を取らなくても、たいていの政権は福祉国家を目指したはずで、こんなのでナチを持ち上げるのはおかしい。当時のわたしはここまで理路整然と反論できなかったが、だいたいこの線のことは考えていた。

そのケインズ経済学が提唱する政策の中に社会福祉や公共事業の他に保護貿易があり、植民地を収奪しているイギリスやフランスなどはそれで構わないが植民地のないドイツやイタリアや日本が困ったというのが戦争の原因で、だから戦後にGATT(WTO)/World Bank/IMFのブレトンウッズ機関が設立されて自由貿易が促進され、TPPにまでつながっているわけだ。

というような話はこの本には書いてない。基本的にわりと単純にナチの犯罪を糾弾する本と思って良い。ドイツ人は反省せよ的な…。まあこの類の本もさんざん読んできているが、憂鬱な読書ながら、わたしとしてはあまり知らないことは書いていない。だいたい前半はナチが政権を取るまで、後半は犯罪解説で、戦争自体の描写はあまりない。まあVSIの性質上、これで初めてナチを学ぶ人とかもいるんだろう。悪くないと思うが、似たような本も多いからなあ…。

Suited for the first encounter with Nazis. Well written.

Oxford Univ Pr (2019/10/1)
英語
ISBN-13: 978-0198706953

2020年7月27日月曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts Vol. 17: 1983-1984" [Peanuts完全版1983-1984巻17]

BillとHarrietが結婚してPoint Lobosに残ることに。ここからBeagle Scoutの構成が少し曖昧になるが、五羽だったりまた四羽でやっていたりしていて、点呼で"Woodstock, Olivier, Conrad, Wilson"になっているコマもある。自然に解釈すれば、Billの代わりにWilsonが入ったことになる。

このマンガがアメリカのどこの話かはだいたい限られていて、St. Paul, Minesotaくらいのところだと思われる。気温が零下30度と言っているが、これは摂氏-34度ということになりアメリカ中部というのはそれくらい寒いのだろう。道路が凍っているからスケートで学校まで行けるとか言う世界。

このマンガ、電車もほとんど出てこないが車も出てこない。Snoopyは車に乗ったことがないと言っている。Peppermint PattyがParisに行く。

時代的にはWalkmanの出始めの頃か。Lucy:"Girls just want to have fun"はCyndi Lauperと思われる。まだ学校でクリスマスをやっている。政教分離が徹底していない。全く関係ないが、未だにアメリカのSenatesはお祈りから議事が始まる。

Bill & Harriet, Happy Wedding!

Canongate Books Ltd (2014/11/6)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1782115106

2020年7月15日水曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts Vol. 16: 1981-1982" [Peanuts完全版1981-1982巻16]

この巻は昔読んだところが多く懐かしい。Lucyの名言"How could the world be getting worse with me in it? Ever since I was born the world has shown a distinct improvement!"は丸々覚えていた。I'm not your sweet babboo!が増えてきた。いつの間にかPeppermint Pattyが"Stop calling me 'sir'!"と言わなくなった。

SnoopyがSopwith Camelに乗っているのは前からだが、ここでSpikeが塹壕戦に駆り出され、Eudoraが巻き込まれる。さらにBelleも参加。住所としてBelleはKansas City、SpikeはNeedlesは確定している。Joe Richkidは見たことがなかった。別のきょうだいMarblesが登場。靴を履いているのがポイントのようだ。Molly Volley再び登場。そして"Crybaby" Boobieと"Bad call" Benny。Charlie Brownにもaunt Marianがいることになっている。Mr. Martinとかいうumpireがいたらしい。Beagle ScoutからHarrietがいなくなっているのは残念だ。SnoopyのMomとDadは間接的には言及されている。Schroederのお爺さんが58歳。MarcieがCharlesと言っている。

Keep going.

Canongate Books Ltd (2014/11/6)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1782111023

2020年7月7日火曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts Vol. 15: 1979-1980" [Peanuts完全版1979-1980巻15]

Beagle ScoutにWoodstock, Bill, Conrad, Olivierに続きHarriet(女の子)が加入。Angel food cakeの専門家。とても良い。Woodstockは前にsparrowということになっていたが、また種別不明になっている。新キャラというわけではないが、LucyにAunt Marionがいるという情報。二度目にはMarianとなっているが。さらに少し違うが、多分Zamboniが出てきたのはこれが最初ではないか。Rerunはまだ出番が少なく、だいたいママチャリの後に載っている。

今頃気が付いたがSpikeの住んでいるNeedlesはCaliforniaの実在の地名らしい。時代を感じるのはボーリングが流行っていたのは日本だけでなかったらしい。Charlie Brownは八歳半と言っている。この冴えない主人公がモテる展開はがっかりするが、Peanutsに限らず冴えない主人は長くなるとたいていこういうことになり、避けられないのかねえ。このマンガ、みんなが主人公を"Charlie Brown"と呼ぶのが面白いことになっているが、例外としてPeppermint PattyとMarcieが"Chuck"、もちろんSallyは"Big brother"で、Eudoraは"Charles"。

About the half line?

Fantagraphics Books (2011/4/11)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1606994382

2020年6月26日金曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1977-1978: Volume 14" [Peanuts完全版1977-1978巻14]

Shermyの名前が出たが、もうこれで最後くらいだろうか。細かいキャラは時々出るが、普通に知られているメインキャラではこの巻で出てくるEudoraが最後のようだ。ただEudoraも1987年が最後の登場らしく、わたしはほとんど彼女絡みの話を読んだことがない。今読むとかなり面白いキャラだと思うが…。テニスのMolly Volleyと"Crybaby" Boobieのほうは記憶にある。またBeagle scoutの点呼で"Woodstock! Conrad! Olivier! Bill!"という名前が紹介される。

新キャラではないが、Snoopyの新技としてCheshire beagleとヘリコプターが登場する。LinusとTrufflesの再会からの騒動とかSpikeの駆け落ちとかこのマンガにしてはなかなかの騒動だ。Snoopyがジョギングをしているのは時代の流行だろう。Charlie Browntが"Marcie's usually right about a lot of things.. She's pretty sharp."と言っているのは印象に残る。

Eudora is cute!

Canongate Books Ltd (2013/11/7)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1782111009

2020年6月24日水曜日

Frank Ledwidge "Aerial Warfare: A Very Short Introduction" [航空戦:非常に短い入門]

目次: 1.基礎 2.始まり:第一次世界大戦1914-1918 3.理論と実践:戦間期1919-1939 4.第二次世界大戦:西洋の航空作戦 5.第二次世界大戦:太平洋の戦い 6.冷戦1945-1982 7.航空戦力の頂点1983-2001 8.軽航空機からアルゴリズムへ2001-2020 9.闘争を越えて星へ?

一応、航空戦の理論と実践の変遷を辿っている。米英軍の話がほとんど。軍事マニアには特に目新しいことは書いていないが、初学者にはこんなものなのだろうか。それよりも著者の書き方が軍事マニアぽいほうが気になる。というのは何かものすごく机上感が強い…。著者はRAFの関係者らしいが、そういうわけで、最後のほうで空軍の独立性を論じているクダリは、軍関係者しかあまり関心がないと思われ、しかし、軍関係者がこんな本を読んでいるようでは…。ただ現実に戦争を指導しているのはこういう人種なのかもしれない。

結構な分量が第二次世界大戦に当てられているが、そういうことならCatch-22のほうが現実だと思われる。

Too shallow...even for this series.

Oxford Univ Pr (2020/6/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198804314

2020年6月16日火曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1975-1976: Volume 13" [Peanuts完全版1975-1976巻13]

新キャラとしてTrufflesとFloydが登場。何気にMarcieが暴力的な設定である。さらにSnoopyのきょうだいとしてSpikeとBelle(とその息子)が登場。Belleは年齢的に姉と思われる。Sallyと学校の建物の件は良いが学校が鬱で自殺するとか…。

このマンガ、キャラがあまりサマーキャンプに行きたがらないし、全体的に旅行があまり好きでない感じがある。このマンガでは珍しく、Snoopyがディーゼル機関車と思われる車両でKansas Cityに到着する。このマンガで鉄道や具体的な地名が出るのは珍しい。隣家の猫が"World War II"と呼ばれていることが判明。まだ冬になると一応Woodstockは南に移るべきなんだが…という設定は生きている。

Actually, I am pressed to study that I have no time to spare....

Canongate Books Ltd (2013/11/7)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1782110996

2020年6月8日月曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1973-1974: Volume 12" [Peanuts完全版1973-1974巻12]

マイナーキャラだがPoochieが登場する。Charlie BrownをCharlie Brownと呼び始めたのは彼女だったという事実。絵としてRerun登場。1歳でいきなり野球をしているが基本はママチャリの後だ。Thibaultももう出てこないかもしれない。Loretta…このマンガ、ガールスカウトの扱いが酷い。何か個人的な恨みでもあるのか、アメリカ社会全体の意見なのか。

Sallyがパーティーから帰ってきた兄に同情するシーンは初めてPeanutsの単行書を買って読んだ時の記憶がある。あれもSelectionが入ったものだったんだろう。Sallyが兄に同情するのは珍しい。Sallyと学校の会話とかも覚えているし、多分、あれが生涯で初めて買った洋書だった。丸善だったけど高かったな…。Peppermint Patty: "How many black players in the NHL, Franklin?"今だったらかなり怒られる話だろう。

I keep reading it.

Canongate Books Ltd (2012/11/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0857864086

2020年6月7日日曜日

Sally Davies "The Drugs Don't Work: A Global Threat" [薬が効かない: 世界的危機]

目次:1.人と微生物と微生物叢 2.感染症の興亡 3.再び薬が効くようにすること

自粛期間中に本屋で平積みになっているのを見かけて読んでみただけで、内容としては「抗生剤の使い過ぎ/不適切な使用のために耐性菌が増えている」「危機を回避するために国際的な取り組みが必要」の二点にほぼ尽きている。だいたいその通りですねみたいなことだけど、特に「新しい抗生剤の開発のために資金を」という点について少し引っかかる…というのも、このブログで紹介しているような本、特にVSIなんか読んでいると、もはや地球上に存在し得るたいていの化学物質はテスト済みで、単純にはもうこれ以上抗生剤の候補がないというように聞いているが…。もっとも単純に化学ではなく、ナノテクだのdeliveryの技術とかでまだまだ道はあるのかもしれないが…。少し古い本が平積みになっていたのはもちろんCOVID-19に便乗ということだと思うが、この本の主たる対象である微生物とウイルスは少し話が違うと思われる。

This books is about antimicrobes, not anitvirus.

Viking (2014/1/28)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0241969199

2020年5月29日金曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1971-1972: Volume 11" [Peanuts完全版1971-1972巻11]

自然に移行しているので忘れてたが、Snoopyは完全に二足歩行している。前の巻だったと思うけどSallyが川を見たことがないとか、この巻ではCharlie Brownが電車に乗ったことがない(空港を見たことはある)とか時々びっくりする。確かにこのマンガに電車や飛行機が出て来たのを見たことがない。Linusはエレベーターに乗ったことを報告している。Charlie Brownは現時点で8歳。Sallyは5歳。Bob Dylanは30歳。

新キャラというわけではないが、Marcieがしっかり登場。Woodstockはsparrowということで確定。渡り鳥を止めた。Rerunも生まれたがまだ絵にはなっていない。もっと後の登場だと思っていた。この巻の最後でPoochieが言及される。Daisy Hill Pully Farmは駐車場になった。

時事として1971年時点でのPeppermint Pattyの発言:"By the time we grow up, the metric system will probably be official"。SnoopyがStar ship "Enterprise"に言及。Snoopyが転倒したLucyを無視。1972年の段階でも「善きサマリア人」が問題になっていたようだ。Lucy hit a homerunはなかなかのエピソード。

I really miss the "lock-down" days....

Canongate Books Ltd (2012/11/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0857864079

2020年4月23日木曜日

Living Language "6,000+ Essential French Words with CD-ROM" [基礎フランス語単語6000+]

随分前に一通り読んだ本だが、ここに書けなかったのは、どうも結局身についていないような気がするから。何語でも単語集みたいなので上手くできた試しがないが、それでもやる価値はあるんだろうな…とは思っている。この本は分野ごとの単語の羅列のほか、一応練習問題とかもついていて、多少はやる気がするし、この類の物としては最善に近いかもしれない。どんな言語でも最終的には単語量で…。こういうのが得意な人は本当に羨ましい。

The volume of your vocabulary is everything.

Living Language (2004/11/16)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1400020911

ABC TCF

TCFというのは、フランス語のTOEICみたいなもので、これはその対策書ということになっている。多分他には類書はないだろう。内容はというと試験制度の解説とサンプル問題。問題には一応解答とtranscriptがついているが、解説はない。ただ、B1を超えるレベルの人なら、別に解説がなくても自分で答に到達できるはずではある。それ以下のレベルの人は、そもそもこの試験を受けるのもお勧めできない。勉強するというより、だいたいの試験の形式を事前に知っておくためのサンプル集だ。わたしが持っているのは一つ前の2014年版だが、多分大して変わっていないだろう。

わたしはというと、随分前に仏検二級からDELF B1をクリアして以降、フランス語の試験というものを受けていない。勉強は一応継続してはいるが、今はB2を受ける暇がない。その点TCFは面接もなくただ受けるだけだし、フランス政府がやたら推してくるから、まあ一度くらい受けてやるかという…。この本を見た限りでは、まあB2くらいの判定になるんだろう。読む分にはC2でも大体分かるし、文法もあまり問題ないが、結局聞き取りに制約がある。などと思っていたら今回のCOVID-19のせいで試験が延期されていて、いつ受けることになるか分からない。

D'après ce livre, je pourrais atteindre le niveau de B2 ou plus haut.

Klett Sprachen GmbH (2018/9/24)
言語:フランス語
ISBN-13: 978-3125300323

2020年4月21日火曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1969-1970: Volume 10" [Peanuts完全版1969-1970巻10]

SallyがLinusからValentineをもらっているのは後には考えられない話。これまでもさんざんSnoopyと小鳥の絡みは積み重ねられているが、この巻でついに"Woodstock"という名が明かされる。この名前自体が時事だが、他にもSnoopyがfirst beagle on the moonになるのもある。これと深い関連があるのが、Peppermint Pattyがコンピュータプログラミングを勉強しているという所で、この時代、プログラマは特に女性の憧れの職業だった。勉強しているのはFORTRANかCOBOLか…。Peppemint Pattyの前の席がFranklinなのも白人と黒人が共学になったからだ。まだカラーテレビという言い方をしているし。ベトナム戦争の話もある。時事とは関係ないが、Snoopyが七人きょうだいだと言っている。

それはそれとして、ここまでで一番好きなstripを書いておく。やっぱりSchroederはいいな。
Lucy: I'm looking for the answer to life, Schroeder.. What do you think is the answer?
Schroeder: BEETHOVEN!
Schroeder: BEETHOVEN IS IT! CLEAR AND SIMPLE! DO YOU UNDERSTAND?
Lucy: Good grief!

Good Grief!

Canongate Books Ltd (2011/10/6)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0857862143

2020年4月9日木曜日

Geoff Cottrell "Telescopes: A Very Short Introduction" [望遠鏡:非常に短い入門]

目次:1.導入 2.光を捕える 3.鏡を通して 4.空の窓 5.光の器具 6.自然に曝す鏡 7.電波の空 8.宇宙望遠鏡 9.次の望遠鏡

VSIにはタイトルから内容が予測できないものが結構あって、これは今まで読んだ中でも裏切られ方が酷い。わたしとしてはこのタイトルから幾何光学とか望遠鏡の製造方法でも説明してくれるのかと思ったが、ここで言っている「望遠鏡」は天体望遠鏡に限られており、本の内容の半分くらいは天文学の話だ。残りの半分くらいは確かに望遠鏡の話ではあるが、それも可視光線の範囲より、それ以外の電波とかX線・γ線の話が大半という…。普通の人はフェーズド・アレイ・レーダーを望遠鏡とは思っていないだろう。どういうタイトルにするにしても「天文学」という言葉は入れておく必要があったんじゃないかなあ。

もっとも、わたしは天文学の話は好きだし、アマチュア無線1級と一陸技の免許証を持っており、X線γ線の免許も持っているようなことで、電波の話にも興味があるから、予想は裏切られたが、それはそれで楽しく読めた。望遠鏡、というか天文観測装置は今も地上にどんどん巨大なものが作られているし、ラグランジュ・ポイントにもどんどん観測衛星が投入されている。特に電波天文学の話はなかなか一般には報道されてこないし、大変勉強になった。対象読者は、単に光学を知りたいという人よりは、天文ファンだろう。あとちょっと無線工学の知識があったほうが良いかもしれない。

This is a book on astronomy, not optics.

Oxford Univ Pr (2017/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198745860

2020年4月8日水曜日

Dawn E. Holmes "Big Data: A Very Short Introduction" [ビッグデータ:非常に短い入門]

目次:1.データ爆発 2.なぜビッグデータは特別か? 3.ビッグデータを貯蔵する 4.ビッグデータの分析 5.ビッグデータと医療 6.ビッグデータとビッグビジネス 7.ビッグデータの安全性とスノーデン事件 8.ビッグデータと社会

評判の良い本ではあるけどどうかな…。VSIにはたまにこういうパターンの本があるけど、著者の中では体系性があるのかもしれないが、ランダムなエッセイのような気がする。なんか妙に衒学的な原論調かと思うと、時々妙に技術面に入り込むところもあり、対象読者が良く分からない。まあITパスポート試験に合格したくらいの人が興味本位で読むくらいではなかろうか。ビッグデータに興味を持つ理由はそれぞれだと思うが、どんな理由にしろ、もっと良い本は他にありそうなものだ。

It seems to me that this book is overrated.

Oxford Univ Pr (2018/1/30)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198779575

2020年4月6日月曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1967-1968: Volume 9" [Peanuts完全版1967-1968巻9]

昔読んだ記憶のあるシーケンスが増えてきた。単発よりストーリーがメインになってきている。Cheshire beagleやEaster beagleが登場。Mad punterが戻ってきた。Vultureもある。WWI flying aceはもう定番。

新キャラとしてJosé Petersonが登場したがすぐに消えた。この巻ではLilaの登場がなかなか劇的。小鳥の形がほぼ確定しているが、一応まだ渡り鳥だ。Linusが小鳥と仲良くして周りにバカにされる件は随分前からあるが、そんなにバカにされることだろうか。Peppermint Pattyの部屋にRoyがいるのは珍しい気がする。キャンプではPeppermint Pattyのリーダーの下にSophie/Clara/Shirleyが登場。SophieがPeppermint Pattyをsirと呼び始めた。Claraは後にMarcieになる。

しかし何といっても大きいのは1968年のFranklinの登場だ。このマンガの唯一の常識人かもしれない。そうでないと、この界隈の狂気が明らかにならないからな…。ちなみに公民権法が制定されたのは1964年。Franklinの父はベトナム戦争従軍中。今の基準では黒人を黒く描いたら怒られるのだろうか。可愛いのに。どこかで作者が、黒人と白人が同じ教室で勉強しているということで抗議されたことがあったと言っていた。

時事としてはGrenobleオリンピック。Linusに渡されるメッセージに"This note will self-destruct in five seconds!"というMission Impossibleの有名なセリフがでるが、ちょうどこのころに始まったらしい。このマンガは当時の野球選手やゴルフ選手のほか、当時の流行歌も調べないと分からない箇所も時々ある。その一例としてSnoopyの誕生日が8/10であるという根拠になる有名なstripがあるが、最後のSnoopyの"I'll be a brown-eyed beagle."というセリフの意味はみんな色々推測しているようだがなかなか確定していない。日本語訳もめちゃめちゃらしいが、わたしは当時のヒット曲"Brown-eyed girl"からだと断定している。その前のstripのSnoopyの表情はPink Pantherじゃないかな。一々書いていないがこの類の歴史調査は結構多い。

最後のほうでLinusが速記するところはGregg systemで、最初のパネルが"Merry Christmas to all and to all a good night."で最後が"Good Grief."だそうだ。Schroederの楽譜も常にそうだが、この作者はこういうところでウソがない。関係ないがroot bearはカルディで買えるらしいから今度買ってみよう。

Good Grief!

出版社: Fantagraphics
言語: 英語
ISBN-13: 978-1560978268

2020年4月4日土曜日

Jacqueline Stedall "The History of Mathematics: A Very Short Introduction" [数学の歴史:非常に短い入門]

目次:1.数学:神話と歴史 2.数学とは何で数学者とは誰か 3.数学的な考えはどのように伝わるか 4.数学を学ぶこと 5.数学的生活 6.数学の中に入ること 7.進化する数学の歴史学

わりと評価の高い本なんだけど、どうかなあ…。一つ言えるのは、この本は数学の内容にはほとんど立ち入っていない。まあ数学史を本気でやろうと考えている学生へのガイダンスには良いかもしれないが、学生の段階で数学そのものではなく数学史を志すのもどうなのかというように個人的には思う。世界中に色んな数学があるとかそういう話は豊富だが、何にしろ、数学の理解が基本だと思うと、この本は到底お勧めする気になれない…。

There are no mathematical ideas in this book.

Oxford Univ Pr (2012/3/24)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0199599684

2020年3月24日火曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1965-1966: Volume 8" [Peanuts完全版1965-1966巻8]

この巻は日常を越えるイベントが多かった。まずSnoopyの恋は珍しい。後に定番になるが夏キャンプも初めてだ。Snoopyがタイプライターを持ちこんで有名な"It was a dark and stormy night."を書き始める。基本的に何も変化のないこのマンガとしては、LinusとLucyの引っ越しとかSnoopy houseの火事も相当な話だしCharlie Brownは可哀そうに車に轢かれている。

キャラとしてはMiss Othmarは姿は見せないが普通にいる。Friedaがこのマンガでは唯一面長になりつつある。Shermyはまだいる。Kite-eating treeが正式に登場。Daisy Hill Puppy Farmも登場し、Snoopyが"One brother lives in Washington, and the other in Texas. One sister lives in St. Louis, one in Hollywood and one in Kansas."と言っている。The little red-haired girlも定番化。小鳥が生まれてWoodstockみたいな形状に。夏キャンプでRoyが登場し、翌年にはRoyと共に遂にPeppermint Pattyが登場する。当初は夏キャンプ限定キャラだったようだが、後の彼女を知っていると初登場は感動的だ。考えてみると、このマンガはPeppermint Pattyみたいないかにもアメリカ人好みのフレンドリーなキャラが少ない。LinusとSnoopyが彼女の家を訪問するのも、日常の範囲を越えている。あと、このマンガは基本的に無名キャラは出てこないが、キャンプだけはたまに無名キャラがいる。

色々盛りだくさんだが、しかし、この巻で最も重要なのはWWI flying aceとRed baronの登場だろう。Snoopyの愛機はSopwith Camelだが、史実通りロータリーエンジンを搭載しているのでジャイロ効果が働き、トルクが右回りなので全加速で右旋回すればRed baronのFocker三葉機がついてこれないとか、機銃がプロペラに同期しているとか、やたら詳しく、普通の読者がついてこれる話に思えない。作者はちょっとだけ第一次世界大戦に従軍していたが、当時はこれくらいのことは通じたのかね。

社会面ではテレビの全盛期と言う感じがする。このマンガの初期はラジオの時代だが、この変から最後までテレビの時代になる。そういうことでは、同時代の日本とはやはり経済格差がある。洗濯乾燥機はわりと初期からあるが、この時代に普通に電動歯ブラシを使っている。気になる言葉として"Judo chop"とか"ZE English"とか。あと、昔から気になっているが、Sallyが学校でやる数学が小学生レベルではない。

Love it!

Canongate Books Ltd (2010/10/7)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1847678157

2020年3月16日月曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1963-1964: Volume 7" [Peanuts完全版1963-1964巻7]

このマンガ、SnoopyとWoodstock以外にあまり動物が出てくるイメージがないが、この時期ウサギが結構出ているし、Friedaもまだ普通にいる。Shermyは消えているが…。結局、Charlie Brownと同年齢と思われるPatty, Violet, Shermy辺りはCharlie Brownのキャラに当たりが強すぎるのかもしれない。キャラとして5が登場。34も出てくる。時事としてヒッチコックの鳥はこの頃。そろそろ政教分離が学校に及んできたか。アメリカで感心するのは、なんか日曜学校とか、正装すべき時は子供でも正装すること。このころには既に"Happiness is..."というのが名言として定着したのだろうか。

Happy comic life.

出版社: Canongate Books Ltd (2010/10/7)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1847678140

2020年3月15日日曜日

Beatrix Potter "The Tale of Peter Rabbit" [ピーター・ラビットの話]

某大学でピーターラビット展をやっていたので読んだ。この第一作自体はただピーターが農家に侵入した話でしかないが、関係のないキャラも書かれているところを見ると、後の展開も考えていたのかもしれない。他愛もない話には違いないが、普通に話を聞いていたらそれなりにドキドキするかもしれん…。物語とか小説とか、色々複雑な構成になっていても、基本はこういうことなのかもしれない。こういう有名子供向け作品をほとんど知らないので、開拓していくと面白いかもしれない。

I've never read this before. Maybe this is the prototype of all novels.

出版社: Warne (2002/9/16)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0723247708

2020年3月9日月曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1961-1962: Volume 6" [Peanuts完全版1961-1962巻6]

わりと初期の頃から鳥とSnoopyの絡みはあるがこの頃から仲良くなっている。まだ形がWoodstockじゃないがSnoopyに話し始めている。新キャラとしてFriedaと猫が登場する。野球のシーンが増えてきて、もはやSnoopyは普通に立って守備をしている。このマンガ、基本的に男子は全員温厚だが、初期の女子はみんなキツめで、Sallyも既に少し性質が悪い。Miss Othmarが帰ってきたが、また引退している。Red hair girlも登場。Shermyはまだ出ている。この巻ではLinusは結構長い間眼鏡キャラだったが、また元に戻る。時代的に徴兵拒否とかいう話題もあるが、著者は徴兵拒否をあまり良しとしていなかったみたいだ。

Fascinating.

出版社: Canongate Books Ltd(2009/10/15)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1847671509

2020年2月25日火曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1959-1960: Volume 5" [Peanuts完全版1959-1960巻5]

読んでいて色々調べものが多い。Linusのthe Great Pumpkinが定番化しているが、手紙の宛先"The Great Pumpkin c/o The Pumpkin Patch"の中のc/o(in care of)は日本語に直訳されて気付になった。Charlie Brownのせりふ"Your shoes will always squeak until they're paid for."は英語圏でもほとんど記憶が薄れている模様。

新キャラとしてSallyが生まれる。ここでCharlie BrownがChocolate cigarを配るのも英語圏でも既に忘れ去られた風習らしい。赤ちゃんのSallyはものすごく可愛い。Sallyはわりと初期からLinusが好きだ。もちろん名前だけだが、Linusの先生Miss Othmarも登場するが、この時点で結婚してHagemeyerになっている。Snoopyはこの時点では兄弟がいないと言っている。Snoopyが犬小屋の上で寝るのはもう普通だし、二足歩行も多く、ボクシングやアメフトまでやっている。

時代を感じさせる言葉として"early warning"とか"sputnik"とかがある。プラカードを持って黙って歩くのも反戦運動の影響なのかもしれない。LucyのPsychiatric helpも登場するが、この時代の流行りなんだろう。お約束としては他にCharlie Brownが謎の手紙を書くとか、LucyとCharlie Brownのアメフトの件とかが確立。Lucyと縄跳びという関連も忘れられてない。LinusがChrismasの朗誦で苦労するのもある。そして何より、ここでLucyの名言"Happiness is a warm puppy."が出た。あと個人的にはLinusがlibrary cardを手に入れて得意になる件は覚えておくべきか。

I'm never bored with Peanuts.

Canongate Books Ltd (2009/10/15)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1847671493

2020年2月16日日曜日

William Doyle "The French Revolution: A Very Short Introduction" [フランス革命:非常に短い入門]

目次:1.こだま 2.なぜそれは起こったのか 3.どのようにそれは起こったのか 4.それが終わらせたもの 5.それが始めたもの 6.それが立つところ

フランス革命の経緯自体は最小限描かれているが、基本的にはその歴史的意義と解釈の解説。ほとんど業界内部の事情みたいな感じにもなっているが、特に欧州人にとってはそれくらい感情負荷の高い出来事で、今でもBrexitがどうとかでフランス革命の評価が左右で分かれるくらいで、仕方のないところがある。

大雑把な流れとして啓蒙主義→フランス革命とテロ政治→独裁制と戦争(ナポレオンとかヒトラーとか)→共産主義革命→共産圏の崩壊みたいなことで、これが必然なのか偶然の出来事の流れなのかみたいな話もあるし、これと英語圏、特にアメリカ独立革命が何の関係があるのかも問題だ。たとえば日本では、明治時代にはフランス革命というと野蛮極まる愚民暴動みたいな扱いになっていたらしいが、これは英語圏の評価とだいたい一致していた。しかし、今の日本の教育ではどうもフランス革命というとやたら肯定的に教えられているような気がする。フランス語圏では、日本ほどでないにしろ肯定的な評価が多い気がするが、どう評価するにしてもフランス人はその上に生きていくしかないんで、なかなか冷静でいられない主題なんだろう。

この本はというと、そういうわけで、歴史業界、というかフランス革命史業界の中の個人的な対立とかまで踏み込んでいるようなことで、普通の人はここまで知りたいと思わないと思うが、これくらいモメる話だということは良くわかった。物語みたいにフランス革命を読んでいきたい人にはお勧めできないが、この本を読んでしまうと、よくあるフランス革命物語みたいなのを真に受けるのがバカバカしくなってくる。個人的には、だいたい革命とか内戦とかいうのは憂鬱だが、もうちょっとフランス史も勉強するかと思った。

I guess it is Well-balanced.

Oxford Univ Pr; 2版 (2020/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198840077

2020年2月12日水曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1957-1958: Volume 4" [Peanuts完全版1957-1958巻4]

なんだかんだで調べものが多いのは時代がずれているせいも大きい。Linusが理屈を言い出した。常時ではないがSnoopyが普通に立ち始めており、犬小屋の上で寝始める。真ん中あたりで全登場人物が出るストリップがあるが、出ているのはShermy, Lucy, Pig-pen, Violet, Patty, Snoopy, Schroeder, Linus, Charlie Brownで、これで九人の野球チームに一応なる。時代的にはベトナム戦争で、死の灰やら人工衛星とかが話題。Charlie Brownが洗濯板を見つけるが、この時点で使い方を知らないなど。

I love Snoopy.

Canongate Books Ltd (2008/10/16)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1847670762

2020年2月5日水曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1955-1956: Volume 3" [Peanuts完全版1955-1956巻3]

Linusが何気にしゃべり始め、立ち上がっている。毛布は定番化した。しかしまだSchroederと差がある。現時点ではCharlie Brownと対等なのはSchroederで、学校のシーンが出てくるが、Charlie Brownの前の席はSchroederだ。Shermyも一応まだいる。Violet/PattyのCharlie Brownに対する態度が酷いが、そのうちキャラが薄くなっていくのだろう。Pig Penはやはり可愛い。お約束としてSchroederのピアのとLucy、凧揚げ、LucyとCharlie Brownのアメフトなどが成立する。Snoopyはまだ四足歩行だ。テレビがラジオにとって代わる。

I love it. Still lacks Sally, Peppermint Patty and Marcie.

Canongate Books Ltd(2008/10/16)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1847670755

2020年1月24日金曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1953-1954: Volume 2" [Peanuts完全版1953-1954巻2]

こんな速度で読んでいくつもりじゃなかったが…。

Charlie Brownはまだ時々意地悪だが、既に自虐キャラとして固まりつつある。CBがマンガを描くのは後にはあまり見たことがない。あとココナツが嫌いという設定もあまり見たことがない。Schroederはもう赤ちゃんではなくピアノの他にキャッチャーをやり始めた。もうCBとほぼ対等で、Shermyに取って代わっていくが、後にはLinusがこの役をすることになるのだろう。

Linusはまだ赤ちゃんでほとんどしゃべっていないが、毛布を持ち始めている。Lucyはまだ明確にCBより年下でチェッカーでずっと勝っている。ムダに意地悪とか、縄跳びの専門家とか、星を数えるとかの変な行動も出始めているし、Schroederが好きで、既にキャラが確定している。PattyとVioletはまだまだ出ているし、わりと最後まで出ていると思うが、Shermyは消えつつある。

新キャラとしてはPig Penが登場する。作者はあまり面白いことを思いつかないと言っていたが、かなりの人気キャラで、確かに良い。声の大きいCharlotte Braunは初めて知った。

絵はまだ立体感があるし、CBがまだ左から右にボールを投げている図もある。白目表現は後には見ない特徴だ。あと、学校でのエピソードがまだほとんどない。時代的にはアメリカはまだ48州。個人的には、1954年時点でCBが「誰かが先生にリンゴを持って行っているのを見たことがない」と言っているのに注目した。机の上にリンゴが置いてある=先生の机というマンガ表現がliz climoでもあるが…。歴史の勉強にもなる。

Love reading these comics. *SIGH*

Canongate Books Ltd(2007/6/27)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1847670328

2020年1月20日月曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1950-1952: Volume 1" [Peanuts完全版1950-1952巻1]

Snoopyは世界一稼いでいるキャラクターみたいなことで、グッズ関連は結構うんざりするけど、未だに机の上にはPeanutsカレンダーだし、昔から好きだし、そのせいで人生で最初に買った洋書はPeanutsだったし、この際、全部読むことにした。この巻は本当の開始期で、まだ後の定番キャラとかは出揃っていない。日本で言えば1952年でやっと鉄腕アトムが連載開始くらい。

というわけで、古さを感じさせる要素として、ようやくテレビが普及し始める頃なので、テレビよりラジオのほうが多い。Schroederが聞いているのはラジオかレコードだし、電話はもちろん黒電話だ。言葉も古くて、当時の流行語とかは辞書で調べると<古>とか書いてあったりする。とはいえ、ギャグとかに古い感じはしない。絵として見ると、後と大きく違うのは、画面に奥行きがあることで、テレビやラジオのほか、Schroederのピアノも立体的に描いてあって、これはこれで可愛い絵だ。後はほぼ平面構成になって、Snoopyが犬小屋の上で不可能な寝かたをすることになるが、今のところ、普通に犬小屋の中で寝ているし、そもそも二足歩行していない。様式化されていないので、話の内容的にもリアルな子供に近い。

キャラクターとしては、Charlie Brown, Snoopy, Shermy, Pattyくらいが初期メンバーで、この巻の時点では、SnoopyがCharlie Brownに飼われているとは確定していない。ごく初期にVioletが投入されて、後に比べるとCharlie Brownはずいぶんモテている。ShermyとかPattyとかVioletはCharlie Brownの友達というだけで、特に性格や典型的な振る舞いが設定されていない。Charlie Brownは既に後の抑鬱傾向が少し出ているが、まだGood Griefとは言っていない。かなり早い時期に投入されたSchroederは最初から天才ピアノ赤ちゃんで、とても可愛い。少し遅れて登場するLucyは最初から明確に性格が悪い設定だ。この巻で既にアメフトのボールを引っ込めている。続いて登場するLinusはまだ赤ちゃんだが、結局、この赤ちゃんキャラのまま毛布を引きずり始めるのだろう。

全体的に初期だからといって面白さが劣るわけでもないし、後の定番キャラも既に揃い始めている。重要キャラでまだ出てこないのはSallyとPeppermint PattyとMarcie、そしてWoodstockだ。かなりコアなファンでないと、これを一巻から読もうと思わないかもしれないが、中学とか高校の英語の先生は、こんなのから例文を採取できるんじゃないかと思う。わたしの記憶では、わたしは中学生で既に読んでいた。

At last. My most favorite comics in one package.

Canongate Books Ltd(2007/6/27)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1847670311

2020年1月15日水曜日

Richard Earl "Topology: A Very Short Introduction" [位相幾何学:非常に短い入門]

目次:1.位相幾何学とは何か 2.曲面を作ること 3.連続的に考える 4.平面と他の空間 5.位相幾何学の香 6.結び目か結び目でないか

最初のうちは地下鉄だのメビウスの輪だのオイラー数だのトーラスだのよくある話をしているが、連続性の概念からわりと急にε-δ論法や中間値の定理が完全展開され、何で解析学と思っていると距離空間から位相空間とか多様体とか群とかいう話になる。あまりこの方面の話は読んだことがないので、数学の色んな分野をどんどん横断していくように思ったけど、後から思うと自然な展開なので、数学科なら普通の教程なのかもしれない。最後のほうはポワンカレとかペンローズとか言っているが、コアな議論としては四次元を超える話はしていない。理論上は高校生でもわかる話だが、そんなにさらさら読めるようなものでもなく、実際には大学レベルだろうか。

現実に工学なんかで位相幾何学が必要になるのは、わたしのレベルでは異常事態だが、昔から興味のあるところではあった。ただ、この本を読んで思うのは、一応大学レベルで解析やら幾何やらをやってからでないと、意義が分かりにくいかもしれない。高校生レベルで結び目だのどうだのだけ説明しても詰まらないだろう。何でもポワンカレは数学を統一しようとした最後の数学者らしい。VSIの数学書としては、その意味で難しい部類かもしれない。良い本だった。

An excellent introduction.

Oxford Univ Pr (2020/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198832683