目次:1.どのように我々は嗅ぐか 2.遺伝子で嗅ぐ 3.においの信号 4.においと位置と記憶 5.においの生態学 6.文化の中のにおい 7.未来のにおい
においに関するあらゆる話というようなことで、とにかく該博で、一体何の専門家なのか分からない。こういう人は例えば第六章なんかは、それだけのために急に文献をリサーチしているのだろうか…。というような印象だが、実際には多分、昆虫の嗅覚の専門家なのだろう。もともと昆虫の話は面白話が多いものだが、この本でも一番熱いのは昆虫の話だ。
人間の話もあることはある。なんでも雄豚の唾液に含まれるアンドロステノンという物質は豚に対してはフェロモンとして作用するが、このにおいは人によって良いにおいと言う人と臭いという人がはっきり分かれ、両者に対応するDNAのシーケンスが判明している。つまり、DNAシーケンスからその人がアンドロステノンを良いにおいと言うか臭いというかが正確に予測できるし、逆も予測できる。そしてそれが豚肉の好き嫌いにも影響していることが分かっており、豚肉を食べるとか食べないとかは文化とか宗教というより、その下にある遺伝子の問題に過ぎないのではないかとか云々。
という話もあるが、やはりこの本の中心は昆虫なんで、人間の話は期待しないほうが良い。人間については、人間のフェロモンというものは未だ発見されておらず、そんなものを謳う香水の類は全部インチキとか。昆虫の話はそれなりにグロかったりするが、虫好きの人は平気だろう。わたしとしては、昆虫にあまり興味がないが、たまにはこういう話も面白かった。
関係ないが、この本を読んでいる間に神奈川県東部で異臭騒ぎが頻発していてまだ原因不明である。神奈川県の東京湾側は埋め立て地で、もともと水が淀んでいて掘削すると臭いらしい。わたしとしては数百年のうちに蓄積した有機物がここのところのステイホームでついに飽和して青潮が発生したのではないかと思っている。そんなことはこの本と関係なく、この本は悪臭公害のことはほとんど書いていないが、火星の表面は鉄とマグネシウムと硫黄なので、人が呼吸できる大気を作っても臭くて住めないとかそんなことは書いてある。
A book for insect lovers....
ISBN-13 : 978-0198825258
Oxford Univ Pr (2020/7/1)
言語:英語
0 件のコメント:
コメントを投稿