2014年6月18日水曜日

Simon Blackburn "Ethics: A Very Short Introduction"

倫理学入門ということだが、まあ基本的な理論と問題点の指摘を軸に話をしていて、最近ありがちな、極端な例を持ち出して「君たちならどうする」みたいなスタンスではない。穏当なところで、類書の中でもお勧めの部類だろう。カントとかハバマスの企てには敬意を払うが、実際のところ、単一の原理から出発して全ての倫理問題に対する判断を自動化しようというようなのも流行らないというか、無理なことはわかっている。なんならキリスト教の唯一神を前提にしても無理だろう。真面目な人は神が死んだ→善悪なんか存在しないから何でもできると考えて、それを実践しようとするが、それが無理なのもよく分かっている。別にそれはキリスト教の残滓のせいとかではなく、そもそも人間はそんな概念では存在していないので、完全な利己主義も内部矛盾を起こして崩壊する。ドストエフスキーはそういうことだとわたしは理解している。読んでいて思ったのは、倫理に対する科学的なアプローチ、つまり、無あるいは勝手な第一原理から倫理を構築しようとするのではなく、既に存在する倫理から共通する法則などを探っていく人類学というか文法学みたいなアプローチのほうが先がある気がする。倫理はとりとめのない世界で、これくらいとりとめのない本が適切だろう。

A good intro to ethics, among many other similar books abundant.

Oxford Univ Pr (T) (2009/9/14)
ISBN-13: 978-0192804426

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