キルケゴールの若干の伝記と思想の要約。キルケゴールについては、日本で最も読まれている「死に至る病」「不安の概念」「誘惑者の日記」しか読んでいないが、それぞれ特に難解なわけでもないし、この本より読みやすいかもしれない。伝記部分については、これらの著書から予想されるような人柄で、全く予想とはずれない。だいたい、クソ真面目な自意識過剰な人がキリスト教、特に偽善の問題に真剣に取り組むと、「死に至る病」みたいなことにならざるを得ないのは自明に思われる。そして、その心理分析は苛烈に鋭いが、にしても勝手・独善的過ぎるというのは、多分、カフカも同じことを感じたのだろう。人を偽善者呼ばわりして傷つける論法の豊富さは、いわゆる実存主義に分類される哲学者に共通だ。唯一絶対神とイエスという実在の歴史上の人物を和解させるだけでも大変なのに、「理性」だの「倫理」だのに加えて「自分」という新たな神を導入すれば、「自分」が酷い目に遭うのは当然だ。ひとまず、この本を読む前に、上の三冊は読んでおいたほうが良いと思うし、できればキリスト教にある程度理解があったほうがいいだろう。
A good introduction, but I recommend that one should read Kierkegaard's several famous books first.
Oxford Univ Pr(2002/5/16)
ISBN-13: 978-0192802569
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