2019年8月8日木曜日

Jeff Kinney "Diary of an Awesome Friendly Kid" [素晴らしくフレンドリーな子供の日記]

たまたま本屋で見かけて気が付いて買ったが、"Diary of a Wimpy Kid"のスピンオフ企画。副題は"Rowley Jefferson's Journal"で、Gregの友達のRowleyの日記という体裁。日本語訳が出ていないが、ここまでずっとほぼ同時に翻訳を出しているのだから、出さない意味が分からない。まあ、児童書というわりに、教育上よろしい本かどうか疑問だが…。もう十年以上続いているシリーズだが、すぐに読めるので初巻から読み始めてもすぐに追いつく。英語学習者にもお勧めしている。

この巻は一応RowleyがGregの伝記を書くという体裁になっていて、何かイベントがあるというより日常の細々した話の集積。だいたいRowleyはGregより一段頭が悪い善良な子という設定だから、たいていがGregの悪行の描写になり、我々はRowleyをお人好し=良い奴と認識するが、どうもアメリカ人的にはお人好し=バカという認識で、Gregがヒーローみたいなことになるらしい。このあたりにドラえもんがアメリカで流行らない理由があるのだろう。彼らにとってはジャイアンこそがヒーローであり、それを卑怯なのび太がやっつけている図になって全然痛快ではないのだろう。従って連中はこの本についてはずる賢いGregのほうに感情移入するらしい。

しかし、わたしとしてはこの図ではRowleyのほうがわたしに近く、どうもRowleyが可哀そうというか、冗談が過ぎて笑えないところがあるのはこのシリーズの通例ではあるが。だいたいこのシリーズは、洋物には珍しく意識低い系クズ人間を主人公にした点が画期的なのであり、頭が悪いだけで善良なRowleyが迫害されるのはどうかと思う。彼もやられっぱなしではないので、その点は少し安心だが。色々思うことはあるが、ほとんどの人は特に気になることもなく楽しめるんだろう。

Well, I am rather on Rowley's side.

Harry N. Abrams (2019/4/9)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1419740275

2019年7月5日金曜日

Sarah Harper "Demography: A Very Short Introduction" [人口学:非常に短い入門]

目次:1.人口学は宿命…か否か 2.55000人から70億人へ 3.人口学思想の先人 4.統計と数理モデルの導入 5.動因 6.人口転換―人口学の中心 7.人口学者の道具箱 8.人口ピラミッドと予測 9.下位分野の登場 10.人口政策と将来の課題

あまり面白そうな学問とも思えず、とは言え、現に日本社会の現在の最大の論点を直撃している学問なので読んでみたが、特に認識は変わらなかった。この本はVSIの標準的な書き方で、大学生向けに業界の歴史、方法論、現状と今後の課題を概説しているが、本当の初学者向けかなと思う。普通に社会科学を勉強していれば、自然に人口学の知識も入ってきているはずで、そういう人たちが一度整理しようと読むにしても特に推奨はできない…。この本は人口学の方法論と業界事情の記述がメインで、しかも、ほとんど常識的だ。例えば9章の下位分野の紹介は、おそらくアルファベット順でしかない。なにより人口学の研究の具体的な成果の記述がほとんどない。日本に言及されているのが、記憶の中では一か所しかなかったが、日本とは言わなくても、せめてイギリスの人口動態について一章くらい当ててくれれば人口学の意義がもっとわかりそうなものだ。

唯一最後のほうの各国の政策の具体例とその結果(中国の一人っ子政策やルーマニアの反避妊政策やオーストラリアの移民政策など)の記述はものすごく面白く、こういう話をもっとしてほしいが、VSIはそういう趣旨じゃないということだろうか。あくまで業界入りを考える学生のための本で、一般人向き啓蒙書、日本で言う新書みたいなことではない。

Not for everybody. It comprises of descriptions of the academic world, few concrete examples of each countries.

Oxford Univ Pr (2018/7/24)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198725732

2019年6月21日金曜日

"Critical Theory: A Very Short Introduction" [批判理論:非常に短い入門]

目次:1.フランクフルト学派 2.方法の問題 3.批判理論とモダニズム 4.疎外と物象化 5.啓蒙された幻想 6.ユートピア実験室 7.幸福の意識 8.偉大な拒否 9.諦めから刷新へ 10.未完の仕事:連帯と抵抗とグローバル社会

入門と言いながらこれも素人にはお勧めしかねる本だ。評判はものすごく良いようだが…。人名で言えば、アドルノ・ホルクハイマー・フロム・マルクーゼ・ベンヤミン・ルカーチ・グラムシ・マンハイム・ハバマスとかまあ、たいてい日本語の訳書があるし、この界隈を一応読んでいないと、この本だけ読んでもしんどいかと思う。というのも、この本は一人一人の思想を解説するというよりは、目次にあるようなテーマについてフランクフルト学派の態度を著者が解釈していくというような体裁なので、まったくとっかかりのない人が読むのは少し無理がある。あるいは、続いて個別の思想家に取り組んでいくという前提でこれから読み始める手はありえる…。

というわけで、主たる読者は軟弱化する以前のヘヴィな社会学を学ぶ志の高い社会学か政治学の学生というところだと思われる。その前提で書くが、この界隈の最大の問題意識は、フランス革命の経緯からも例示されている通りに、啓蒙が反動、最悪ファシズムをもたらすという事態をどう考えて対抗するかというところだと思われる。思想に思想で対抗するのは無理なような気もするし、何ならフランクフルト学派みたいな考え方は詰んでいるような気もするが、油断をしていると、この平和な日本でさえファシズムからそんなに遠くないような気もする。さしあたり英米基準で作られた日本国憲法の価値観というものがあり、それにどんな問題があるにしても、江戸時代の日本の政治体制のほうが良かったとは思えない。しかし、これがファシズムの出現を阻止するのに十分かどうかは明らかではない。少なくとも格差社会の激化を阻止するには足りないようだ。

というようなことを真剣に考える人にはフランクフルト学派を避けて通れるはずもない。我々が常識と思っている考え方のかなりの部分が血塗られた歴史の後に勝ち取られていることが再認識される。結局、こういうことについて中立な立場などは存在しない。ただ、思想で解決する問題とも思えない…。

A great overview of the Frankfurt school, though not for introduction.

Oxford Univ Pr (2017/10/20)
英語
ISBN-13: 978-0190692674

2019年6月20日木曜日

Pink Dandelion "The Quakers: A Very Short Introduction" [クエーカー:非常に短い入門]

目次:1.クエーカーは誰か 2.クエーカー教の歴史 3.礼拝 4.信仰 5.神学と言語 6.教会一致運動 7.クエーカー教の未来

著者の名前に引っかかるが、まあいい。この本はクエーカー教徒自身にも教科書として使われているようなことらしい。だから良いとは言えないが、別に歴史上、クエーカー教徒は平和主義者で迫害されることはあっても問題を起こした気がしない。だいたい文学作品などでクエーカー教徒という言葉が出てきても「ふうん」と言って無視しているが、こういう本で改めて確認すると、特に風変わりな教義のような気もしない。個人的には否定神学か不可知論みたいなのは面白かったが、キリスト教の一つの究極形のような気もする。

It seems that the quakers themselves cherish this book.

Oxford Univ Pr (2008/3/20)
英語
ISBN-13: 978-0199206797

2019年6月19日水曜日

John Robertson "The Enlightenment: A Very Short Introduction" [啓蒙:非常に短い入門]

目次:1.啓蒙 2.宗教との関り 3.人間の境遇の改善 4.公衆を啓蒙すること 5.哲学と歴史の中の啓蒙

VSIにしては内容が重くて素人にはお勧めしかねるというような…。ある程度歴史と哲学の基礎知識がないと読めない。我々が歴史で習う啓蒙の時代というのは、要するに今の時代に通るような自然法の理論とか自然科学とかが確立されて、タイムスリップしたとしても、まあ何とか一応知的な話が通じるようになった時代みたいなことだろうと思う。その後世界に起こったことは、つまずきながらもカントとかハバマスとかが考えるような公共圏みたいな公正というか透明というかそういう単一の世界に進み続けているというような…。こういう話を脱構築するのは簡単だが、良くも悪くも何となく目指すべき社会の方向は共有されているのだろう。例えばの話、国家が特定の宗教を強要することを良いとは我々は思わないし、この前提を共有しない人間とは話にならないような気がしている。しかし、そういう話と関係のない、例えば江戸時代の日本が同時代の西欧に比べて野蛮だった気もしないし、どうもこの辺りがわたしの中で整理がついていない。こういう本を読むと、さらに何のことやらわからなくなる。現実的にはハバマスが考える線で生きていくしかないと思うが…。

At least, this book does not serve as an "introduction".

Oxford Univ Pr (2015/12/1)
英語
ISBN-13: 978-0199591787

2019年6月18日火曜日

Ian Stewart "Infinity: A Very Short Introduction" [無限:非常に短い入門]

目次:1.パズルと証明と逆説 2.無限との遭遇 3.無限の歴史的な見方 4.無限の裏面 5.幾何学的無限 6.物理的無限

こういうpop-mathというかpop-scienceみたいな本はもう読まなくなったが、たまに読むとそれなりに発見もあり…。たとえば超準解析がε-δよりマシだといのなら、一つ勉強するか…とか。この著者はこの類の数学書では大御所で、興味があるムキには安心してお勧めできる。言っていること自体は、まあ数学志向の高校生ならついていけると思う。別に紙と鉛筆が必要な本ではない。

A nice work of a famous author.

Oxford Univ Pr (2017/7/23)
英語
ISBN-13: 978-0198755234

Katarzyna de Lazari-Radek, Peter Singer "Utilitarianism: A Very Short Introduction" [功利主義:非常に短い入門]

目次:1.起源 2.正当化 3.何を最大化するべきなのか 4.異論 5.規則 6.現場功利主義者

最初に少し歴史が語られるが、基本的には有名なトロリー問題のあたりから始まって倫理学の問題についてのガチの議論が本体だ。正直なところわたしは普遍的な道徳判断基準の導出というものが可能とも有益とも信じていないし、この著者たちの主張にもあまり同意できないところがあるが、この類のパズルに興味がある人は面白く読めるだろう。結局、功利主義は、政治判断を正当化するために最も持ち出されることの多い原理かもしれない。一つだけ引用すると、「食用動物を殺すのはその動物に損害を与えない、なぜなら殺す前提でなければ、そもそもその動物は生まれなかったから」という主張は衝撃的だった。こういうことになるから倫理学というのは油断できない。

Utilitarianism is one of the strongest political decision criteria all over the world. We cannot ignore it, regardless our preferences....

Oxford Univ Pr (2017/9/27)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198728795

Susan Llewelyn, Katie Aafjes-van Doorn "Clinical Psychology: A Very Short Introduction" [臨床心理学:非常に短い入門]

目次:1.現場の臨床心理学者 2.揺り籠から墓場まで 3.商売道具 4.臨床心理化が使う枠組み 5.反省する科学者-実践家としてのわたしたちのアイデンティティを作ること 6.現在の合意と議論 7.臨床心理学の対象の拡張

簡単に言うと心理カウンセラー業の職業案内というところ。その手の学科に入った/入ろうとしている大学生などに良いのではなかろうか。個人的にはこの類の職業の人に感心したことがほとんどないが、必要な職業ではあるのだろう。そしてどんどん業務も拡張されているようなので、そのうち何もかもカウンセラーに相談する世の中になるかもしれない。ここでもマインドフルネスが取り上げられていて、もう完全にこの業界の定番になっているようだ。

A nice concise introduction to the field.

Oxford Univ Pr (2017/6/14)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198753896

2019年5月6日月曜日

Paul Luna "Typography: A Very Short Introduction" [活版印刷術:非常に短い入門]

目次:1.完全な文字 2.実用的な文字 3.言葉を提示すること 4.種類と配置 5.絵文字 6.感情か情報か? 7.活版印刷を可読化すること 8.ポジティブ活版印刷術

目次も分かりにくいが、最初は活字・字体について話しているが、少しずつ段組みやページレイアウト、さらに抽象的な一般的なデザイン論に発展していく。終盤になって心理学やバリアフリーみたいな話になると再び字体の話に戻ってくる。ほぼすべてラテンアルファベットの話で、日本文字の話はない。あと、かなりの部分は物理活版ではなく、画面上のフォントの話だったりする。

個人的な話として、わたしの字、特に英字は人に褒められることが多く、実は一時期カリグラフィーに凝っていたせいだが、その延長でフォントにも色々興味があり、その辺りの話は興味深かった。ただ中盤の一般的なデザイン論はわたしには退屈としか言いようがない。この本の致命的な問題点は、このテーマなのに図版が少なすぎる。まあ、ググればすぐに出てくる有名フォントばかりだが、手元にWeb環境がないと読むのはしんどい。ただ、このテーマで段組みなども実際に再現しているので、この本自体は電子版より紙で読んだほうがいいという…。

Only if more illustrations were presented....

Oxford Univ Pr (2019/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0199211296

2019年4月3日水曜日

Mark H. A. Davis "Mathematical Finance: A Very Short Introduction" [数理ファイナンス:非常に短い入門]

目次:1.貨幣と銀行業と金融市場 2.リスクの定量 3.オプション価格の古典理論 4.金利 5.信用リスク 6.ファンド管理 7.リスク管理 8.銀行危機と余波

表題通りの本だが、これまで読んだVSIの中で最も数式に頼った本だ。数学自体は高校生でも理解できると思うのだが、こういう話は経済/物理学特有の考え方を理解しないと本題に入る前に前提で引っかかる人が多いし、この本は入門として良さげだ。経済数学にありがちな話で現実を数学に合わせて単純化し過ぎて結果崩壊するというこもとあるが、それにしても一応の理屈を知っておく必要がある。将棋と同じで、現在主流の考え方が最適とは絶対に証明できないようなものの、ナッシュ均衡みたいなもので、ずれたらずれただけ損するというのが普通だ。現在の理論の誤りを突いて大儲けしようと企んでいるにしても、まず現在の考え方を理解する必要はありそうだ。

古典的な話については、昔読んだ「金融・証券のためのブラック・ショールズ微分方程式」が良かったので、志の高い人はそっちに進むべきだろう。しかし、世の中には賢い人がいくらでもいるので、そんな高度な裁定の機会は我々が発見する前に取り尽くされている。個人投資家は専門家に任せたほうがいいし、専門家が何をやっているのかの感じくらいはこの本でつかめる。それに、特に上場株式みたいなものは、既にその価格に専門家の知見が取り込まれていると考えていいのではないだろうか。

とは言え近頃はアルゴリズム取引の暴走だとか誤発注fat-finger syndromeみたいなこともあるので、素人に勝ち目がないわけでもない。ただそういう話は、この本では「将来の課題」ということで、扱われていない。扱われるようになったら、いよいよファイナンス市場は完全に数理的に管理されて、一切のチャンスが失われるのだろうか。とてもそうは思えないが…。

I have never read a VSI that so heavily relies on mathematical formulas. The style is very succinct and easy to follow. A good introduction to the field.

Oxford Univ Pr (2019/3/24)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198787945

2019年2月21日木曜日

Elizabeth Hellmuth Margulis "The Psychology of Music: A Very Short Introduction" [音楽心理学:非常に短い入門]

目次:1.音楽心理学の技法と科学 2.音楽の生物学的起源 3.言語としての音楽 4.時間の中で聴くこと 5.音楽演奏の心理学 6.人間の音楽性 7.音楽への欲望 8.未来

音楽心理学のアウトライン。後から思うと、「まあそうでしょうね」みたいなことしか書いていなかった気もする。8章「未来」に面白そうな話がまとまっていた気がするが、つまり、これから面白くなる学問なんだろう。根本的な問題として、この学問は、音楽好きの心理学者がやるのか、微妙に挫折した音大の学生がやるのか。どっちにしろ、この本は入門書だ。これからは音楽ビッグデータを利用して、科学的にキャッチーな音楽を作れるのかもしれないとか。

全く個人的な事情だが、わたし自身は義務教育以上の音楽の教育も受けていない。しかし聴いた曲を直ちにリコーダーで再生できる程度の音感がある。別にそれほどレアな才能ではないかもしれないが、ザラにもいないだろう。しかも、音楽にほとんど興味がなく、意図的に音楽を聴くことはほぼない。携帯で音楽を聴いたりもしないし、一人の時間はだいたい無音で過ごしている。そして、わたしの知る限り、音感のない・音痴の人間のほうが音楽を良く楽しんでいる気がする。これがどういことなのか著者に聞きたいものだ。

An outline of the dicipline.

Oxford Univ Pr (2018/11/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0190640156

2019年2月7日木曜日

Maryvonne Pellay, Jean-Louis Chaussade "Les 100 mots de l'eau" [水の100語]

目次:1.物理学・化学・生物学 2.水資源 3.水の用途 4.水質 5.地政学と管理 6.水の値段 7.歴史と文化の観点

水に関するよもやまというか取り留めもない話。100 motsの通例で、豆知識リストと思っていいだろう。たとえば近頃は日本でも水道民営化が議題になっているが、そういう個別方面については、この本の知識では浅すぎるとはいえる。水道事業に関しては確かにフランスは先進国だが。水配達業も増えていることだし、水に興味のある人は多いのだろうけど、そういう人がこういう本を読むのかというと疑わしい。水に本当に興味があったら、水配達なんて頼むはずがないと思われ、しかし、今後、世界的に水資源の枯渇が問題になるのは見えている。幸いにして日本は水資源大国だが、ムダに水を輸入している国でもある。今のうちに準備しておいても良いとは思う。

Un bon livre à lire.

PRESSES UNIVERSITAIRES DE FRANCE (25 août 2012)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130595571

2019年1月31日木曜日

Pascal Gauchon, Jean-Marc Huissoud "Les 100 mots de la géopolitique" [地政学の100語]

地政学という概念自体は最近どんどん流行ってきている気はするし、フランス語とかで新聞を読む場合には、この本に書いてあることくらいは知っておいたほうが良い。まあ、わたし自身にとっては、それほど新しく学んだことがないが、フランス語の勉強という意味。この「100語」という体裁は、BOBO本では最高の効果を挙げたが、こういう風な感じで時事用語みたいなのを解説するのでも良いのかもしれない。

Ce n'était pas mal.

Presses Universitaires de France: 4e édition (10 mai 2017)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130792796

2019年1月22日火曜日

David Simonnet "Les 100 mots de l'entreprise" [企業の100語]

会社にまつわる100語ということで、この方面の語彙を回収するために読んでみたが、途中で用がなくなり、そうなってみると特段面白い本ではない。Que-sais je?らしい大量の修辞疑問文が記憶に残る以外は、わりと普通の話ばかりで、フランス特有の労働者の強さと会社法事情を別とすれば、普通に新聞を読んでいる人のレベルの知識ばかりだろう。それに、この類の話はすぐに古くなるということもある。あえておすすめもしないし、翻訳もされないだろう。

Pas très interessant.

Presses Universitaires de France - PUF (20 janvier 2016)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130619796

2019年1月20日日曜日

Thorstein Veblen "The Theory of the Leisure Class" [有閑階級の理論]

これは社会学の古典として必ず挙がる本だが、多分、先生方もそれほどプッシュせず、学生も読まないし、せいぜい就職試験とかで「ウェブレン‐有閑階級の理論‐誇示的消費」という連想だけ覚えているのが現実だろう。読んでみれば理由は明らかで、読みにくいとかムダにprovocativeというのは別としても、根拠不明の独断と偏見に満ち溢れていて、こんなのが社会学と思われては教育上問題がある。今の基準から言えばヴェーバーもデュルケムも酷いという話もあるが、これについては学問と言えるレベルではなく、せいぜいが文明批評というしかない。

ただまあ、それでも今のところまだ名著と呼ばれている理由も分からなくはない。たとえば、今の世で「品が良い」と言われるようなものは、要するにムダに使える閑暇か財力を表現するようなものであるというような主張がある。こういう断言は、根拠を示して正しいとか間違っているとかいうような命題ではなく、単に一つの見方の提示で、今の学界では排除されるのかもしれないが、しかし無意味な命題でもない。そして、現代の階級制度について冷笑的な分析を行っているが、マルクス主義的では全くない。

そういうことでは、今ならブルデューを読んでおけば上位互換の気もするし、わたしとしては、ボボの100語を強く推奨したい。あえてこの本を強く推奨しないが、こういう本を読んで引用して閑暇を誇示するのも一興かもしれない…。有名な本だし、読んで損したとは思わないし…。

A nice book to read to show off your abundant leisure.

Blurb (2019/1/9)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0464712701