先ほどITIL V3ファウンデーションの試験を受けてきた。知らない人のために解説すると、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)とは、ITサービス管理の共通フレームワークで、ITIL V3ファウンデーションとは、その知識を認定する初歩的な資格である。近頃はITILがITの現場に非常に普及してきたので、資格を取らないとしても知識はあったほうがいいし、知らない人でも、ITILに由来する言葉遣いは日頃耳に入っているはずだ。内容的にIT技術というよりはビジネス寄りなので、技術者としては興味の薄いところかも知れないが、逃げてばかりもいられないだろう。もちろん、管理職なら必須と言える。
試験は26/40で合格だが、わたしの点は35/40だった。ほぼ満点のつもりでいたので心外だが、やむを得ないところがある。今までわたしはCBTで数えきれない数のIT系の試験を受けてきた。ほんの一部を挙げるとOracle Master Platinum, MCSE, MCDBA, LPIC, DB2, Java...。まだまだあるが、すべてについて言えるのが、翻訳が酷くて、問題文が日本語として成り立っていないことが多々ある。ITILも同じで、何とか元の英文を復元しようと考えるが、どうしても意味が分からない問題がいくつかあった。つまり、それがその間違った5問なのであろう。英語で受けるべきだった。
結論としては、この本一冊で試験に通る分には問題ない。内容も非常にしっかりしていて、日本語でこれに匹敵する本はない。特に掲載されている練習問題が、日本語の対策書と比べると格段に優れている。ただ本質ではない、いくつかの欠陥があり・・・。
- 日本語で試験を受けたり、日本語で仕事をしたりする時に訳語が分からない。
- 実例が乏しく、ITILの理論的な説明に終始しているため、初心者がいきなり読むと退屈する。
とはいえ、最強の対策書には違いないので、ある程度下地のある人には強くお勧めする。または、日本語で日本的な実例とともに解説した本を読んだ後で読むのもいいだろう。
というわけで、以下、ついでにいくつか和書も。
「IT Service Management教科書 ITIL V3 ファンデーション 第2版」(株式会社日立システムアンドサービス、翔泳社)・・・これは必読。おそらくたいていの人がこの一冊で合格しているものと思われるが、少し不安ではある。落ちたという報告もあるし。
「ITIL V3 実装の要点」(久納信行、技術評論社)・・・売り込みが酷い。多分著者はITILで食べているんだろう。一問一答で読みやすいが全体像がよく分からない。一通り把握した後ならいいかも。
「ITIL V3実践の鉄則」(久納信行、技術評論社)・・・これはITIL V3のコアブックに沿った日本語解説であり、クセも少なく、わりと安心して読める教科書。
「ITILの基礎 ITIL V3 ファンデーション試験 対応」(官野厚、毎日コミュニケーションズ)・・・これもコアブックに沿った単なる解説だが、平板でややとっつきにくいか。模擬試験問題にやや疑問が残るほか、タイトルで言うほど試験に対応していない気がする。
「要点解説 ITサービスマネジメント [ITIL V3][JIS Q20000]対応」(黒崎寛之、技術評論社)・・・半分以上がJIS Q 20000の解説でITIL V3の部分は前半にあるが、そんなに違うわけでもないし、この本で初めて腑に落ちることもあった。良心的な本だ。純粋に試験対策ということなら無用かもしれないが、志の高い人にはお勧めしたい。