2018年8月23日木曜日

Tracy Arrington, Matthew Frederick "101 Things I Learned in Advertising School" [広告学校で学んだ101のこと]

時々、広告業界入門的な本を読むと「広告は嘘をつく技術ではない」という趣旨の言葉は必ず入っていて、その度に「どう言い繕っても…」と思う。広告技術にそこまで深い興味がなくても、広告を見せられる側の自衛のためにこういう本はみんな読むべきなんだろう。一時期日本でも「クリエイティブ」であることが至高の価値とされていた時代があったけど、基本的に広告業界の思想だったんだろうと思う。それはそれとして、今でも所謂意識髙い系にとって、広告技術の基礎は必須課目だろう。実際のところ、広告のイロハも知らないお偉方が広告に口出ししてグチャグチャにしているのを今も目の前で見ているし、みなさんも自分がそんな風になる前に最低でもこの程度の本は読んで置いてもらいたい。お前がどう感じるかなんか、専門家と統計の前では何の意味もないんだよ…。このシリーズは簡単にすぐ読めるし、一般的にも評判が良い。もっとどんどん出してほしい。

For those who like to interfere and trash works of PR specialists.

出版社: Three Rivers Press (2018/4/3)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0451496713

2018年8月16日木曜日

Helen Graham "The Spanish Civil War: A Very Short Introduction" [スペイン内戦:非常に短い入門]

1.スペイン内戦の起源 2.反乱と革命と抑圧 3.動員と生存:共和国の戦争 4.反乱スペインの成り立ち 5.包囲される共和国 6.勝利と敗北:戦後の戦争 7.歴史の価値

高校の世界史レベルでは、第二次世界大戦におけるスペインの立場が分かりにくい。フランコとかいう独裁者はファシストでヒトラーやムッソリーニと仲が良く、完全に枢軸国側でドイツやイタリアを支援していたが、なぜか法的には中立国ということになっており、ヒトラーとムッソリーニが排除された後も、フランコは普通に独裁を続けていた。で、何かよく分からないうちに民主化されて普通のEU加盟国みたいになっているというような…。スペイン人の話を聞いても、フランス人のレジスタンスの話を聞くようなもので、後から良いように言っているだけのようにも聞こえるし、曖昧な話が多い。日中戦争と同じで、実際の経験者が語りたがらないということが多いらしい。

そこでこの本を読むと、確かに要因が入り組み過ぎていて、誰がどっち側なのか難しい。基本的には共和国vsファシストという認識で、社会主義者・共産主義者・都市労働者は共和国側、農業地帯・カトリック教会はファシスト側と。当然地域差があり、クーデターが起こった直後に軍が掌握したのは基本的に田舎であり、マドリッド他の都会は共和国側。あと独立性の高いバスクなどは共和国側だが、共和国は中央集権を目指すので内部の軋轢がある。ドイツ・イタリアはファシストを支援して、これが戦争の行方を決定する。他方共和国にはソ連がついている。今から考えれば英仏が共和国を支援しないのは意味不明だが、この時期の英仏はなぜかヒトラーに妥協しまくっていて、オーストリアもチェコスロバキアもどんどん呑み込まれている。しかも、内政不干渉とかいう建前で、フランス国境などもほぼ封鎖されており、これではファシストに勝てるはずがない。ファシスト側としては戦争に勝つのは分かっているが、できるだけ戦争を長引かせて赤色分子を殺戮しつくすのがスペイン浄化の為に必要ということで、ゆっくり人を殺していく。結局、ヒトラー体制は打倒されるが、連合国軍の進撃はピレネー山脈で止まり、その後スペインはずっとファシストの支配が続く。

だいたい、歴史を学んでその国のことが好きになることは少ないが、これはなかなか酷い。スペインの場合、話の前提として中南米とアフリカで大量殺戮しているということがある。その巨大な植民地を失って行き場をなくした軍人が、近代化しようとするスペインを過去に引きずり戻した図になっている。当たり前だが、この本は共和国側に同情的な書き方になっており、ずっと悲しい感じで読むことになる。戦後、共和国側の住民は強制収容所や強制労働などに放り込まれて、善良なスペイン人は全員殺されたような印象がある。スターリンのソ連と同じで、近所の人の密告なども恐れないといけないし、当時の人たちが昔のことを語りたがらないのも分かる。孫の代になって実は祖父母が共和国側だったので殺されたことが判明するとかが普通らしい。スペインを脱出した共和国軍軍人がフランスのレジスタンスに参加したりパリ解放とかスターリングラード防衛で戦うとかいうようなエピソードもあるが、大多数のスペイン人のリアルではないだろう。

内戦時の記録は各地の政府の文書館や、カトリック教会の文書館などに残っているらしいが、公開が進んでいないらしい。探ったら誰が誰を殺したとか密告したとかいうことが判明して、やっかいなことになるのだろう。ファシストへのカトリック教会の貢献はこの本でも強調されているが、これも酷い話だ。スペインに旅行することがあったら、その辺りの内戦記念碑的なものばかり見ることになりそうだ。ともあれ、これでヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」を読む準備ができた。

A sad history of Spain.

Oxford Univ Pr (2005/6/23)
英語
ISBN-13: 978-0192803771

2018年7月18日水曜日

Joachim Whaley "The Holy Roman Empire: A Very Short Introduction" [神聖ローマ帝国:非常に短い入門]

目次: 導入.神聖ローマ帝国とは何だったのか 1.ローマ帝国とドイツの王国:カールからオットー朝へ 2.中世盛期:ザーリア朝からホーエンシュタウフェン朝へ 3.中世後期の帝国:ハプスブルク家の勃興 4.近代前期の帝国(1):マクシミリアンI世から三十年戦争へ 5.近代前期の帝国:ヴェストファーレン条約から1806年へ 後書き.神聖ローマ帝国の遺産

神聖ローマ帝国は神聖でもなければローマでもないが、だいたいフランク王国からナポレオンがやってくるまでの中世近代のドイツの政治史。この辺りの歴史が分かりにくいのは、建前としては封建制で、ドイツの各地域というか各家の独立性が高く、それぞれが自律的に行政や同盟や戦争をやっている上に、その中のどこかの家の誰かが選ばれて皇帝になって、一応尊重されるという二重構造になっている。

しかも一応教皇の承認ももらいたいとか、しかし教皇領も奪いたいだとか、プロテスタントが出現したり宗教的な問題もある。地理的には西からフランス人が攻めてくるし東からトルコ人が攻めてくるし北からスウェーデン人が攻めてくるし南からイタリア人が攻めてくる。その上でスイスが独立したりハンガリーがもめたり、その他ハプスブルクだのルクセンブルクだのブランデンブルクだの内部の争いも絶えない。ハプスブルク家の時代になるとスペインも関与するしポーランドの王位も問題になり、とにかくヨーロッパの真ん中の国は大変だ。

この辺りのややこしく長い歴史を本書は丁寧に編年体で追ってくれていて大変勉強になる。これでも大筋に過ぎず、完全には程遠いのだろうけど、意外にこういう通史はあまりない気がする。少なくとも高校の世界史レベルでは何のことやらほぼ分からない世界だ。VSIなのでさして頁数もないが、かなり濃密な読書体験になる。調べ出せばキリがないし、世界史が好きな人の気持ちも少し分かってきた。面白いし、翻訳すれば世界史選択の高校生の必読書になると思うがどうか。とにかく、日本人が想像で作るドラクエ的なインチキヨーロッパ中世とは、こういう中央ヨーロッパ史であり、イギリスでもフランスでもない。

The best introduction to the history of the central Europe.

Oxford Univ Pr (2018/10/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198748762

2018年6月28日木曜日

Andrew F. Cooper "The Brics: A Very Short Introduction" [BRICS:非常に短い入門]

目次:1.BRICSを構想すること 2.議論の余地のある発明 3.歴史的な出発 4.一緒につるんでいるいること 5.新しい開発銀行の設立 6.社会ではなく国家の認知としてのBRICS 7.BRICSの留まる力

BRICSという概念はゴールドマン・サックスの発明らしいが、どうも今一つ盛り上がらない…というのも、この本でも説明されている通り、G8みたくlike-mindednessがあるわけでもく、互いに対立している部分もあり、本人たちが公式機関化を避けて目立たず行動する傾向があったりで、結局、投資信託の名称くらいでしか聞かないからである…。ただ、本書によると、それでも一応多少は集団として影響力を行使することがなくもないというのもあるらしい。国内においては大体が市民活動に対して弾圧的で、中国に至っては未だに一党独裁であり、G8の住人からすると懐疑的になるのはやむをえない。本書は各国の国内事情というより、国際舞台でのBRICSの振る舞いに注目している。G8みたいな共同謀議を行うような気もしないが、少なくとも今のところは一定の影響力はあるようだ。

A good introduction to the shadowy club.

Oxford Univ Pr (2016/7/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198723394

2018年6月25日月曜日

Renee White, Sylvie Bouvier "Barron's SAT Subject Test French" [Barron SAT主題試験フランス語]

以前も別のSATフランス語の問題集を読んだが、こっちのほうが質量共に比較にならないほど優れており、こちらを読めば前のは要らない。こちらはリスニングも大量にこなせる。

それはそれとして、特にリスニングについては解説を読んでも納得しかねる問題が多々あり、これはこの本の問題ではなく、SAT自体がそういうものなのだろう。日本の大学入試で同じようなことがあれば、非難が殺到するのは間違いない。レベルとしては、やはり単語が難しいことを別とすれば、仏検二級くらいのものだろう。あくまで試験問題集なので、別にこれでフランス語の勉強をするような趣旨の本でもないと思うが、こんなのでもしないとわたしの場合はフランス語力が上がらない。

Le meilleur livre pour SAT French.

Barrons Test Prep; 4版 (2017/9/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1438077673

2018年6月20日水曜日

Stephen J. Davis "Monasticism: A Very Short Introduction" [修道院生活:非常に短い入門]

目次:1.定義 2.差異 3.規則と社会組織とジェンダー 4.聖人と精神性 5.現実と想像の空間 6.現代世界での世界的な現象

一応、主題別の目次になっていて、比較宗教学・考古学・歴史学というようなことで、宗教としてはキリスト教と仏教がメイン。実際には、歴史的・地理的な修道院組織の博物誌くらいの感じ。色々あっても全制施設の運営はどこでも同じなんだろう。何なら軍隊とか病院とか刑務所でも大して変わらない気がする。わたしとしては、時々僧堂に入りたいと思うこともあったが、実際に入っていた人の話が口を揃えて言うのは、イジメもあれば仕事もあり、世間と何も変わらないらしい。そんなことなら同志の集うシェアハウスみたいなほうが良い気もするが、それはそれで運営が難しいんだろう。というような内部の社会学的な事態はこの本では論じられず、制度的な建前のほうの研究がメイン。

About one kind of total institutions.

Oxford Univ Pr (2018/4/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198717645

2018年6月19日火曜日

Yujin Nagasawa "Miracles: A Very Short Introduction" [奇跡:非常に短い入門]

目次:1.奇跡とは何か? 2.宗教的文書の中でどのような奇跡が報告されているか? 3.なぜこれほど多くの人が奇跡を信じるのか? 4.奇跡を信じることは合理的か? 5.超自然的でない奇跡はあり得るか?

基本的には宗教上、特にキリスト教の文脈での奇跡だか奇蹟だかを扱っている。奇跡の定義とか博物誌的記述を別とすれば、人間の心理バイアスとかヒュームの懐疑論など。奇跡の真偽には立ち入っていないが、著者が否定派でないことは明白に思われる。奇跡を認知しやすい人間の性向があるのだとすれば、奇跡が起こったと主張することで利益を得る性向とかもあるだろうし、こういうことなら宗教の起源とか奇跡の利用法などにも踏み込んでほしいところだが、多分、この著者には無理だろう。「ムー」とかを読むのとあまり気分は変わらない。

Many interesting cases of alleged miracles.

Oxford Univ Pr (2018/1/23)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198747215

2018年6月14日木曜日

Timothy H. Lim "The Dead Sea Scrolls: A Very Short Introduction" [死海文書:非常に短い入門]

目次:1.文化的アイコンとしての死海文書 2.考古学的現場と洞窟 3.文書と断片について 4.ヘブライ語聖書への新しい光 5.正典と真正な書と文書 6.誰が文書を持っていたか? 7.文書収集物の文献的構成 8.第二神殿時代のユダヤの分派 9.死海文書のコミュニティ 10.分派コミュニティの宗教的信念 11.文書と初期キリスト教 12.最も重大な手稿の発見

死海文書というタイトルでは素人向けに胡散臭い本も多いので、これを読むのが最も無難だ。学者からすると相手にするのもバカバカしそうな話も、本書では丁寧に反駁している。かなり読みやすく、ユダヤ教や中東の歴史に詳しくなくても問題ないだろう。クムランの洞窟から見つかった巻物の中には、後世になって旧約聖書に収録される前の状態の文書も含まれており、場合によってはそのせいで伝統的な旧約聖書が訂正されたりしている。文書の内容自体だけでなく、クムランの考古学的研究や一般的なユダヤの歴史も詳しく記述されていて、文献学と歴史学と考古学の融合はとても面白い。別にわたしはユダヤ教にもキリスト教にも思い入れがないが、だからこそ、純粋に娯楽として楽しめるのかもしれない。

念のため、基本的に死海文書はキリスト教(とかいうユダヤ教の分派)より前に、エッセネ派の所有していた文書ということになっており、キリスト教の信仰とは関係がない。ただし、初期キリスト教徒が読んでいた旧約聖書が、今の我々の読んでいる旧約聖書と少し違うとしたら、その限りでキリスト教徒にとっても問題になる。ずっと後のグノーシスの文書みたいな奔放な話もないし、使徒が人類と対立する的な話もなく、ただある時期のユダヤ教の一つの分派の生活や信仰などが解明されるだけだが、一般教養として知っておいていい。なぜ翻訳されないのか不思議だ。

The best introduction to the Dead Sea scrolls.

Oxford Univ Pr; 2版 (2017/5/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198779520

2018年6月7日木曜日

Jean-Claude "Noir" [黒]

例によって舞台はアメリカということになっている。正直言って、これは何度読んでも意味が分からない。まず画面が黒くて人物の判別に苦労する。あと時系列も狂っているのだろうか。また気が向いたらメモを取りながら読んでみるが、それとも難しく考えすぎているのか。ただ、おそらくこのマンガのポイントはストーリーではなく、例によってフランス人の考える50年代アメリカの雰囲気なので、ストーリーを解明できたとしても、あまり感心しないだろう。

Je ne comprend pas ce qui se passe.

Bdartiste (10 avril 2012)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2919243075

2018年6月3日日曜日

Craig Jeffrey "Modern India: A Very Short Introduction" [現代インド:非常に短い入門]

目次:1.希望 2.植民地インド:貧困化 3.植民地インド:宗教とカースト分割 4.インドを動作させる?1947-1989 5.インド再考 6.社会革命 7.若者

インド人がこれを読んでどう思うのかどうか分からないが、差し当たり、ものすごくバランスの取れたインドの記述に思える。歴史・社会・経済・文化・政治について満遍なく記述されていて、流行りのボリウッドや一昔前のサイババも省略されていない。もし何らかの理由で就職試験などでインドのことを問われるのなら、まず、この本を読むべきなのだろう。この一冊でだいたいわかったような気にもなるし、読み物として完全に成立しているので退屈はしない。貧富の格差も酷く、昔からある「貧しいインド」のイメージも間違っていないようだし、植民地としての歴史も人口ピラミッドの構造も日本とかけ離れていてなかなか面白い。わたしとしては、インドは、昔新聞を読んでいたくらいの知識で行ったこともないし、特にインド人の知り合いもいないが、問題山積みながら、未来のある国という印象だ。

It seems to me a very well-rounded and very balanced book on India.

Oxford Univ Pr (2018/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198769347

2018年5月31日木曜日

Annie Heminway "Practice Makes Perfect: French Reading and Comprehension" [練習が完全を生む:フランス語読解]

目次:1. エッフェル塔:議論と論争 2. ママ教えて、フライドポテトは木になるの? 3. 治療し楽しませるハチミツ 4. ヒグマの回帰 5. フランソワ・ガバール、海の王子:78日で世界一周 6.ルークソール、灰からの再生 7. 映画監督・グラフィックデザイナー・内装建築家にどうやってなるか 8. マダムかマドモワゼルか 9. 大臣がフェミニズムの授業を受ける 10. モントリオールの歴史の中心のラシーヌ運河 11. マリーアントワネットについて聞けなかったけどずっと知りたかった全て 12. 図書館に行ってはどうでしょう? 13. 全方位のデジタル化 14. クレール、ブリュッセルの給仕 15. 人生を変える:自由の代償 16. 幹部の文盲、知られない現象と禁忌 17. MuCEM:欧州と地中海の文明博物館 18. バルタバス、馬術劇場の天才 19. 三角移住:ジャンヌ・セギン-ラフラム 20. 最初のショック:ウェイ・ウェイ 21. 海の耳にささやく若い男:エドゥアルド・マネ 22. ビクトルのポンディチェリの冒険:アリエット・アルメル 23. わたしはカメラ(10の例):ダニ・ラフェリエール

フランス語の読解を中心にした問題集。まず文章が示され、続いて読解を試す問題や文法・語法の解説と問題・仏作文など、フランス語総合コースという趣。文章は実際の新聞記事などから採られている。内容は目次から分かるように、社会・文化・芸術の話題が中心。初級のフランス語読本みたく、リア充大学生の優雅な日々やフランスの初歩的な歴史を読まされたりする気遣いはない。レベル的には、裏表紙にadvanced bignner-intermediateとあるが、実際には上級、欧州規準でB2レベルと考えて良いだろう。こういう機会でもない限り、一生興味も持たないような記事も多いが、外国語学習を考えると、興味のない文章でも読んだほうがいいのは確か。一般にもとても評判のいい本だ。

わたしはと言うと、この本は気が向いた時に少しずつやっていたが、結局、買ってから二年以上経って終わった。文法的には問題なくても、なにぶんにもリアルでそこそこ学術的なフランス語が多く、単語が難しい。文章の内容自体は、正直言ってあまり面白くなかったが、記憶に残っているので言えば、16章の幹部の文盲はヤバい。結構な高学歴で社会的に地位の高い人でも文盲が結構いるとか言う話で、俄かに信じがたいが、フランス語の綴りの難しさを考えると有り得なくはないのか。にしても、わたしみたいに読むことしかできないより全然良いと思うが。

ともあれ、二年以上かかってようやく終えたのは感慨深い。ゆっくりやり過ぎて、この本でどれだけフランス語力が伸びたのか測定できないが、また学習意欲が出てきた。

I finished this book after two years from the point of purchase... It was a enormously difficult task, but I hope it was worth it.

McGraw-Hill Education(2014/7/4)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0071798907

2018年5月17日木曜日

Princeton Review "Cracking the SAT Subject Test in French" [SAT主題試験フランス語対策]

SATは日本の大学入試センター試験に当たるアメリカの試験で、日本人でもアメリカに留学する人は受けることになることが多いようだ。ただ、わたしの知る限り、たいていの科目は簡単なので、日本人は特に理由がなければ、敢えて難しいフランス語は受けないだろう。わたしも多分一生受ける事はないが、試しに練習テストをやってみたく思って本書を購入した。

試験内容はセンター試験とかなり傾向が違うので単純に比較はできないが、難易度は同じくらいなのではないかと思う。わたしの力では、どちらもほぼ間違えないが、完全に満点を取りきるのは実際にはどうかというところ。全部マークシートだが、「別にこっちでもいいやん」みたいな答があるのは、TOEICでも他の語学の試験でも良くあることで避けられない。仏検二級くらいあれば、八割はとれるかと思う。しかし、これも語学の試験に通例の話だが、日本の語学の試験は単語力をあまり問わない。単語のレベルで言えば、SATのほうがずっと厳しい気がする。

本書の構成はフルセットの練習テストが二つと、各セクション(単語・文法・穴埋め・読解)の練習問題+受験テクニックがメイン。それぞれのフランス語力に応じて勉強になったり確認になったりするだろう。重大な注意事項として、本書には聴き取りの問題が含まれていない。聴き取りを受けるかどうかは選択できるらしいが、16版にもなって含まれていないのは、実際には受ける人が少ないのだろう。

It is not that I will take the exam. Just for amusement. Assez facil.

Princeton Review 16版(2017/12/12)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1524710774

2018年5月13日日曜日

Max de Radiguès "Bâtard" [私生児]

ネタバレせずに説明するのは難しいが、要するに犯罪者の母と息子の逃亡劇ということで、暴力が無意味に多い。無意味なセックスもある。舞台はニューメキシコとかで砂漠のシーンもあり。フランス人の考えるアメリカン・ハードボイルドという良くあるパターンだと思ったが、著者はベルギー出身らしい。絵は見やすくていいけど、特にヒネリもないし、殺伐としたポエジー的なものもないので、あえてお勧めはしない。かりにこれが映画だとしても、ちょっと何もなさすぎる。もっとも、暇つぶしに読んだだけなので、感性の豊かな人が読んだら違うかもしれないが…。

Très simple. Un american-hardboild à la française ou belgieque?

Casterman (7 juin 2017)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2203141414

2018年5月8日火曜日

Alain Goriely "Applied Mathematics: A Very Short Introduction" [応用数学:非常に短い入門]

目次:1. 応用数学の何がそんなに面白いのか?モデリングと理論と方法 2.秘密を知りたいか?七面鳥と巨人と原子爆弾 3.モデルを信じるか?単純性と複雑性 4.方程式を解く方法を知っているか?回転するコマとカオス兎 5.ケネス、周波数とは何か?波と地震とソリトン 6.それを描けるか?X線とDNAと写真 7.数学は何の役に立つ?四元数と結び目とさらにDNA 8.我々はどこに行くのか?ネットワークと脳

どうも章タイトルは有名な曲のタイトルをもじっているらしいが、わたしは音楽に興味がなくて分からない。応用数学とは、要するに色々な現象について数理モデルを組み立てるというようなことで、物理現象に即して、次元解析から始まり、微分方程式、偏微分、フーリエ解析というような感じで、目次通り、色々な例を見ていく。従って、VSIとしては珍しく数式を避けておらず、日本の高校生程度の数学力では厳しいかもしれない。事例としては自然科学と工学に限られているが、それでもかなり広範囲である。大学新入生くらいが読んだら、これで数学を志す人も出てくるかもしれない。

わたしとしては結構楽しく読んだけど、実のところ、これだけ色んな例が満載なのに、ほとんど知らない話がなかったことがショックである。数学はもとより、自然科学・工学の分野については、もうVSIを卒業する頃合いなのだろうか。あと、関係ないけど、本書の中でラプラスの悪魔に対して解析解のない微分方程式があることを持ち出して論破したりしているが、これはこの本以外でも至る所で見かける論法で、わたしは認めていない。ラプラスの悪魔の論点は決定論であり、人間に微分方程式が解けないことは、決定論に全くダメージを与えていない。人間に三体問題が解けなくても、天体の運動は微分方程式が描く通りに進行する。量子力学でもそうで、観測によって決定できないことと、観測と無関係に本質的に不確定なのは全く意味が違う。前者は、単に「未来は人間には分からない」というだけのことで、決定論に変わりはない。

This book requries a bit math skills.

Oxford Univ Pr (2018/4/22)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198754046

2018年5月1日火曜日

Daniel Fleisch, Julia Kregenow "A Student's Guide to the Mathematics of Astronomy" [学生のための天文学の数学の案内]

目次:1.基礎 2.重力 3.光 4.視差・視直径・分解能 5.星 6.ブラックホールと宇宙論

近頃、高校の物理学を復習していたが、昔読んだ"A Student's Guide to Maxwell's Equations"に感銘を受けて、同じ著者の本を読んでみようと思った次第。しかし、こちらは随分対象レベルが下がっているように思われる。日本で言えば、せいぜいが高校生レベルだろう。宇宙に関心のある日本の中学生が読んでも、多分、分からないことは書いていない。もちろん、この程度のことはセンター試験で地学を選択する人間なら知っていなければまずい。なお、「算数でわかる天文学」という邦訳が岩波書店から出ているようだが、翻訳の評判が悪く、多分その通りなのだと思う。あるいは、特に物理学や計算に縁の無い、純粋な天文鑑賞ファンにはそれなりに科学的な雰囲気を提供するのかもしれない。とにかく、数字をやたら計算させるわりには、数学的に難しいことは全く言っていないから、数学に自信がなくても、その点は安心してよい。

A good book but really elementary. An average junior-high school student would be able to read this book.

Cambridge University Press (2013/8/29)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1107610217