I seldom read novels. Saki is one of my best loving storytellers. Especially I am a fun of Clovis Sangrail. In a nutshell, this book is an anthology of black humors.
「クローヴィス年代記」と訳すのかな。わたしは、あまり小説を読まないけど、サキの短編小説はお気に入りだ。特に青年貴族クローヴィス・サングレールのファンは日本にも多いんじゃないかと思う。ところが、肝心のこの本が、わたしの調べた限りでは日本語訳が出ていない。この本に含まれている一つ一つの話は、何かしらの形で日本語訳があるのかもしれないが、全部日本語訳があるかどうかは知らない。何にしろ、この形で読めるのは英語のできる人の特権だ。
サキは大英帝国の最盛期の頃の作家で、時代的にはシャーロック・ホームズやジョナサン・ジョースターとほとんど同じだ。全体的にはブラック・ユーモアというのかなあ。その中で青年貴族クローヴィス・サングレールの魅力は、原文を読んでもらうしかない。大胆不敵で愉快な策謀家とでも言うんだろうか。サキの短編集は他にもあるけど、まずはこれはお薦めできる。
2011年5月25日水曜日
2011年5月21日土曜日
SelfMadeEasy.com "Assertiveness: Stand Up, Speak Out, and Still Garner Others' Respect"
Seizing this opportunity, I would like to announce to all shy and modest people around the world that Japan is the country for you. Japanese culture respects modesty. If you are an American and suffer from you timidity, you are most welcome in Japan. You can not imagine how charming and attractive being an American and modest at the same time is to Japanese people. President Obama was criticized in the United States because he bowed too low before the emperor of Japan. One thing they do not know is how this presidential act made Japanese people respect Mr. Obama. I am not a serious supporter of the emperor system, but bowing foreigners are always highly respected in Japan. In this regard, there is a huge gap between the two cultures. Well, politeness and timidity are two different things, but I wish you never lose your charm in the course of adopting assertive attitude. By the way, this book is, well not bad. Sometimes it is a good thing to become self-reflective about your outer attitude.
残念ながらこれはKindle Editionのみらしい。まあ似たような本はいくらでもあるんで、適当に売れてたり安いのを読めばコンセプトは同じだろう。日本でもしばらく前に「断る力」だとか「怒る技術」だとか、単純に「アサーティブネス」とかいうタイトルの本が結構流行ったと思う。自己啓発はたいてい米国発で、適当な日本人が翻訳したりパクったりして日本でも少し遅れて流行る。大人しくて損をしているとか自己主張が苦手な人向けの本だけど、この本の基準だと、半分以上の日本人が該当してしまう気がする。文化差が大きく、この本を読んで日本で役立つ気がしないけど、アメリカ人風の考え方や言い方を学習するのに役立った気がする。たまには、こういうのを敢えて考えてみるのも悪くないことだろうし。
残念ながらこれはKindle Editionのみらしい。まあ似たような本はいくらでもあるんで、適当に売れてたり安いのを読めばコンセプトは同じだろう。日本でもしばらく前に「断る力」だとか「怒る技術」だとか、単純に「アサーティブネス」とかいうタイトルの本が結構流行ったと思う。自己啓発はたいてい米国発で、適当な日本人が翻訳したりパクったりして日本でも少し遅れて流行る。大人しくて損をしているとか自己主張が苦手な人向けの本だけど、この本の基準だと、半分以上の日本人が該当してしまう気がする。文化差が大きく、この本を読んで日本で役立つ気がしないけど、アメリカ人風の考え方や言い方を学習するのに役立った気がする。たまには、こういうのを敢えて考えてみるのも悪くないことだろうし。
Partha Dasgupta "Economics: A Very Short Introduction" (Very Short Introductions)
This book is an introduction for economics students and not a summary of the subject. Economics is a well-established subject and there are a lot of great text books. This book focuses on some crucial basic facts which are often omitted from popular economics textbooks. For example, a sound and trustworthy government is a prerequisite for sustainable economic growth. Well, people in the UK may not trust their government, but not to the extent of people in many underdeveloped countries.
日本語訳が「1冊でわかる」となっているから余計に誤解が増すけど、この本は経済学の要約ではなく、あくまで「導入」だ。普通の経済学の教科書ではあまり触れられないようなトピック、たとえば、「経済活動には国民の中に『契約は守られる』という信頼関係があることが前提」というようなことが重点的に触れられている。「これくらいは知っておいてもらわないと困る」ということばかりだけど、改めて考えると、メジャーな経済学の教科書は、こういうことは無視しないまでも、割と素っ飛ばしている気がする。もちろん、教科書の大半が先進国で書かれているせいだが・・・。この本を読んだからといって、たとえば経済ニュースが分かるようになるわけではない。また、本当の初心者が読んで分かりやすいわけでもないようだ。経済学部一回生の副読本くらいの感じかなあ。
日本語訳が「1冊でわかる」となっているから余計に誤解が増すけど、この本は経済学の要約ではなく、あくまで「導入」だ。普通の経済学の教科書ではあまり触れられないようなトピック、たとえば、「経済活動には国民の中に『契約は守られる』という信頼関係があることが前提」というようなことが重点的に触れられている。「これくらいは知っておいてもらわないと困る」ということばかりだけど、改めて考えると、メジャーな経済学の教科書は、こういうことは無視しないまでも、割と素っ飛ばしている気がする。もちろん、教科書の大半が先進国で書かれているせいだが・・・。この本を読んだからといって、たとえば経済ニュースが分かるようになるわけではない。また、本当の初心者が読んで分かりやすいわけでもないようだ。経済学部一回生の副読本くらいの感じかなあ。
ラベル:
Very Short Introduction,
経済
2011年5月14日土曜日
T. E. Klemm "100 Chess Problems for the Rest of Us"
This book is for Kindle only. Fairly elementary problems. It is neither for very advanced players nor for novice players. The author says "the rest of us" accounts for 80% of all the chess players. It uses a lot of diagrams of chess board and explains almost move by move.
I have not played chess more than 100 times in my life, so this book would not be for me if I were not a very experienced shogi (Japanese chess) player. I usually enjoy more-than-five-movers of shogi. And I solved half of the problems here in first 30 seconds. Very interesting and it helped me getting accustomed to movements of the chess pieces.
By the way, Problem 67 looks funny for me. The author proposes skewering the opponent's king and queen, but the situation seems to me just a simple two move mate. I wonder if there is a rule that prevents this obvious checkmate.
残念ながらこれはKindle Editionしかない。将棋で言うところの「次の一手」で、正直なところ、わたしには易し過ぎるけど、チェスの動きに慣れるという意味では良かった。半分以上が一目で解ける。まあ、将棋の経験がなくても、チェス入門書の傑作"Bobby Fischer Teaches Chess"を読み終わったら、直ぐにこれを読めるだろう。もちろん、わたしのように、「将棋の経験はあるけどチェスはルールくらいしか知らない」、という人も楽しめる。
余談だけど、これからチェスを学ぼうとする人には"Bobby Fischer Teaches Chess"が一番いいと思う。日本語訳も出ているんだろうけど、所詮チェスの話なんで、英語も易しい。というか、チェスに強くなりたければ英語は避けられない。あるいは、チェスを通じて英語を学ぶという考え方もアリだ。
I have not played chess more than 100 times in my life, so this book would not be for me if I were not a very experienced shogi (Japanese chess) player. I usually enjoy more-than-five-movers of shogi. And I solved half of the problems here in first 30 seconds. Very interesting and it helped me getting accustomed to movements of the chess pieces.
By the way, Problem 67 looks funny for me. The author proposes skewering the opponent's king and queen, but the situation seems to me just a simple two move mate. I wonder if there is a rule that prevents this obvious checkmate.
残念ながらこれはKindle Editionしかない。将棋で言うところの「次の一手」で、正直なところ、わたしには易し過ぎるけど、チェスの動きに慣れるという意味では良かった。半分以上が一目で解ける。まあ、将棋の経験がなくても、チェス入門書の傑作"Bobby Fischer Teaches Chess"を読み終わったら、直ぐにこれを読めるだろう。もちろん、わたしのように、「将棋の経験はあるけどチェスはルールくらいしか知らない」、という人も楽しめる。
余談だけど、これからチェスを学ぼうとする人には"Bobby Fischer Teaches Chess"が一番いいと思う。日本語訳も出ているんだろうけど、所詮チェスの話なんで、英語も易しい。というか、チェスに強くなりたければ英語は避けられない。あるいは、チェスを通じて英語を学ぶという考え方もアリだ。
2011年5月7日土曜日
Kakuzo Okakura "The Book of Tea"
This book is first published in 1906, and they say this it is still the best introductory book to chado or tea ceremony for westerners. To those of philosophical mind, this may be true. It does not explain how to make or drink tea, but the philosophy of tea. As an average Japanese, I found it rather vulgar. No offense, but it is just a cultural difference. This book may be a good start for non-Japanese, though I would not recommend it to my compatriots. The theme of this book is too obvious for them. On the bottom line, I leaned from this book how to explain teaism to westerners.
「茶の本」ということで、岡倉覚三の有名な本ではあるけど、普通の日本人にとっては常識的なことしか書いていない気もする。時代も時代だし、日本人が英語で堂々と自国文化の優秀性を説いている点がウけているのかも知れない。読んでて茶を飲みたくなったけど、この著者が書いたら、どんな飲み物でも飲みたくなる気がする。英文は、そこそこ難しいというか、ムダに難しい気もするけど、これも時代だろうか。普通の大学生では読めない気がする。日本語訳は見ていないので知らないけど、バイリンガル版を買うくらいなら、洋書と和書を別々に買ったほうが安いかもしれない。
「茶の本」ということで、岡倉覚三の有名な本ではあるけど、普通の日本人にとっては常識的なことしか書いていない気もする。時代も時代だし、日本人が英語で堂々と自国文化の優秀性を説いている点がウけているのかも知れない。読んでて茶を飲みたくなったけど、この著者が書いたら、どんな飲み物でも飲みたくなる気がする。英文は、そこそこ難しいというか、ムダに難しい気もするけど、これも時代だろうか。普通の大学生では読めない気がする。日本語訳は見ていないので知らないけど、バイリンガル版を買うくらいなら、洋書と和書を別々に買ったほうが安いかもしれない。
2011年4月30日土曜日
Julia Annas "Plato: A Very Short Introduction" (Very Short Introductions)
People may expect a concise introduction to Plato's ideas, but the author doubts if we should reconstruct Plato's ideas from his dialogical treatises. I do not know if this is an ordinary way of learning Plato. There is a heavy tradition of "Platonism", which has restricted our understandings of Plato. From the tradition, we know some famous quotations of Plato and we have formed some notion of what Plato was thinking about. But it seems that modern philologists might not follow this line. So, if you would like to learn Platonism, this book would surely disappoint you.
この本は誤解されやすい。というのも、多分、わたしたちは何らかの形で、「プラトンの哲学」というものに既に触れている。たとえば、「国家」からの有名な引用だとか、「イデア」に関する議論だとかで、それによって、プラトンの考えが多少分かっている気になっている。しかし、この著者によると、それは「プラトン主義」という後世の構成で、もともとは、プラトンは対話形式で「相手の議論に載る形で」書いているわけだから、そこから「プラトンの考え」を構成し過ぎるのはまずいとか。というわけで、「プラトン主義」を学ぶぼうとしてこの本を読むとがっかりする。まあでも、「これが現代的な考え方だなあ」という意味では読んで損をしたということはない・・・。
この本は誤解されやすい。というのも、多分、わたしたちは何らかの形で、「プラトンの哲学」というものに既に触れている。たとえば、「国家」からの有名な引用だとか、「イデア」に関する議論だとかで、それによって、プラトンの考えが多少分かっている気になっている。しかし、この著者によると、それは「プラトン主義」という後世の構成で、もともとは、プラトンは対話形式で「相手の議論に載る形で」書いているわけだから、そこから「プラトンの考え」を構成し過ぎるのはまずいとか。というわけで、「プラトン主義」を学ぶぼうとしてこの本を読むとがっかりする。まあでも、「これが現代的な考え方だなあ」という意味では読んで損をしたということはない・・・。
ラベル:
Very Short Introduction,
哲学
2011年4月26日火曜日
M. A. Cook "The Koran: A Very Short Introduction" (Very Short Introductions)
I assume this book is very famous in English-speaking world. It is a very concise introduction to the Koran. All I am obliged to say is that this book is not for those who want to learn the ideas of the Koran. Rather, this book is a work of philology and comparative religion. Some degree of knowledge of Christianity might be prerequisite of this book. I mean, that an average Japanese might find this book a little too foreign....
実のところわたしはキリスト教には多少詳しいが、コーランについては全く無知で、VSIでそこそこ評判がいいし、"Islam"も面白かったから読んでみただけ。結論としてはさすがに日本語訳されるだけのことはあって、しみじみ良質に面白いけど、注意点もある。この本はコーランの教えを学びたい人のためには直接役に立たない。基本的にはコーランの形成史と比較宗教学だ。そんなわけで、多少キリスト教とかユダヤ教の知識がないと分からないところがあるかも知れない。教義を学びたい場合は別の本を探したほうがよい。
実のところわたしはキリスト教には多少詳しいが、コーランについては全く無知で、VSIでそこそこ評判がいいし、"Islam"も面白かったから読んでみただけ。結論としてはさすがに日本語訳されるだけのことはあって、しみじみ良質に面白いけど、注意点もある。この本はコーランの教えを学びたい人のためには直接役に立たない。基本的にはコーランの形成史と比較宗教学だ。そんなわけで、多少キリスト教とかユダヤ教の知識がないと分からないところがあるかも知れない。教義を学びたい場合は別の本を探したほうがよい。
ラベル:
Very Short Introduction,
哲学
2011年4月24日日曜日
John Medina "Brain Rules: 12 Principles for Surviving and Thriving at Work, Home, and School"
This book is a mixture of brain science and how-to. That said, It is quite natural if you get extremely wary and do not feel like even touching this book. However, the author is an authentic scientist and this book is not a pseudo-science. You may be still weary, but you have my word. Very fascinating book. There might be too much sugarcoating. Still, this book talk about too important facts about our brain to just ignore.
さっき気が付いたけど、日本語訳も出ている。中身は見ていないので訳の出来は知らない。ただ一つ言えるのは、あの表紙と「ブレイン・ルール」という魅力のないカタカナタイトル(英語ならいいんだけど)に先に接触していたら、手に取らなかったかもしれない。ただ、これはスゴク良い本で、脳科学とHow-toの融合だ。・・・というと、今までにも散々疑似脳科学本が出てきているというか、ほとんど全部インチキなので、警戒するのは正しいし、手に取る気がしないのも正しい。しかし、この著者はマトモな科学者だから、マトモな科学的研究で確定したこと以上に想像を追加することには、非常に警戒している。著者はサービス精神旺盛な人だから、余計な挿話が多過ぎるという批判も有り得るが、だからって言っている内容が重要であることには変わりない。DVDは、まあ、筆者の主張するところのマルチモーダルの実践で、別にわたしは本だけでも問題ない。英語で良ければ、Webで全部見れる。
さっき気が付いたけど、日本語訳も出ている。中身は見ていないので訳の出来は知らない。ただ一つ言えるのは、あの表紙と「ブレイン・ルール」という魅力のないカタカナタイトル(英語ならいいんだけど)に先に接触していたら、手に取らなかったかもしれない。ただ、これはスゴク良い本で、脳科学とHow-toの融合だ。・・・というと、今までにも散々疑似脳科学本が出てきているというか、ほとんど全部インチキなので、警戒するのは正しいし、手に取る気がしないのも正しい。しかし、この著者はマトモな科学者だから、マトモな科学的研究で確定したこと以上に想像を追加することには、非常に警戒している。著者はサービス精神旺盛な人だから、余計な挿話が多過ぎるという批判も有り得るが、だからって言っている内容が重要であることには変わりない。DVDは、まあ、筆者の主張するところのマルチモーダルの実践で、別にわたしは本だけでも問題ない。英語で良ければ、Webで全部見れる。
2011年4月22日金曜日
R. A. Hope "Medical Ethics: A Very Short Introduction" (Very Short Introductions)
This book poses some of most controversial ethical problems of the medical professions, about which the author freely expresses his opinions. Though they are most important questions of medical ethics, this is not an overview of this area. I assume the author's intention is to stimulate readers' own thinking.
医療の現場で、よく話題になる倫理問題のいくつかについて、筆者の見解を述べたもの。たとえば、安楽死とか、精神病者の拘禁とか。素人にも理解しやすい具体的な話で、非常に初歩的だ。医療関係者や法曹関係者が、実際に職業についてからこの本を読んで感心しているのは、それ自体倫理に悖る気がするけど、読まないよりはマシだろう。ただ、欧米に比べて日本で、イマイチこういう話が盛り上がっていないのは確かだ。議論もロクにないまま、一体、日本の病院では実際にどう処理されているのか、そっちのほうが気になる。
医療の現場で、よく話題になる倫理問題のいくつかについて、筆者の見解を述べたもの。たとえば、安楽死とか、精神病者の拘禁とか。素人にも理解しやすい具体的な話で、非常に初歩的だ。医療関係者や法曹関係者が、実際に職業についてからこの本を読んで感心しているのは、それ自体倫理に悖る気がするけど、読まないよりはマシだろう。ただ、欧米に比べて日本で、イマイチこういう話が盛り上がっていないのは確かだ。議論もロクにないまま、一体、日本の病院では実際にどう処理されているのか、そっちのほうが気になる。
ラベル:
Very Short Introduction,
哲学
2011年4月21日木曜日
Steve Hughes and Nigel Haworth "International Labour Organization (ILO): Coming in from the Cold" (Global Institutions)
This book is about a history of ILO, not a history of labor economics. It focuses on how they have survived since the inception of the League of Nations. In Japan, their influences are hardly sensed, except for an anti-communist institution and except when trade unions argues their rights citing ILO conventions. Maybe they work better in other countries, but it is not apparent from this book. This book focuses on the ILO itself and its survival strategies. That makes me think about the concept of "inter-governmental organization" in general. Inter-governmental organizations have their respective special areas, but it appears they all behave in the same way.... Anyway, this is a nice and concise introduction to ILO.
ILOの簡潔な歴史。ILOは国際連盟の時からの生き残りで、現存する国連専門機関の中では、最古の部類だが、その時々の情勢に合わせてスタンスを変えることにより、生き残りを図ってきた。日本では反共組織として認知されているか、時々労働組合がILO条約を引き合いに出して議論するくらいのプレゼンスしかない。発展途上国ではインパクトがあるのかも知れないが、そういう話はこの本からは明らかではない。この本はILOの生き残り戦略を重点的に描いている。わたしもラウトレッジのこのシリーズを随分読んでいるので、国際機関の振る舞いが大体読めてきた。とはいえ、ILOに興味がある人や、仕事で関わりあいのある人には、いい入門書だろう。
ILOの簡潔な歴史。ILOは国際連盟の時からの生き残りで、現存する国連専門機関の中では、最古の部類だが、その時々の情勢に合わせてスタンスを変えることにより、生き残りを図ってきた。日本では反共組織として認知されているか、時々労働組合がILO条約を引き合いに出して議論するくらいのプレゼンスしかない。発展途上国ではインパクトがあるのかも知れないが、そういう話はこの本からは明らかではない。この本はILOの生き残り戦略を重点的に描いている。わたしもラウトレッジのこのシリーズを随分読んでいるので、国際機関の振る舞いが大体読めてきた。とはいえ、ILOに興味がある人や、仕事で関わりあいのある人には、いい入門書だろう。
ラベル:
Global Institutions,
政治
2011年4月20日水曜日
Samir Okasha "Philosophy of Science: A Very Short Introduction" (Oxford Very Short Introductions)
I was once a big fan of the "strong program" chiefly because it is extreme and absurd. Actually, I do not think that philosophy of science is useful for scientists. However, I am a little interested in controversies between idealism and realism. And besides, wars between scientists and philosophers or sociologist are highly emotionally charged and very amusing for us by-standers. This book is an elementary introduction to these entertaining battles. I also recommend David Bloor's "Knowledge and Social Imagery", which poses the most furious attack on the scientist pride.
一時期、ブルアのいわゆる「ストロング・プログラム」にハマっていたことがあった。だいたい、理系の科学者だちは自分たちが絶対の真実を探求していると主張し、相対的な真実しか追究していない文系をバカにしているから、哲学者や社会学者が自然科学を相対化しようとすると、ムダに感情的な争いになって、傍観者的にはなかなか面白い分野だ。それはそれとして、この分野は観念論vs実在論の一つの舞台でもあり、そういう方面の興味もある。この本は、特に論争主導での入門書なんで、理屈が好きな人にはお薦めだ。しかし、もっと過激派の見解を学んで衝撃を受けたいというようなムキには、やはりBloorの"Knowledge and Social Imagery"を推奨したい。
一時期、ブルアのいわゆる「ストロング・プログラム」にハマっていたことがあった。だいたい、理系の科学者だちは自分たちが絶対の真実を探求していると主張し、相対的な真実しか追究していない文系をバカにしているから、哲学者や社会学者が自然科学を相対化しようとすると、ムダに感情的な争いになって、傍観者的にはなかなか面白い分野だ。それはそれとして、この分野は観念論vs実在論の一つの舞台でもあり、そういう方面の興味もある。この本は、特に論争主導での入門書なんで、理屈が好きな人にはお薦めだ。しかし、もっと過激派の見解を学んで衝撃を受けたいというようなムキには、やはりBloorの"Knowledge and Social Imagery"を推奨したい。
ラベル:
Very Short Introduction,
哲学
2011年4月14日木曜日
Michael Eliot Howard "The First World War: A Very Short Introduction" (Oxford Very Short Introductions)
This is a very good introduction to all aspects of the first World War. It traces many battles of the war, and you may be getting to want to know more and more. In this book, people die and die and die. I think this book is the worst killer in VSIs. I was brought up in the pacifist Japan and naturally abhor wars. Japan has no borders and it is hard for me to imagine what being a French or a German feels like... I will never understand why such a terrible war was necessary, but, well, maybe the European Union is a triumph of humanity.
第一次世界大戦の入門書としては、もともと評判がよくて、わたしも一気に読んでしまった。とにかくこの本は人が死ぬ。いまだかつてOxford Very Short Introductionで、こんな人が死ぬ本はなかっただろう。第一次世界大戦の様々な戦闘を、大きな流れが分かるように、良い感じに要約して説明してくれるんだけど、戦闘のたびに平気で何十万人も死ぬ。Appendixによれば、オーストリアハンガリーの死者が120万、ドイツが180万、フランスが140万、イギリスが74万、ロシアが170万で、他の国もある。まあ確かに、この本で死んだ数を全部足したらこんな感じか・・・。一言で「狂気」としか言いようがないけど、ちょっと離れて見れば、ミリオタの人の英語学習に最適かもしれない。政治経済社会といったあらゆる側面を解説しているけど、説明の中心は軍事だ。しかし、これで、また次の大戦をやるんだよな・・・。
第一次世界大戦の入門書としては、もともと評判がよくて、わたしも一気に読んでしまった。とにかくこの本は人が死ぬ。いまだかつてOxford Very Short Introductionで、こんな人が死ぬ本はなかっただろう。第一次世界大戦の様々な戦闘を、大きな流れが分かるように、良い感じに要約して説明してくれるんだけど、戦闘のたびに平気で何十万人も死ぬ。Appendixによれば、オーストリアハンガリーの死者が120万、ドイツが180万、フランスが140万、イギリスが74万、ロシアが170万で、他の国もある。まあ確かに、この本で死んだ数を全部足したらこんな感じか・・・。一言で「狂気」としか言いようがないけど、ちょっと離れて見れば、ミリオタの人の英語学習に最適かもしれない。政治経済社会といったあらゆる側面を解説しているけど、説明の中心は軍事だ。しかし、これで、また次の大戦をやるんだよな・・・。
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Very Short Introduction,
歴史
2011年4月13日水曜日
Roy Porter "Madness: A Brief History"
A brief overview of history of treatments of madness. Not too philosophical. Fascinating. I once used to be into R. D. Laing and Freud. Now they are in history books. Sometimes the author seems ironic, but overall, it appears that he tries to be as neutral as possible. This book does not suggest a position you should take for this matter, but it really makes you think about it....
これは日本語訳は悪くないけど、ただタイトルに問題があり、実態は「狂気の取り扱い方の歴史」みたいな感じ。悪魔の仕業みたいに思われていた時代もあれば、狂気にロマンを感じていた時代もあり、心理学が優勢な時代もあれば、器質論が優勢な時代もあり・・・。個人的にはフロイトやらR. D. Laingやらにハマりまくっていたことがあったけど、文学的に面白いだけで、現実の治療はまた別問題なんだなぁ・・・。そしてここでも脳と精神の関係が問題になる。この本自体は、やや文学的ではあるけど、普通の歴史書と言っていいだろう。ただ、あくまで読み物で、資料性は低い。正直なところ、わたしの知らないことはあまりなかったけど、入門書としてはいいんじゃないかと思う。
これは日本語訳は悪くないけど、ただタイトルに問題があり、実態は「狂気の取り扱い方の歴史」みたいな感じ。悪魔の仕業みたいに思われていた時代もあれば、狂気にロマンを感じていた時代もあり、心理学が優勢な時代もあれば、器質論が優勢な時代もあり・・・。個人的にはフロイトやらR. D. Laingやらにハマりまくっていたことがあったけど、文学的に面白いだけで、現実の治療はまた別問題なんだなぁ・・・。そしてここでも脳と精神の関係が問題になる。この本自体は、やや文学的ではあるけど、普通の歴史書と言っていいだろう。ただ、あくまで読み物で、資料性は低い。正直なところ、わたしの知らないことはあまりなかったけど、入門書としてはいいんじゃないかと思う。
2011年4月11日月曜日
A. J. Ayer "Hume: A Very Short Introduction" (Oxford Very Short Introductions)
Before reading this book, readers must have some basic knowledge about Hume and in philosophy generally. This book is not for beginners. The author himself is a philosopher, and has no intention to present Hume's work without his own comments. He is always assuming opponents to Hume's arguments and trying to defend him. Sometimes I do not see what he is fighting against. Still, it contains a variety of exciting arguments.
これはどう考えても、ある程度哲学の知識、特にカントあたりのことを知らないと読めない。著者自身によるヒュームの批判的(擁護的?)検討といったところで、単にヒュームの概説書というようなレベルの本ではない。ただ、ヒュームを読んだことがない人が読めないというわけでもないので、ある程度哲学を学んだことのある人が読む分には問題ない。わたしにとっては色々考えることもあり、かなり面白い本だった。書き出すと切りがないのでやめておこう・・・。
これはどう考えても、ある程度哲学の知識、特にカントあたりのことを知らないと読めない。著者自身によるヒュームの批判的(擁護的?)検討といったところで、単にヒュームの概説書というようなレベルの本ではない。ただ、ヒュームを読んだことがない人が読めないというわけでもないので、ある程度哲学を学んだことのある人が読む分には問題ない。わたしにとっては色々考えることもあり、かなり面白い本だった。書き出すと切りがないのでやめておこう・・・。
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Very Short Introduction,
哲学
Malise Ruthven "Islam: A Very Short Introduction" (Oxford Very Short Introductions)
Since I am relatively new to this subject, I cannot tell if this book is a neutral and fair representation of Islam". What I can say is that this book is not very short. It is overloaded with too much information for a beginner. I imagine one reason is the fact that Islam is not just a religion. In wester Europe as well as here in far east asia, we are accustomed to the notion that religions and other areas of social structure are different matters. That is not the case in the Islamic world. We have to learn Islam as a whole. I think this is not the author's fault.
わたしは全然イスラムに詳しくないので、この本が公平な本なのかどうか判断できない。入門書として読むには、ちと難しいのかもしれないけど、シーア派とスンナ派がいるとか、ムハンマドが始めた宗教だとか、あと若干中東情勢の知識があれば、普通には読めるだろう。情報量がやたら多く、あまり"very short"な感じがしないけど、これはイスラムの性質上仕方がない。我々は、宗教と他の社会生活、たとえば、政治とか経済とか学校とかを切り離して、それだけで理解できると考えがちだけど、イスラムはそういうことになっていないので、一度に総合的に理解していく必要がある。・・・というようなことも、この本を読めば分かってくる。一部近代主義者は、イスラムもそういう方向(政教分離)に持っていきたいみたいだけど。細かいことを言い出したら切りがないはずで、よくこれだけに収まったと考えるべきなんだろう。
わたしは全然イスラムに詳しくないので、この本が公平な本なのかどうか判断できない。入門書として読むには、ちと難しいのかもしれないけど、シーア派とスンナ派がいるとか、ムハンマドが始めた宗教だとか、あと若干中東情勢の知識があれば、普通には読めるだろう。情報量がやたら多く、あまり"very short"な感じがしないけど、これはイスラムの性質上仕方がない。我々は、宗教と他の社会生活、たとえば、政治とか経済とか学校とかを切り離して、それだけで理解できると考えがちだけど、イスラムはそういうことになっていないので、一度に総合的に理解していく必要がある。・・・というようなことも、この本を読めば分かってくる。一部近代主義者は、イスラムもそういう方向(政教分離)に持っていきたいみたいだけど。細かいことを言い出したら切りがないはずで、よくこれだけに収まったと考えるべきなんだろう。
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政治,
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