2018年1月10日水曜日

Alan Taylor "Colonial America: A Very Short Introduction" [植民地時代のアメリカ:非常に短い入門]

目次:1.遭遇 2.新しいスペイン 3.新しいフランス 4.チェサピークの植民地 5.新しいイングランド 6.西インドとカロライナ 7.英領アメリカ 8.帝国

いつも通りタイトルが分かりにくいが、ここで言うアメリカとは大体今のアメリカ合衆国の領土を指し、時代としては主にコロンブス以降で、一応ハワイの併合までということになる。独立戦争自体の詳細は省かれており、名著The American Revolutionを読む事になる。通読できる歴史書として読みやすいし、予備知識も必要が無い。ただ、やはり、たいていの人はアメリカの地図があったほうがいいだろう。

Easy Spanish Readerで分かっている通り、メキシコの歴史も血塗られているが、北米も凄惨で、新しい要素として、アフリカからの奴隷の輸入が加わり、帝国同士の植民地の奪い合いがある。わたしとしては、今まで、アメリカの都市名にスペイン語が目立つ地域(西海岸とフロリダ)とフランス語の目立つ地域(中部)があることは認識していて、何となく合衆国拡大の歴史は認識していたが、この本で一気に整理されたのは良かった。

大雑把にいうと、スペインが中南米とかカリブやフロリダの砂糖地域を占拠し、次にフランスが毛皮交易のできるカナダからミシシッピを下って中部を奪って原住民に武器を供給し、空いていた中間の温暖なところにイギリスが入ってきたという流れになる。この間、始終各地の原住民との交流があり、その点が詳しく書かれているのが多分、類書と異なる点だろう。一々血塗られているが、事実だから仕方がない。

VSIの世界史カテゴリは外れがほとんどないが、これも良い読み物だった。これからもどんどん読んでいく。

A brief bloody history of colonial north America. Very readable.

Oxford Univ Pr (2012/11/8)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0199766239

2018年1月3日水曜日

Liz Climo "The Little World of Liz Climo" [リズ・クリモの小さな世界]

動物を主人公にした一コマか二コマくらいのほのぼのマンガ。実物はLiz Climoでgoogleで画像を検索すればいくらでも出てくる。本人が異常に美人なのも気になるが。知らなかったけど翻訳も出ているようだ。ほぼ中学レベルの英語と思われ、誤訳の余地もないだろう。こういうのは好き好きなので、とにかくググってもらうのが一番だ。多分、大学生男子が読んで面白いものではないと思うが、子供が読んでも今一つ分からないような気もする。作者と同じ母親に一番ハマると思うが、わたしもかなり好きだ。久しぶりに良い英語マンガを見つけた。こういうのを描ける人は羨ましい。

Cute.

Running Press (2014/9/30)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0762452385

2017年12月21日木曜日

Scott Adams "Win Bigly: Persuasion in a World Where Facts Don't Matter" [大きく勝つ:事実が問題でない世界での説得]

目次:1.なぜ事実が過大評価されているのか 2.どのように現実をもっと有益な方法で見るか 3.どのようにトランプ大統領は他人にできない事をするか 4.どのようにビジネスと政治で説得を使うか 5.なぜ集団に属すると強くなり盲目になるのか

アメリカでは選挙が終わるたびに「こうなると分かっていたわたしの賢さについて」という本が出てくるが、これもその一冊。普通ならこんな本は読まないが、著者はわたしのデスクの上のマンガを描いているマンガ家で、たまたま目についたので読んでみた。主たるテーマはトランプの選挙運動の優秀性について。多分、日本では誰も読まないのでわたしがまとめると、この本は主に五つの要素から成り立っている。

初歩的な心理学の説明
認知不協和だの確証バイアスだの。本人は学位を持っていないが、訓練を受けた催眠術師だと言っている。日本で言えば苫米地博士相当と思って良いんだろう。初歩的だが、言っていることは間違ってはいない。
自慢
トランプの勝利を予測したほか、自分には財産があるだのビジネスで成功しているだのフォロワーが多いだのマスコミのインタビューを受けただの。こういうのを並べると説得力が増すと思っているんだろう。このあたりも苫米地博士みたいだ。
トランプとクリントンの選挙運動の分析
自分も説得のプロなのでわかるがトランプはスゴいとか、途中からクリントン側にとんでもない軍師がついたはずとか。トランプの選挙運動を逐一追っていて、これが本来のテーマのはず。冷静に書いていれば広報や選挙運動の教科書になるはずだが、本人は学者ではないので、個人的な事情と混ぜ合わされて書かれている。
苦労話
トランプは色々スキャンダルもあったし、クリントン支持者から嫌がらせをされたとか身の危険を感じたとか。実際、カリフォルニアでトランプを支持するようなこと(元々は誤解だが)を言ってたら、ヤバいのかもしれないし、政治評論家としてやって行こうとしている本人にとっては手に汗握るレースだったんだろうけど、わたしのような外国人が読む分には哀れというか滑稽と言うか。
オカルト
ポジティブシンキングとか成功哲学みたいな話もあるが、それ以上に自分に予知能力があるとか仄めかしている。わたしはこの著者にこういう痛いところがあるのは知っているから驚かないが、初めての人が政治の本だと思って読んだら大抵引くはず。

別にこの本を推奨はしないが、アメリカでは政治評論などで多少知名度はあるみたいだし、この調子で当て続けていけば、いずれ影響力を持って日本にも名が轟いてくる可能性がなくはない。さしあたり、"Dilbert"の作者がblogやtwitterなどで政治評論をしていて、こんな本を書いていることを覚えておいても良いかも知れない。

I am not an American and my impression of the election is "much ado about nothing". But for a political pundit like this author, that was a thrilling race. Living histories are always interesting.

BTW, if you keep saying good things about a candidate, people assume you are a supporter of that candidate. It must have been obvious to you, Scott.

Portfolio (2017/10/31)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0735219717

2017年12月17日日曜日

Pierre Delort "Le Big Data" [ビッグ・データ]

目次:1.企業の中の情報科学 2.データ 3.ビッグデータ 4.ビッグデータの技術 5.会社の中の決定 6.企業の変化

近頃流行りのビッグデータの入門書。最初のうちはIoTやらグーグルのインフルエンザの検索とか有名な話をしている。技術面ではNoSQLなデータベース技術や統計の話などのごく入門程度。最後に企業の組織などに与える影響。正直なところ、わたしにとっては、この程度の話は初歩的過ぎて、内容を公平に評価できない。本当に何も知らない人向けとしか…。わたしとしては、フランス語の勉強ということもあって、良く知っている分野の本を読むのがいいかと思ったところだが、この考え方は間違っていたかもしれない。つまり、知りすぎている話だと、適当に読めてしまうということもあるし、あまり真剣に読むモチベーションが上がらない。

Ce livre est trop basique pour moi. Je l'ai lu seulement pour etudier le français. Néamoins, lire un livre qui parle des choses que je connais trop n'étais pas une bonne idée.

PRESSES UNIVERSITAIRES DE FRANCE - PUF (22 avril 2015)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130652113

2017年12月7日木曜日

Clifford E. Swartz "Back-of-the-envelope Physics" [封筒の裏の物理学]

目次:1.力と圧力 2.力学と回転 3.音と波 4.熱 5.光学 6.電気 7.地球 8.天文学 9.原子と物理 10.素粒子と量子

『物理が分かる実例計算101選』ということで翻訳書も出ている。色んな事象について物理の公式に則って概算する本。一時期、本屋のビジネス書の棚にやたら「フェルミ推定」という言葉が並んでいたことがあるが、元々フェルミが推定するのが得意だったのはこういうことだったんだろう。

101も計算があるので、一つ一つは比較的短いし、それぞれ独立している。実のところそんなに意外な計算はないが、しばらく物理から離れていた人には懐かしいだろう。実際大学の授業でも使われているらしい。ただ、pop scienceの常で、理数寄りの一般人を面白がらせることができたとしても、これで物理が分かるようになるかどうかは甚だ疑問だ。項目にもよるが、高校生~大学生程度の物理の知識は必要かもしれない。目次からも分かるようにかなり分野が広いので、復習になる。わたしは工学系の勉強をしているので、計算には慣れているが、純粋に学問として物理学をやっていた人には新鮮かもしれない。

学問として物理学をやっている分には現実の数字を計算することは少ないし、工学でも有効数字が4桁を越える事は稀に思う。唯一、測量士の試験は有効数字が6桁くらいあった気がするが、こんなのは例外だろう。そう考えると、現実の計算は、この本でやっているような有効数字1桁くらいの世界で済むのかもしれない。他方、簿記3級は12桁の電卓が必須であり、最後の一桁でも間違えたら大問題である。そう考えると、理系は文系より数字に圧倒的に弱いと言わざるを得ず、こういう本で僅かでも補正するべきなのかもしれない。

A good overview of physics through real calculations.

Johns Hopkins Univ Pr (2003/5/30)
英語
ISBN-13: 978-0801872631

2017年12月5日火曜日

Robert J. Allison "The American Revolution: A Very Short Introduction" [アメリカ革命:非常に短い入門]

目次:1.革命の源 2.植民地の反乱 3.独立 4.独立戦争 5.アメリカは違ったのか?

北米の植民地の反乱からアメリカ独立戦争、最後にラファイエットが独立したアメリカに国賓として招かれ、全米を視察するまでの物語。中心になるのは英軍と反乱軍(アメリカ軍)との戦闘の記述だ。

今まで200冊以上VSIを読んできたが、これが一番、読んでいる間の調べものが多かったし、メモも多かった。一つにはこの本には地図がついていないので、余程アメリカ東海岸に土地勘がない限り、東海岸の地図は必須だ。ニューヨーク・ボストン・フィラデルフィアを中心に北米全域で英軍と米軍が戦略を繰り広げるのはそれだけでアツい。米英の各将軍の戦略行動を読みやすく書いているのは非常に良い。短い本だし、詳しく調べればいくらでも時間を掛けられるが、差し当たりこの本は戦争の経過を読みやすくまとめてくれている。VSIの歴史関係は、わたしとしては外れがほとんどないが、楽しめたという意味では、このタイトルが一番かも知れない。

I love VSIs, especially those of the history category. And this title is one of the best of them that I have ever read.

Oxford Univ Pr(2015/7/31)
英語
ISBN-13: 978-0190225063

2017年11月30日木曜日

Scott Adams "Dilbert 2018 Day-to-Day Calendar" [ディルバート2018年日めくりカレンダー]

毎年買っている机上日めくり。前はPeanutsだったこともあるけど、読みつくした感じもあり。毎朝見る物だから結構重要な選択だが、結局2018年もDilbertに。知らない人はdilbert.comにアクセスすれば大体分る。エンジニア‐オフィスにまつわるマンガ。他にも色々物色するけど、これはbusiness jargonとかが学習できるのが利点ではある。理解できないオチなどがあれば、全世界に大量の読者のいるマンガなので、ググれば大体分かる。

My favorite.

Andrews McMeel Publishing(2017/5/23)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1449482343

2017年11月22日水曜日

Jeff Kinney "Diary of a Wimpy Kid: The Getaway" [軟弱な子供の日記12: 逃走/保養地]

例によって「グレッグのダメ日記:逃げ出したいよ」というタイトルでポプラ社から翻訳が出ているが見ていない。12冊目にまでなってほぼ同時翻訳だから、相当売れているんだろう。英語は易しいので、わたしは多読とかいう英語学習法を推奨していないが、多読したいのなら最適だろう。タイトルの"getaway"は二重の意味がある。さしあたり一家がクリスマスにリゾートに行く話だが、終りになって第二の意味が明らかになる。

これまでより絵が多い気がする。相変わらず面白いし、直ぐに読んでしまった。感想としては、○Rodrick可哀そう。○ほぼ犯罪といって良い行為は日本で児童書として受け入れられるのか?ポプラ社はいいのか?○Momが写真をやたら撮りたがるのはSNSに絡めてもっと狂気レベルまで押すべき。実際そんなのいるだろうし。○リゾートホテルとか行ったことないけど、まあこんなもんなんだろうな。○何度か映像化されているみたいだし見ようかとも思うけど多分原書が一番面白いんだろう。

後、絵の中に時々スペイン語が出てくる。カリブ海の想定なんだろう。わたしは全部読めるが、通常の英語圏の読者がどの程度読めるのかは分からない。最後のオチの絵もスペイン語だが、何となく分かるんだろう。気になるムキはGoogle翻訳にでもかければいいだろう。スペイン語を勉強した甲斐があった気がしなくもないが、もしかして、スペイン語が分からないほうが面白いのかも知れないというような…。

My favorite series. A trivial question: if I did not understand spanish, would it be more amusing?

Penguin Books Ltd (2017/11/7)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0141385297

2017年11月21日火曜日

Robert C. Allen "The Industrial Revolution: A Very Short Introduction" [産業革命:非常に短い入門]

目次:1.当時と今 2.産業革命前1500-1700 3.なぜ産業革命は英国的なのか 4.イングランドの状況 5.改革と民主主義 6.海外への産業革命の広がり

産業革命の社会経済的な条件とその影響の概説。基礎的だが、モノスゴク良心的な作りで、高校生程度の歴史の知識があれば十分読めるし、万民のための基礎教養書として翻訳されれば売れると思う。もちろん、日本も含めた世界各国での状況にも言及されている。受けた教育のせいか、どうも産業革命=ブルジョワ革命=煤けた都市労働者みたいな貧困なイメージがあり、この辺り時代というか社会変革に明るいイメージがないが、英語圏の本のほうが良い。この本は人々の考え方の変化とかからもかなり広く状況を捉えていて、初学者にも読みやすいと思う。

A great introduction to the era.

Oxford Univ Pr (2017/04)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198706786

2017年11月20日月曜日

Cas Mudde,‎ Cristobal Rovira Kaltwasser "Populism: A Very Short Introduction" [ポピュリズム:非常に短い入門]

目次:1.ポピュリズムとは何か 2.世界のポピュリズム 3.ポピュリズムと動員 4.ポピュリズムの指導者 5.ポピュリズムと民主主義 6.原因と反応

近頃目立つ話題なのでVSIも流れに乗ったということか。わたしの理解したところでは、要するにポピュリズムとは、「庶民のため」という主張以外に特に深いコンセプトのない政治運動というところだろうか。庶民の反対側には、もちろん既得権益がいて、それがどう定義されるかは状況によって適当だったりする。無暗に危機感を煽るとか矢鱈気の強そうなリーダーとか共通点はあるものの、要するに、見世物感が重要で、内容が重要でないというのが論点なんだろう。元々ポピュリズムという言い方自体にネガティブなニュアンスがあるし。それより、この類の政治理論書の通例で、理論自体より、紹介される事例が面白かったりする。主張が不明のまま、なんか既得権益を潰してくれるというイメージだけで勢いを得るのは、日本に限ったことではないということで。

A good overview over populism movements around the world and a theory.

Oxford Univ Pr(2017/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0190234874

2017年11月19日日曜日

John Goddard,‎ John O. S. Wilson "Banking: A Very Short Introduction" [銀行業:非常に短い入門]

目次:1.銀行業の起源と機能 2.金融媒介 3.証券化される銀行業 4.中央銀行と金融政策の行動 5.銀行業界の規制と監督 6.世界金融危機の起源 7.世界金融危機とユーロ圏政府債務危機 8.世界金融危機への政策と規制の反応

前半は一般的な銀行業の説明で、高校の政治経済レベルで読めるような気もするが、貸方と借方が分からないようだと厳しい。簿記のできない、いわゆる数字に弱い人は厳しいだろうか。しかし、わりと王道な教科書的な解説で、これが理解できないようだと人生の金銭面で苦労するような気もする。後半はわりと直近の金融問題まで解説していて、リアルタイムで新聞などで読んでいた我々としてはおさらいみたいな感じ。後知恵で分かるようなこともあるが、なかなか酷い話で読み応えがあるのは確か。今後のこともあるし、一旦ここで、この本で現状を確認しておくのは良い考えに思える。もっとも、こんな風に思うのはわたしが株式投資に結構注力しているからで、意外に世間の人は興味がないのかもしれない。それにしても必読書に思えるが…。

Basics of banking business and a summary of recent financial crises. A must-read at this moment, both to look over the financial crises and to prepare for the future.

Oxford Univ Pr (2017/02)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0199688920

2017年9月24日日曜日

Jon Kabat-Zinn "Mindfulness for Beginners: Reclaiming the Present Moment―and Your Life" [初心者のためのマインドフルネス:今の瞬間‐とあなたの人生を取り戻す]

初心者のためと書いてあるが、本当のマインドフルネスの初心者のためには、むしろ最初の著作である"Full Catastrophe Living"のが良いかと思う。書いてあることに体系性が感じられず、警句集みたいに勝手に文脈を想像して納得できる人はいいが、そうでなければ何のことか分からない人のほうが多い気がする。付属CDは確かに初心者向けのようだが。

個人的にヨガとか気功とかシステマとかその他呼吸法的なものは色々やってきたけど、マインドフルネスも含めて、結局、手段は個人の好みの問題でしかないと思っている。わたしとしては、一々些細なことに動揺するのを止めたいというのが第一なのだが、どれも決定打になっていない。「動揺する時は動揺するのがよろしい」ということで諦めている。不便な生理だが。ただ、呼吸に集中するというのは、一般的に精神衛生に良い事なのだろう。

そして、マインドフルネスは仏教に源流みたいなことを言うが、そういうことなら、手段を取ったら取っただけムダと思っている。

I do not think that this book is for beginners. Like aphorisms, much is left to readers' imagination.

Sounds True; Pap/Com Re版 (2016/07)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1622036677

2017年9月21日木曜日

Arthur Conan Doyle "The Sign of the Four" [四人の署名]

"A Study in Scarlet"に続く、シャーロック・ホームズ登場の二作目。タイトル中の二つの定冠詞が付いているのと付いていないので、ほぼ四通りの表記があるのが気になる。

構成自体は前作と似ていて、殺人事件自体も奇妙だが、ホームズが推理していき、最終的には遠い異国の犯罪に淵源が見つかる。大英帝国の最盛期であり、ドイルという人は、こじんまりした犯罪話に壮大な背景を描く趣味なのだろうか。復讐というテーマも共通だ。

とても面白かったが、ああだこうだと考察したり批評するようなことがない。このある種の中身の無さが魅力だろうか。今時の推理小説と異なり、謎自体よりも、殺人の奇怪さと、それを上回る探偵の奇妙な推理力の対比が主眼で、さらに異国情緒が話を壮大化しているというところ。最後の点については、今でも殺人事件は景勝地で起きるのが良しとされているし、これはポーにはなかった点だ。

あんまり語ることはないが面白いのは確か。引き続きホームズを読んでいく。全作読むつもりだ。

The second novel of Holmes. It was a real page-Turner, though I do not have much to talk about it. Just enjoy it.

Wisehouse Classics (2017/10/22)
言語: 英語
ISBN-13: 978-9176374658

2017年9月19日火曜日

Martin F. Price "Mountains: A Very Short Introduction" [山:非常に短い入門]

目次:1.なぜ山が問題か 2.山は永遠ではない 3.世界の給水塔 4.垂直の世界に生きる事 5.多様性の中心 6.保護された地域と観光 7.山の気候変動

山の博物誌といったところ。山にまつわる地学や地理学や経済や文化などが大雑把に語られる。この本に限らず、どうもVSIの地理系の本は、今一つな感じがある。"Desert"は例外的に面白いと思ったが、それと同じで、人によってはこの本に山のロマンを感じるのかもしれない。例えば、地理を選択した高校生などが読むには良いと思うが。わたしはというと、日本で登山していること自体は好きだが、世界の山文化とか環境保護とかにそこまでの興味はなく、今一つピンとこない。砂漠と違って身近なせいかもしれない。

For mountain lovers.

2017年7月9日日曜日

Jon Kabat-Zinn "Full Catastrophe Living" [惨劇に満ちた人生]

近頃流行りのマインドフルネスの原典というべき本。「マインドフルネスストレス低減法」ということで出ている翻訳は初版のものだと思われる。多分、本質に大差ない。やたら分厚いが、哲学とかその他の背景の説明も多く、実際にマインドフルネスの訓練を始めたいということなら、もっと効率的な本は日本語でもいくらでもありそうだ。訓練中はほかのことは考えるな、変化は勝手にやってくるから、訓練中は何も期待するな、ただ八週間はやってろ、ということだから、思想とか能書きは不要なはずだが、ただ、理屈がないと納得できないというような人のほうが多いだろうから、説得材料で膨らむのはやむを得ない。「今、ここ」に注意を払うことがマインドフルネスの主旨だと思うが、具体的には自分の呼吸と体の各部に注意を集中することでほぼすべてと言っていいと思う。

わたしとしては、座禅会に通っていたり、気功やらヨガやらも多少は経験があるので、色々比較したりもできるが、この本については、そんなことは忘れて、先入観抜きにこれだけで受け止めるほうが良いだろう。近頃はマインドフルネスとタイトルにつく本は、本屋のスピリチュアルの棚に溢れているが、妙な劣化版を読むくらいなら、この原典を読んだほうがいいかもしれない。禅僧もこの流れに乗ってきて、どうも商売色の強さにうんざりする感じもあるが、本質は退屈なほど単純で健全なものだ。それでも座禅よりはかなり色がある。

この本に書いてあるような考え方などは、わたしとしてはむしろ陳腐に思えるくらいに聞き飽きているが、最近、実際に自分が体調に悪くなって初めて真剣に聞く気になるということがあり…。その意味では、読んで良かったし、こういう考え方に馴染みのない人には是非読んでみてほしいものだ。ただ、この類は、実際に健康不安とかがない人は、なかなか読まないし、読んでもピンとこないかもしれない。

To reduce everyday stress, this book is your first choice.

Bantam; Rev Upd版 (2013/9/24)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0345536938