2015年3月4日水曜日

Aiden O'donnell "Anaesthesia: A Very Short Introduction"

麻酔の一般的な概説書。わたしのような素人の好奇心から、医療系の学生の入門にまで使えるようだ。哲学的な問題(「実際には痛いのにその記憶が残っていないだけではないか」)とか、なかなか面白いところから始まり、歴史の概説も面白いし、化学・生理学・作用機序、道具類、一般的に麻酔に関わるリスクから将来の展望まで、一通り解説されていて、一般人としては十分満足できる読み物だった。

この本を読もうという一般人は大半そうだと思うが、わたしも麻酔科のお世話になる予定になっている。前に読んだTeethと同じ流れで・・・。まずは嘔吐反射が強すぎるというので歯科で鎮静剤、次に口腔外科で全身麻酔。全身麻酔は口腔の手術なんだからガスではなく静脈から点滴なんだろうか。そういう個別の話は医者から直接聞くとして、それ以前に一般的な麻酔の知識をつけるのには最適な本だ。麻酔のリスクなんて、本題の手術自体のリスクに比べれば極めて小さく、普通の人間が特に気にするようなことではないが、麻酔科の世話になる予定があるのなら、興味本位で読むには最適だ。

Like most readers of this book, I am just a layman who are going to have a few surgical operations under general anaesthesia, one of which is just using sedative agent and the other is using general anaesthesia technic. I also have a minor nerve problem for which anaesthesia might be effective. This book is easy to read, provides sufficient information for me, and above all, is interesting and fascinating.

2015年2月20日金曜日

Peter S. Ungar "Teeth: A Very Short Introduction"

最初に若干の歯の一般的な構造とか発生の解説、最後に人間の歯に関する若干の考察があるが、主に古生物学・比較生物学的な観点からの歯の博物誌のようなもの。動物が好きな人なら、一度、歯という観点から、色々な動物を見ると楽しいかもしれない。毎日使っているにも関わらず、それほど関心の持たれないパーツだから、なかなか発見が多かった。結局、動物という観点から見れば、人間は全く特別でも何でもないわけで。

わたしはというと、普通ならこの書名では読もうとは思わないが、このたび親不知をこじらせて面倒なことになり、手術入院ということになっているので、読んでみただけ。しかし、この本は特に人間の歯に特化しているわけでもないし、医療的な観点はほとんどないから、その方面では完全に期待外れではあった。ただ、わたしの親不知の問題が、完全に人類の進化のせいであることはよく分かった。根本的な問題は埋伏智歯であり、その表面の膜が拡大して嚢胞となり、下顎骨を溶かしている。その膜がエナメル質を分泌する膜なのか違う膜なのかは掘り出してから分析するのだろうが、どっちにしろ、智歯wisdom toothがまともに生えていないせいだ。さっさと手術してもらいたいが、予約が埋まっているとかで一か月以上先になる。

人類の進化の過程で、前半のうちは人類の顎は拡大していたが、後半から縮小に転じる。もちろん食べ物が良くなったせいだと思われ、たとえば、狩猟採集生活をしている人は今でも顎はしっかりしている。しかし、その子供が西欧風の食事を始めると、わずか一代で顎が小さくなる。ということは、わたしの埋伏智歯は人類の進化のせいと同時に、小さい頃にあまり固い物を食べなかったので発達しなかったということなのか。どっちにしろ、この件は人類全体の問題であり、だからと言って慰めにもならないが、とにかく、手術が平穏に過ぎるのを祈るばかりだ。

Normally I am not particularly interested in teeth, but recently I have found a bad case of irregular wisdom tooth and will undergo an operation in about a month. Though this book is not a medical book but a comparative zoology, I got a certain degree of consort that this is not my problem but a curse over the entire human kind.

Oxford Univ Pr (2014/04)
ISBN-13: 978-0199670598

2015年2月9日月曜日

Jane Austen "Pride and Prejudice"

「高慢と偏見」の邦題で知られる英文学の名作であり、実際面白かった。夏目漱石が冒頭を激賞しているので有名だが、確かにChapter 1だけでも読んでみることをお勧めしたい。男と女で感想が大幅に異なる気がするが、男なら誰しもMr. Bennetに同情せざるを得ないだろう。わたしは一年半くらいかけてこの本をダラダラ読んで、これから悪口みたいなことを書く気がするが、別に小説自体が悪いわけでなく、小説自体は傑作だ。ただ、そこに描写されている世界がキモいだけである。

男と女で感想が大幅に異なる、というのは、この小説が基本的に婚活の話だからである。19世紀英国の感覚だと恋愛小説なのかもしれないが、21世紀日本の感覚では親やら親戚やら友達やらを巻き込んだ婚活小説以外の何物でもない。または純粋社交小説と言うべきだろう。登場人物がほぼ全員上流階級のヒマ人であり、ほとんど社交シーンの描写とそれについての考察の連続である。コミュ障のわたしでも読めたのは、小説だから人物の気持ちやその場の空気を一々描写してくれるからで、これが映画とかマンガだったら、多分わたしには理解できない。イギリス人に会うたびに思うが、英国は高度な社交術を発達させている国であり、Austenの緻密な描写でなければ理解しきれない。

問題のBennet家には、婚活すべき五人の困った娘がおり、主人公は次女Elizabethである。この次女は、欠点を持ちつつも、基本的には最もマトモな人間ということになっている。長女のJaneはElizabethと仲が良いが、Elizabeth的にはちと善良というかナイーブ過ぎるらしい。残りの三人の妹は基本的にはただの子供で、Elizabeth的には思慮が足りない。母親はムキになって娘の婚活を推進しているが、かなりイタく、社交シーンでのそのイタさに、横でElizabethが赤面して頭を抱えているのが定例。その夫たるBennet氏は、良識はあるようだが皮肉屋で、Elizabethをひいきにしているが、基本的には孤独を愛していて、娘の婚活にさして興味を持っていない。

その他、親戚など他にも珍人物が出てきて、どう考えても読者を笑かそうとしている。小説中、何組か結婚が成立することになるが、作者の描写が容赦なく、全部作者に祝福されているわけではない。一つには、社会背景として、男が持っている地位や財産が重大な意味を持っているからで、ただの恋愛小説で済まない世界観になっている。よく言えば厚みがあるが、高慢と偏見と言うより、虚栄心と先入見と欲得と強迫観念と軽薄と若干の恋愛くらいだろう。

小説の主要部分は社交シーンだが、わたしの感覚では、登場人物のセリフは英語的にはいかにも英国的に礼儀正しいが、言っている内実はなかなかキチガイで、読んでいてなかなかキモい。作者的にはElizabethと若干名だけマトモな人間がいることになっているようだが、わたし的には登場人物がほぼ全員キチガイと言って良い。この世界ではMr. Bennetのみ共感できる。この点はChapter 1の段階で明白である。繰り返すが、Chapter 1だけでも読んで損はない。

全く個人的な話だが、わたしは昔のマンガだと「タッチ」とか「めぞん一刻」みたいな高度な空気の読み合いのような話は、キモい上に人物の気持ちが読み切れずについていけない。その点、この小説は、一々空気や気持ちの描写が詳細だから、わたしでもついていける。キモいことに変わりはないが、コミュ障のわたしとしてはなかなか勉強になった。これが世間なんだろう。そして長い時間をかけて読んだ本は、読み終わる時に少し寂しさを感じる。名作だった。

One of the best novels ever written. No comment.

Penguin Classics(2002/12/31)
ISBN-13: 978-0141439518

2015年1月28日水曜日

Jolene Wochenske "Practice Makes Perfect Basic German" (Practice Makes Perfect Series)

ドイツ語の全く初心者のための良心的な入門書。書き込み式の練習問題集ではあるが、基本的な説明は全部あるし、文法だけでなく単語のセクションもあるので、これ一冊(と辞書)でドイツ語の基礎は固められる。文法を把握するだけなら、"Collins German Grammar"でほぼ完全ではあるが、わたしみたいに手を動かさないと覚えられないという人には、この本が一番だと思う。類書もほとんどないようだ。

ドイツ語を実用にしようとするのなら、この本一冊では練習が足りないかもしれないが、このシリーズはほかにも動詞変化や会話や前置詞などに特化した本も出ているので、この本をやった後に進んでいける。大学の第二外国語とか、辞書を片手にドイツ語を読めれば良いということだけなら、この本一冊でも十分かと思う。音声がないが、ドイツ語の発音は難しくないので、あまり問題にならないだろう。

ドイツ語の最初の一冊としてお勧めだが、個人的には復習のためにやった。独検3級は大学の頃のおぼろな記憶で対応できたが、2級となるとこういう本でやり直していかないと・・・。

A very good introductory book on German grammar. The best workbook on German I have ever seen.

McGraw-Hill (2011/6/7)
ISBN-13: 978-0071634700

2014年12月24日水曜日

Hector McDonnell "Irish Round Towers" (Wooden Books Gift Book)

ヨーロッパにはやたら塔があるけど、アイルランドには特に円柱の塔が多いらしく、アイルランドに散在する円柱のガイドブック。実際には、アイルランド人以外はあまり知らないようだ。ほとんどが見張り台とか時計台とかそんなことらしい。日本語訳もあり。

A good guidebook to Ireland.

Wooden Books (2005/6/1)
ISBN-13: 978-1904263319

2014年12月4日木曜日

Scott Adams "Dilbert 2015 Day-to-Day Calendar"

来年の机上カレンダーもDilbertで。使い始めて何年になるのか忘れたけど、十数年くらい使っているのかもしれない・・・。Dilbert自体は別に日替わりでWebで見れるわけだけど、机の上にあるとWebにはあまりアクセスしなくなった。Scott Adamsは最近何か本を書いているのかと思ったら、"How to Fail at Almost Everything and Still Win Big"とかいう自伝じみたものを出しているようだ。この作者、マンガを読んでいる限りは全く気が付かないが、実は典型的なアメリカン自己啓発系みたいな考え方をするところがあり、あんまり裏側を知りたくないような気もする。"God's Debris"も同じような理由で読んでいない。以前の記事で紹介したけど、単なるマンガのcompilationじゃなくて、作者の考えが活字で表明されている本として、"The Dilbert Principle"と"The Dilbert Future"と"The Joy of Work"と"Dilbert and the Way of the Weasel"の四冊は間違いのないところだが、マジな話なら、作者のblogでも読んでいればいいわけだしな・・・。

My yearly purchase. I do not remember , but for more than ten years?

Andrews McMeel Publishing; Pag版 (2014/7/8)
ISBN-13: 978-1449451509

2014年11月30日日曜日

Jeff Kinney "Diary of a Wimpy Kid #9: The Long Haul"

予約買いしたものの時間がなくて読むのが遅くなった。毎度確実に面白いシリーズで、とにかく日本語訳を読むより原文を読むことを推奨する。普通にギャグマンガ読むより、全然笑える。

今回は車に乗って家族旅行ということで、途中で色々な大惨事が起こる。今までで一番ドタバタが酷く、ちとやり過ぎな気もした。最後のほうはほとんど犯罪レベルというかリアルに深刻なことになり、笑っていられるレベルを越えている気もするが、この辺りは個人差もあるんだろう。こういうのは振り幅がないとダメだし。

このシリーズについては、日本語訳もずっと出ているし、児童書として推奨もされているんだろうけど、そういう種類の本ではない気もする。どっちかというと"The Simpsons"に近く、保守層から批判されそうなものだ。一貫して教育というものに対してシニカルだし、特に今回は犯罪性の点から文句を言う親が出かねない。まあ、わたしとしては、面白いから、ずっと愛読し続けるか・・・。

Hysterical, Cynical, never disappointing.

Harry N. Abrams (2014/11/4)
ISBN-13: 978-1419711893

2014年11月19日水曜日

Dan Saffer "Microinteractions: Full-Color Edition: Designing With Details"

ユーザインターフェースのデザインについて、わりと包括的な解説書。といっても、こういうのは特に体系性や網羅性はないもので、様々なアイデアと部品をなんとなく並べることになるけど、わりとしっかり語っている印象がある。翻訳もなかなか良さげではある。

This kind of book can never be complete nor systematic. That said, this book seems to succeed to some extent. At this point, this is the best book of this kind.

Oreilly & Associates Inc; Full Color ed(2013/11/4)
ISBN-13: 978-1491945926

2014年11月10日月曜日

McGraw-Hill Education "Beginner's German Reader"

超初歩的なドイツ語のリーダー。過去形すらほとんど出ていなかったような。ちょっとした文章と質問がついている。解答はないけど、どうでもいいだろう。イラストが多いので、分からない単語も推測できる。巻末には語彙も収録されているが、完全ではないので、辞書はあったほうが良い。初学者には良いんでは。そんなに面白くはないがすぐに読み終わるし。

Ein Lesebuch fuer Anfaenger.

Glencoe/McGraw-Hill; 1版 (1988/1/1)
ISBN-13: 978-0844221700

2014年11月9日日曜日

David M. Gwynn "The Roman Republic: A Very Short Introduction"

ローマの出現(トロイアの滅亡とかアエネイアースくらい)から共和制の終焉(カエサルがどうとか)くらいまでの通史。"Roman Empire"に比べると、普通の標準的な通史と言えるだろう。しかしまあ、特にカルタゴと西方でのローマの軍事行動を見ていると、まさしく暴力の組織的な使用方法に秀でていたのがローマの栄光なわけで、成功する国家というものはこういうことかと思う。その上で文化とか芸術もあるわけで・・・。

A standard history of republican Rome.

Oxford Univ Pr(2012/10/25)
ISBN-13: 978-0199595112

2014年10月22日水曜日

S. A. Smith "The Russian Revolution: A Very Short Introduction"

1920年代までのロシア革命の概説。政治だけでなく、経済社会文化面でのボルシェビキの政策と人々の暮らしも詳しい。色々あって惨憺たる歴史だ。しかし、彼らが何を目指して、何を間違って、何に成功したのか学ぶべきだろう。第一次大戦でボコボコにされた後進専制君主国では、他にどんな選択肢があったのかもよく分からないが・・・。合わせて読みたい"The Soviet Union"と"Russian History"。

だいたい団塊の世代は左翼だし、わたしたちもコルホーズとかソホーズとかがまるで優れた制度であるかのように教えられてきた気がするが、もっと上の世代は、少なくとも庶民レベルでは反共であるように思う。というのも、我々がソ連の実情をリアルタイムで知っていたように、彼らもロシア革命の結果をある程度肌で知っていたからなんだろう。おおざっぱには「統治されているのに不満を持った下々の労働者が革命を起こして自分たちで統治しようと試みたが、なにぶん下々の者は資本家たちのように大局的見地に立てないので自滅した。資本家も労働者もそれぞれの役割があるのだから、それぞれの役割を果たすことに専念せよ」みたいな話で、正直なところ、この本を読んでいると、この意見に同意するところもある。日本でも「お前は額に汗して働く労働者か」ということで、人格を判定する風があったらしいが、ソ連は国家レベルでそれをやっていたのであり、実にゾッとする。少し金持ちな風を見せると近所の人にチクられて強制収容所送りなんて期間が何十年もあったわけで、政治というのは恐ろしいものだ。

というのがわたしの感想だが、人それぞれ様々な教訓を得るだろう。革命をどう考えるにしても、色々考えることの多い本ではあった。今時、共産主義革命を起こそうなんてムキも少ないし、そろそろ冷静に社会主義革命の何が良くて何が悪かったのか、考え直しても良いころだ。

An excellent account of the revolution. There are few people trying to cause a socialist revolution, so now we can assess the socialism in more balanced ways.

Oxford Univ Pr(2002/5/16)
ISBN-13: 978-0192853950

2014年10月4日土曜日

International Chamber of Commerce "Incoterms 2010: ICC Rules for the Use of Domestic and International Trade Terms"

Incotermsと言っても普通の人は何のことか知らないと思うが、International Commercial Terms国際取引条件の略で、貿易の際の各種条件を規格化したものである。これを利用してたとえば"CIF Yokohama"と言えば、「輸出者が商品を輸出港で運送人に引き渡した時点で輸出者の責任は終わるが輸送費と保険料は輸出者モチで輸入港横浜での通関とかもろもろは輸入者がすること」等々という意味になる。まあ、特に貿易と関係していなくても、海外から届いた荷物に"DAT Narita"だの"FOB New York"だのというラベルがついているのを見たことのある人はいるだろう。

というわけで、貿易に関わる人は事務所に置いておくべき本で、できれば通読しておくべきだろう。わたしはというと、仕事では実際には国際運送業者に丸投げということが多いが、貿易実務検定を取ろうと思ったので、一通り目を通している。いわゆる貿易実務のマニュアルみたいな本は日本語でもいくらでもあるし、Incotermsに言及していない本はありえないが、大して分厚いわけでもないので、一度原文を見ておくべきだろう。素人でもなかなか面白いもので、貿易実務を垣間見ることができる。

A must-have for traders.

ICC Publishing S.A. (2010/11/1)
ISBN-13: 978-9284200801

2014年9月24日水曜日

Lawrence M. Principe "The Scientific Revolution: A Very Short Introduction"

15世紀前後に起こった科学革命の歴史的な記述。つまり、科学革命の理論とかを提示するというよりは、近代科学の始まりの叙述である。キリスト教が科学を抑圧したとかいうような俗説は排除しているので、安心して読める。わたし個人としては、知識として特に新しい話はなかったが、この分野は初めてという人にはお勧めできる。

A basic description of the scientific revolution. Free from prevalent beliefs. Recommendable for novices in this area.

Oxford University Press (2011/5/19)
978-0199567416

2014年9月12日金曜日

Randall Munroe "What If: Serious Scientific Answers to Absurd Hypothetical Questions"

予約買いで期待を裏切られず、一気読みした一冊。まだAmazon.co.jpではあまり売れていないようだが、.comのほうでは既に大絶賛されている。コアなファンのせいで過大評価されている気がしなくもないが、わたしも相当なファンなので判定できない。著者のサイトによれば、日本語訳は早川書房から出るらしい。余程下手を打たない限り日本語訳でも売れると思うが、出版時期が不明なようだ。普段からxkcdを読んでいるファンであれば、"xkcd volume0"は買わなくても、この本は買って損はない。
xkcdを知らない人は単にサイトを見てもらったほうが早いが、元NASAのロボット技師が週に数本短いマンガを描いているもので、タダで読めるから、数本読めばテイストが分かるだろう。かなり理系度が高めではある。
この本にも結構な頻度でマンガが挟まれるが、基本的には文字の本で、読者から寄せられたムチャな仮定上の質問にバカ正直に科学的に考えて答えていく形をとっている。中には面白いものやそれほどでもないものが含まれるが、退屈はしない。たとえば:
  • 野球の投手が光速の90%で投球すると何が起こるか。
  • 中性子星の密度の弾丸が地球上にあったら何が起こるか。
  • 大英帝国にはいつから日が沈んでいないのか。
  • 紙のWikipediaを維持するには何台プリンタが必要か。
  • 雨が雨粒ではなく一滴で全部降ってきたら何が起こるか。

あらためて見ると普通の質問も混ざっているが、一々真剣に科学的に答えていく。"The Physics of Superheroes"みたいに教育目的で書かれているわけではなく、一般に売るにはやや専門的過ぎる感じもあるので、日本語訳にはかなり訳注が付くのかもしれない。早川書房というのは妥当な線だろう・・・。ただ、SFファンにこれを限定するのは惜しい。現にわたしもSFファンじゃないし。迷ったら買いの本だと思う。続編が出るなら当然予約するつもり。
At the time of writing this article, this book has already gained huge lauds around the world. I have nothing to say, except for that I would like to pre-order a Book II.
John Murray Publishers Ltd (2014/9/4)
ISBN-13: 978-1848549579

2014年9月2日火曜日

Martin Luck "Hormones: A Very Short Introduction"

日本語で言うと「内分泌学」とか言うのだろうか。最初に概要と歴史、最後に今後の展開がある以外は、各系統のケーススタディ。生殖・血圧尿関係・骨カルシウムの代謝・脂肪食欲関係・甲状腺ホルモンの作用・サーカディアンリズム関係。わりと淡々と説明している感じだが、非常に面白い。というのも、普通の人が考えているよりホルモンの生成・作用が遥かに複雑だからだ。いわゆる「心」というものは神経によって構成される電気回路を中心に考える傾向があるが、実際には神経と密接な関係のある化学物質によって気分感情が影響を受けるというか、むしろそっちのほうが心と考えるべきなのかもしれない。全身の細胞は神経によって作用に影響を受ける部分もあるけど、ホルモンの影響のほうが遥かに大きくて複雑なのであり、感銘を受ける。

それはそれとして、特にOxford Very Short Introductionsを読んでいると、つくづく日本の新書は知的レベルが落ちたなと感じる・・・。まあ、数も増えたが・・・。特にこういう医学関係だと、ここまで高水準な本は新書ではまずないどころか、あからさまな疑似科学本を結構な出版社が出している有様で、むしろ単にこういう本を翻訳したほうが良いと思う。売れないのかもしれないが・・・。

A great introduction. Chiefly comprised of several areas(axis) of hormonal mechanisms. Impressive.

Oxford Univ Pr (2014/09)
ISBN-13: 978-0199672875