2019年1月31日木曜日

Pascal Gauchon, Jean-Marc Huissoud "Les 100 mots de la géopolitique" [地政学の100語]

地政学という概念自体は最近どんどん流行ってきている気はするし、フランス語とかで新聞を読む場合には、この本に書いてあることくらいは知っておいたほうが良い。まあ、わたし自身にとっては、それほど新しく学んだことがないが、フランス語の勉強という意味。この「100語」という体裁は、BOBO本では最高の効果を挙げたが、こういう風な感じで時事用語みたいなのを解説するのでも良いのかもしれない。

Ce n'était pas mal.

Presses Universitaires de France: 4e édition (10 mai 2017)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130792796

2019年1月22日火曜日

David Simonnet "Les 100 mots de l'entreprise" [企業の100語]

会社にまつわる100語ということで、この方面の語彙を回収するために読んでみたが、途中で用がなくなり、そうなってみると特段面白い本ではない。Que-sais je?らしい大量の修辞疑問文が記憶に残る以外は、わりと普通の話ばかりで、フランス特有の労働者の強さと会社法事情を別とすれば、普通に新聞を読んでいる人のレベルの知識ばかりだろう。それに、この類の話はすぐに古くなるということもある。あえておすすめもしないし、翻訳もされないだろう。

Pas très interessant.

Presses Universitaires de France - PUF (20 janvier 2016)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130619796

2019年1月20日日曜日

Thorstein Veblen "The Theory of the Leisure Class" [有閑階級の理論]

これは社会学の古典として必ず挙がる本だが、多分、先生方もそれほどプッシュせず、学生も読まないし、せいぜい就職試験とかで「ウェブレン‐有閑階級の理論‐誇示的消費」という連想だけ覚えているのが現実だろう。読んでみれば理由は明らかで、読みにくいとかムダにprovocativeというのは別としても、根拠不明の独断と偏見に満ち溢れていて、こんなのが社会学と思われては教育上問題がある。今の基準から言えばヴェーバーもデュルケムも酷いという話もあるが、これについては学問と言えるレベルではなく、せいぜいが文明批評というしかない。

ただまあ、それでも今のところまだ名著と呼ばれている理由も分からなくはない。たとえば、今の世で「品が良い」と言われるようなものは、要するにムダに使える閑暇か財力を表現するようなものであるというような主張がある。こういう断言は、根拠を示して正しいとか間違っているとかいうような命題ではなく、単に一つの見方の提示で、今の学界では排除されるのかもしれないが、しかし無意味な命題でもない。そして、現代の階級制度について冷笑的な分析を行っているが、マルクス主義的では全くない。

そういうことでは、今ならブルデューを読んでおけば上位互換の気もするし、わたしとしては、ボボの100語を強く推奨したい。あえてこの本を強く推奨しないが、こういう本を読んで引用して閑暇を誇示するのも一興かもしれない…。有名な本だし、読んで損したとは思わないし…。

A nice book to read to show off your abundant leisure.

Blurb (2019/1/9)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0464712701

2019年1月7日月曜日

Alistair MacLean "The Guns of Navarone" [ナヴァロンの砲]

第二次世界大戦中、イギリス軍の特殊部隊がギリシアの島に設置されているドイツ軍の要塞砲を破壊する物語。その筋では冒険小説の名作とされている。年末年始の休みに楽に読むのにちょうど良かった。

と言っても、わたしにとってはまず映画「ナヴァロンの要塞」の原作ということで読んでいる。映画は子供の頃テレビで、やはり正月に見たはずだが、記憶にあるのは三つのシーンしかない。多分最初のほうのナヴァロンの砲を撃つ時にドイツ兵が耳を両手でふさぐところと、最後の給弾装置で爆破装置が作動するところ、そしてドイツ軍に捕まったところでアンドレアが俺は関係ねえとか言って芝居をしてから反撃するところだ。この三つ目のシーンは、どう考えても小説より記憶の中の映画のシーンのほうが良い。主観を簡単に描写できるのが小説の利点ではあるが、ここではマロリーの主観を書くべきではなかった。

話自体は面白くてどんどん読めるのだが、色々疑問なフシがあり…。まず12インチの砲というのがそんなに巨大な気がしない。二門と言わずもっと設置できる気が。主人公たる特殊部隊の指揮官マロリーは世界トップのロッククライマーということで、山岳戦闘の描写がかなりあるが、多少登山に詳しければ、描写の薄みは感じる。全体に具体的にどういうことをやっているのかも分かりにくいところも所々あり、結局こういうのは映画のほうが向いているのだろう。そしてドイツ軍が間抜け過ぎる…というのは、話の都合上、仕方がないかもしれない。人が結構死ぬというか、言い訳しながらどんどん殺していくので、受け付けない人にはお勧めできない。チープというのは言い過ぎだが、少なくとも純文学ではない。

しかし、こうやってツッコんでいくのも本来は野暮なことだろう。難しく考えないで楽しければ良い。

It was a good reading for holiday seasons.

HarperCollins(2004/5/4)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0006172475

Richard Carlson "Don't Sweat the Small Stuff: And It's All Small Stuff" [細かいことにこだわるな:そして全部細かいことだ]

随分昔に読んだ本で、未だに本屋に置いてあるところを見ると、良い本なのだろう。最近は洋書をあまりリアル店舗で買わないが、神保町の三省堂で買った記憶がある。一項目ずつが短く、英語も易しいので英語学習には良いだろう。今見ると別にいいやと思うが、鬱が酷い人には気分転換に良いかも知れない。中身はHow to Stop Worrying and Start Livingとさして変わらないが、こっちのほうがはるかに読みやすい。なんかこの類の本は卒業してしまった感じもあり、どっちかというと若者向けだろうか。当時「車の運転はそんなイライラスするものなのか」と思った記憶がある。わたしは車を運転しないので分からない。通勤電車も今は随分空いている電車に乗っているし…。日本語訳も売れているようで、「小さなことにくよくよするな」のほうが良い翻訳タイトルだろう。中身的には「くよくよ」よりは「イライラ」のほうが多かった気がするが、"worry"と同様にアメリカ人はこの二つを区別しないのかもしれない。サンマーク出版ということもあるし、長距離鉄道に乗る時なんかにちょうどいいかもしれない。

Hodder Paperback (1998/2/5)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0340708019

2019年1月2日水曜日

Mike Goldsmith "Waves: A Very Short Introduction" [波動:非常に短い入門]

1.波の本質 2.水の波 3.音波 4.地震波 5.生物学的な波 6.電磁波 7.量子波 8.重力波

5章を除いて基本的に物理学の概説。正弦関数だのフーリエ解析だの屈折だの干渉だのというような数理的な説明は1章にまとめられているが、別に数式が解説されるわけでもなく、ポピュラーサイエンスの範疇と言っていい。わたし自身を基準にして言えば、2章の水たまりに風が吹くところからの説明は、流体力学を一通り勉強したくらいでは知っている人は少ないと思われ、なかなか感動的だ。34章についてはわたしは騒音振動の勉強をしているから詳しいが、そんな人も少ないだろう。それでも初耳な話が多い。5章は他の章と毛色が違い、蛇がどうやって進むかとか興味深い話が多かった。6章については電気通信や無線や放射線の勉強をしているので、やはり知らないことは少ないが、それでも面白い。78章はさんざんポピュラーサイエンスでこすられている内容。

知っていることも多いのに、とにかく読んでて楽しい本だった。これはもしやと思ったらやはり"Sound:Very Short Introduction"と同じ著者だった。わたしが音の勉強を始めるきっかけになった本だ。さしあたり去年は騒音振動の公害管理者試験に受かったが、この方向は今年もどんどん進めていく。

Very fascinating book.

Oxford Univ Pr (2019/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198803782