2020年2月25日火曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1959-1960: Volume 5" [Peanuts完全版1959-1960巻5]

読んでいて色々調べものが多い。Linusのthe Great Pumpkinが定番化しているが、手紙の宛先"The Great Pumpkin c/o The Pumpkin Patch"の中のc/o(in care of)は日本語に直訳されて気付になった。Charlie Brownのせりふ"Your shoes will always squeak until they're paid for."は英語圏でもほとんど記憶が薄れている模様。

新キャラとしてSallyが生まれる。ここでCharlie BrownがChocolate cigarを配るのも英語圏でも既に忘れ去られた風習らしい。赤ちゃんのSallyはものすごく可愛い。Sallyはわりと初期からLinusが好きだ。もちろん名前だけだが、Linusの先生Miss Othmarも登場するが、この時点で結婚してHagemeyerになっている。Snoopyはこの時点では兄弟がいないと言っている。Snoopyが犬小屋の上で寝るのはもう普通だし、二足歩行も多く、ボクシングやアメフトまでやっている。

時代を感じさせる言葉として"early warning"とか"sputnik"とかがある。プラカードを持って黙って歩くのも反戦運動の影響なのかもしれない。LucyのPsychiatric helpも登場するが、この時代の流行りなんだろう。お約束としては他にCharlie Brownが謎の手紙を書くとか、LucyとCharlie Brownのアメフトの件とかが確立。Lucyと縄跳びという関連も忘れられてない。LinusがChrismasの朗誦で苦労するのもある。そして何より、ここでLucyの名言"Happiness is a warm puppy."が出た。あと個人的にはLinusがlibrary cardを手に入れて得意になる件は覚えておくべきか。

I'm never bored with Peanuts.

Canongate Books Ltd (2009/10/15)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1847671493

2020年2月16日日曜日

William Doyle "The French Revolution: A Very Short Introduction" [フランス革命:非常に短い入門]

目次:1.こだま 2.なぜそれは起こったのか 3.どのようにそれは起こったのか 4.それが終わらせたもの 5.それが始めたもの 6.それが立つところ

フランス革命の経緯自体は最小限描かれているが、基本的にはその歴史的意義と解釈の解説。ほとんど業界内部の事情みたいな感じにもなっているが、特に欧州人にとってはそれくらい感情負荷の高い出来事で、今でもBrexitがどうとかでフランス革命の評価が左右で分かれるくらいで、仕方のないところがある。

大雑把な流れとして啓蒙主義→フランス革命とテロ政治→独裁制と戦争(ナポレオンとかヒトラーとか)→共産主義革命→共産圏の崩壊みたいなことで、これが必然なのか偶然の出来事の流れなのかみたいな話もあるし、これと英語圏、特にアメリカ独立革命が何の関係があるのかも問題だ。たとえば日本では、明治時代にはフランス革命というと野蛮極まる愚民暴動みたいな扱いになっていたらしいが、これは英語圏の評価とだいたい一致していた。しかし、今の日本の教育ではどうもフランス革命というとやたら肯定的に教えられているような気がする。フランス語圏では、日本ほどでないにしろ肯定的な評価が多い気がするが、どう評価するにしてもフランス人はその上に生きていくしかないんで、なかなか冷静でいられない主題なんだろう。

この本はというと、そういうわけで、歴史業界、というかフランス革命史業界の中の個人的な対立とかまで踏み込んでいるようなことで、普通の人はここまで知りたいと思わないと思うが、これくらいモメる話だということは良くわかった。物語みたいにフランス革命を読んでいきたい人にはお勧めできないが、この本を読んでしまうと、よくあるフランス革命物語みたいなのを真に受けるのがバカバカしくなってくる。個人的には、だいたい革命とか内戦とかいうのは憂鬱だが、もうちょっとフランス史も勉強するかと思った。

I guess it is Well-balanced.

Oxford Univ Pr; 2版 (2020/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198840077

2020年2月12日水曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1957-1958: Volume 4" [Peanuts完全版1957-1958巻4]

なんだかんだで調べものが多いのは時代がずれているせいも大きい。Linusが理屈を言い出した。常時ではないがSnoopyが普通に立ち始めており、犬小屋の上で寝始める。真ん中あたりで全登場人物が出るストリップがあるが、出ているのはShermy, Lucy, Pig-pen, Violet, Patty, Snoopy, Schroeder, Linus, Charlie Brownで、これで九人の野球チームに一応なる。時代的にはベトナム戦争で、死の灰やら人工衛星とかが話題。Charlie Brownが洗濯板を見つけるが、この時点で使い方を知らないなど。

I love Snoopy.

Canongate Books Ltd (2008/10/16)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1847670762

2020年2月5日水曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1955-1956: Volume 3" [Peanuts完全版1955-1956巻3]

Linusが何気にしゃべり始め、立ち上がっている。毛布は定番化した。しかしまだSchroederと差がある。現時点ではCharlie Brownと対等なのはSchroederで、学校のシーンが出てくるが、Charlie Brownの前の席はSchroederだ。Shermyも一応まだいる。Violet/PattyのCharlie Brownに対する態度が酷いが、そのうちキャラが薄くなっていくのだろう。Pig Penはやはり可愛い。お約束としてSchroederのピアのとLucy、凧揚げ、LucyとCharlie Brownのアメフトなどが成立する。Snoopyはまだ四足歩行だ。テレビがラジオにとって代わる。

I love it. Still lacks Sally, Peppermint Patty and Marcie.

Canongate Books Ltd(2008/10/16)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1847670755

2020年1月24日金曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1953-1954: Volume 2" [Peanuts完全版1953-1954巻2]

こんな速度で読んでいくつもりじゃなかったが…。

Charlie Brownはまだ時々意地悪だが、既に自虐キャラとして固まりつつある。CBがマンガを描くのは後にはあまり見たことがない。あとココナツが嫌いという設定もあまり見たことがない。Schroederはもう赤ちゃんではなくピアノの他にキャッチャーをやり始めた。もうCBとほぼ対等で、Shermyに取って代わっていくが、後にはLinusがこの役をすることになるのだろう。

Linusはまだ赤ちゃんでほとんどしゃべっていないが、毛布を持ち始めている。Lucyはまだ明確にCBより年下でチェッカーでずっと勝っている。ムダに意地悪とか、縄跳びの専門家とか、星を数えるとかの変な行動も出始めているし、Schroederが好きで、既にキャラが確定している。PattyとVioletはまだまだ出ているし、わりと最後まで出ていると思うが、Shermyは消えつつある。

新キャラとしてはPig Penが登場する。作者はあまり面白いことを思いつかないと言っていたが、かなりの人気キャラで、確かに良い。声の大きいCharlotte Braunは初めて知った。

絵はまだ立体感があるし、CBがまだ左から右にボールを投げている図もある。白目表現は後には見ない特徴だ。あと、学校でのエピソードがまだほとんどない。時代的にはアメリカはまだ48州。個人的には、1954年時点でCBが「誰かが先生にリンゴを持って行っているのを見たことがない」と言っているのに注目した。机の上にリンゴが置いてある=先生の机というマンガ表現がliz climoでもあるが…。歴史の勉強にもなる。

Love reading these comics. *SIGH*

Canongate Books Ltd(2007/6/27)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1847670328

2020年1月20日月曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts 1950-1952: Volume 1" [Peanuts完全版1950-1952巻1]

Snoopyは世界一稼いでいるキャラクターみたいなことで、グッズ関連は結構うんざりするけど、未だに机の上にはPeanutsカレンダーだし、昔から好きだし、そのせいで人生で最初に買った洋書はPeanutsだったし、この際、全部読むことにした。この巻は本当の開始期で、まだ後の定番キャラとかは出揃っていない。日本で言えば1952年でやっと鉄腕アトムが連載開始くらい。

というわけで、古さを感じさせる要素として、ようやくテレビが普及し始める頃なので、テレビよりラジオのほうが多い。Schroederが聞いているのはラジオかレコードだし、電話はもちろん黒電話だ。言葉も古くて、当時の流行語とかは辞書で調べると<古>とか書いてあったりする。とはいえ、ギャグとかに古い感じはしない。絵として見ると、後と大きく違うのは、画面に奥行きがあることで、テレビやラジオのほか、Schroederのピアノも立体的に描いてあって、これはこれで可愛い絵だ。後はほぼ平面構成になって、Snoopyが犬小屋の上で不可能な寝かたをすることになるが、今のところ、普通に犬小屋の中で寝ているし、そもそも二足歩行していない。様式化されていないので、話の内容的にもリアルな子供に近い。

キャラクターとしては、Charlie Brown, Snoopy, Shermy, Pattyくらいが初期メンバーで、この巻の時点では、SnoopyがCharlie Brownに飼われているとは確定していない。ごく初期にVioletが投入されて、後に比べるとCharlie Brownはずいぶんモテている。ShermyとかPattyとかVioletはCharlie Brownの友達というだけで、特に性格や典型的な振る舞いが設定されていない。Charlie Brownは既に後の抑鬱傾向が少し出ているが、まだGood Griefとは言っていない。かなり早い時期に投入されたSchroederは最初から天才ピアノ赤ちゃんで、とても可愛い。少し遅れて登場するLucyは最初から明確に性格が悪い設定だ。この巻で既にアメフトのボールを引っ込めている。続いて登場するLinusはまだ赤ちゃんだが、結局、この赤ちゃんキャラのまま毛布を引きずり始めるのだろう。

全体的に初期だからといって面白さが劣るわけでもないし、後の定番キャラも既に揃い始めている。重要キャラでまだ出てこないのはSallyとPeppermint PattyとMarcie、そしてWoodstockだ。かなりコアなファンでないと、これを一巻から読もうと思わないかもしれないが、中学とか高校の英語の先生は、こんなのから例文を採取できるんじゃないかと思う。わたしの記憶では、わたしは中学生で既に読んでいた。

At last. My most favorite comics in one package.

Canongate Books Ltd(2007/6/27)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1847670311

2020年1月15日水曜日

Richard Earl "Topology: A Very Short Introduction" [位相幾何学:非常に短い入門]

目次:1.位相幾何学とは何か 2.曲面を作ること 3.連続的に考える 4.平面と他の空間 5.位相幾何学の香 6.結び目か結び目でないか

最初のうちは地下鉄だのメビウスの輪だのオイラー数だのトーラスだのよくある話をしているが、連続性の概念からわりと急にε-δ論法や中間値の定理が完全展開され、何で解析学と思っていると距離空間から位相空間とか多様体とか群とかいう話になる。あまりこの方面の話は読んだことがないので、数学の色んな分野をどんどん横断していくように思ったけど、後から思うと自然な展開なので、数学科なら普通の教程なのかもしれない。最後のほうはポワンカレとかペンローズとか言っているが、コアな議論としては四次元を超える話はしていない。理論上は高校生でもわかる話だが、そんなにさらさら読めるようなものでもなく、実際には大学レベルだろうか。

現実に工学なんかで位相幾何学が必要になるのは、わたしのレベルでは異常事態だが、昔から興味のあるところではあった。ただ、この本を読んで思うのは、一応大学レベルで解析やら幾何やらをやってからでないと、意義が分かりにくいかもしれない。高校生レベルで結び目だのどうだのだけ説明しても詰まらないだろう。何でもポワンカレは数学を統一しようとした最後の数学者らしい。VSIの数学書としては、その意味で難しい部類かもしれない。良い本だった。

An excellent introduction.

Oxford Univ Pr (2020/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198832683

2019年12月19日木曜日

Graham Patrick "Organic Chemistry: A Very Short Introduction" [有機化学:非常に短い入門]

目次: 1.導入 2.基礎 3.有機化合物の合成と分析 4.生命化学 5.医薬化学 6.殺虫剤 7.感覚の化学 8.重合体とプラスチックと繊維 9.ナノ化学

VSIのこういう「一般的過ぎるタイトル」はレベルが低いことが多いが、多分、高校でやる程度の化学をだいたい分かっていれば大丈夫だろう。構造式は大量に掲載されているし、エチレンの構造式を書けないレベルでも問題ない。内容はほぼ目次から予想される通りで、有機化学の基本を少し解説した後は、いろいろな応用分野の解説だ。個人的には有機化学系の知識としては、毒劇物と登録販売者の資格を持っているくらいだが、退屈はしない。特に重合体のあたりは結構手薄なところだったので、勉強になった。一般にも評判がいい本のようだ。

A good reading.

Oxford Univ Pr (2017/5/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198759775

2019年12月17日火曜日

Jeff Kinney "Diary of a Wimpy Kid: Wrecking Ball" [軟弱な子供の日記:鉄球]

シリーズ14作目。表紙から想像されるような大騒ぎはなく、引っ越しの話。翻訳も直ぐに出ているようで、一定の需要があるのだろう。多分作者の実体験だと思うが、前から気になっているが、Gregの家が裕福過ぎて、引っ越しもどうも実感がない。どこまでが誇張でどこまでが実際にあり得る話なのか、わたしには判別しかねる。恐らく二階に水回りの施設があると、水漏れの問題は確かにあるだろうけど、どれくらいの話なのか…。特にMannyの件が信じがたい。個人的な事情として、わたし自身がミニマリストなので、物が散らかる話はフィクションでもちょっとしんどいということがあり、この巻については、少し下がったかな…。

A tale about a rich family.

Puffin (2019/11/5)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0241412039

2019年11月28日木曜日

Essi Viding "Psychopathy: A Very Short Introduction" [サイコパス:非常に短い入門]

目次:1.どのようにして誰かがサイコパスまたはサイコパスになる危険があると分かるのか 2.共感の無さを説明すること 3.衝動性と社会的な行動ができないことを説明すること 4.なぜサイコパスになる人がいるのか 5.サイコパスをどう扱うべきか?

サイコパスという言葉は日本ではわりと適当、またはムダにロマンチックに使われている気がするが、ここで言うサイコパスのイメージはもっと具体的で、だいたいが粗暴で、往々にして刑務所に入るが再犯を繰り返すような感じ。そもそも他人に共感する能力がないが、特に本人自身が苦痛について鈍く、必然的に他人の苦痛など配慮せず、他人を操作する目的以外で親切なことはない。同様に、罰から学習する能力も低く、犯罪を犯すにしても衝動的で、ものすごく些細な利益のために割の合わない暴力を振るい、何度も収監される。同情心のなさ、苦痛に対する鈍感は、本人は自分の才能だと思っており、他人に配慮したりする人間を見下しているので、治療法が見つかったとしても本人の協力は期待できない。

というようなわけで、世間で面白半分に言われているよりは殺伐とした話で、確かにこんな人間がいるのはみんな知っている。近頃は犯罪報道でも前科〇犯みたいなことは言われないが、この人種はいっぱいいるんだろう。でこの本だが、サイコパスについて分かっていないことが多すぎるので、この本も事象の表面をひっかいているだけというのが正直な印象だ。脳の構造とか遺伝要因とかも調べられているが、他人に共感するための脳の領域の活動が低いとか、まあその程度の話だし、処置については鋭意研究中だが、今のところ有効な手段もないようだ。著者がどういうつもりか分からないが、わたしとしては「生まれつきこういう奴」という印象で、教育とか治療とか処罰でどうにかなる問題に見えない。

他は心理学一般に言えるような一般論とか警告で、あまり読んでいて発見のある本ではなかった。ただ世の中にあふれるサイコパス診断みたいなのがバカバカしくなるのは間違いない。

There is too much yet to know about this phenomenon.

Oxford Univ Pr (2020/1/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198802266

2019年11月12日火曜日

Vincenti Aurore "Les Mots du Bitume" [瀝青の言葉]

直訳ではタイトルの意味が分からないが、瀝青→アスファルト→歩道ということで、要するにフランスの俗語辞典である。日本で瀝青を使うのは車道のほうだが、フランスでは違うのだろうか。どうでもいいが。

わたしが入手した版は装丁もきれいだった。内容的にも良心的で丁寧に作ってある感じだ。ただまあ、俗語時点の類は英語などでも読んだことがあるが、どうもあんまり響かない。一つには俗語に用がないというのがあるし、流行り廃りも早いし、外国人が使うにはリスキー過ぎるというのもある。それに、例えば日本語でも似たようなものがあるが、そういうのがニュアンスを正しく伝えているかどうかというと、かなり疑問がある。

しかし、外国語を学ぶ人にとっては、そうは言っても知りたくなるには違いない。通読しやすいし、実際に採取した使用例も載っていることだから、大間違いもないだろう。英語やアラビア語からの借用も多いが、目立つのはやはりverlanだった。俗語だらけのフランス語映画を見た後で読んだが、verlanに慣れるのは大きい。

Utilizer ces mots est trop risqué pour nous. Quand même, on veut les savoir....si seulment pour les comprendre.

Le Robert (2017/10/5)
言語: フランス語
ISBN-13: 978-2321011163

2019年11月4日月曜日

Judea Pearl, Dana Mackenzie "The Book of Why: The New Science of Cause and Effect" [なぜの本:原因と結果の新しい科学]

まるで一般書のように売られており、確かに一応一般人向けに書いているような気はするが、実際には多少統計学をやったことがないと分かりにくい。日本語では「統計的因果推論」と言うが、統計学的にデータから因果関係を計算するかなり新しい分野で、その第一人者が一般向けに書いた本である。と言っても、そもそも一般人にはこんなのがなぜ新しい分野なのか分かりにくいと思われる。

今でも統計学の初学者は「相関関係は因果関係ではない」という呪文をひたすら唱えさせられることになっている。そして疑似相関とか交絡因子とかいう概念を学び、実際に相関係数だの回帰係数だのを学ばされるが、永久に因果関係の概念は教えられることはない。これは古典流でもベイズ統計でも同じことで、統計学で判明するのは相関関係だけで、それを因果関係とは何かについては統計学の範囲外ということになっている。

それはそれでその通りなのだが、著者は、因果関係を明示したグラフ図を導入し、そのグラフを利用してデータを解釈することで、今までに不可能だった計算が可能になると主張する。著者が最も重視するのは反実仮想、つまり、「もし違うようにしていたらどういう結果になっていたか」という確率計算だ。これは人工知能との関連で未来のある話である。もっとも、グラフ図をどうやって思いつくかは謎であることに変わりはなく、"Causation"で扱われるような形而上学的問題は素通りされているが、そこは筆者の関心ではないようだ。

さらに、それ以前に、因果関係を表すグラフの導入により、今までの統計が行ってきた誤りがどんどん暴かれるのも深刻な話である。著者の言うところでは、伝統的な統計学の方法は、多くの場合に交絡因子を統制し過ぎており、そのせいで誤った結論を出しているという。たいてい我々は主題でない因子は統制すればするほど良いみたいに教えられているが、実際には統制してはいけない因子もあり、その判別は因果モデルを表すグラフを用いれば代数的にできる。

その辺りの詳しい話は本書を読むしかなく、わたしはこの本は統計に少しでも関わる人の必読書と思っている。それはそれとして、この本の書き方はちょっと酷いような気もしている。まず、最初から三分の一くらいは著者の言うところの"causal revolution"の能書きが延々と書かれてかなり退屈だ。do-calculusという言葉もわりと最初のほうに紹介されるが、随分読み進めないと具体的に説明されず、それまで延々と統計学史と革命の効能を聞かされる。統計学の歴史を振り返るにしても、全体的に感情過多でムダに論争的で、もうこれはネイマンピアソン以来の統計学の伝統なのだろうか。

素人が読んでいて、統計的因果推論の有効性がようやく明らかになってくるのは半分くらい読んで喫煙-肺がんの例が出てくるあたりで、そこから先は、やはりムダに感情が多いのは別として、意味が分かってくる。最後のほうの法学的または哲学的考察は、個人的には話を進めすぎだと思うが、とかく、全体的に誇大表現のような気のするところが多い。と言っても、著者の発案による統計的因果推論が重要であることは間違いない。時間ができたらなるべく早いうちに研究しようと思う。まあ、我慢して読んだ甲斐はあった。

I find this book too wordy. Considering the importance of the casal inference, it's a bit pity. Or maybe it's a tradition of the dicipline.

Basic Books (2018/5/15)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0465097609

2019年10月15日火曜日

A. J. Gillam "Simple Checkmates" [簡単なチェックメイト]

簡単な1mover(1手詰め)と2mover(3手詰め)が400問以上載っている。一ページに二問、答はページ下。いわゆるproblemではなく、一応実戦形で、答も一通りとは限らない。あと、これはproblemと同じく、ムダな合い駒も一手に数えられるし、2moverでは一手目はチェックである必要がない。パズル好きというよりは、チェスを強くなりたい人のために書かれているが、別に誰が読んでも退屈しない。チェスで言えば、一通りルールを把握した人が次に取り組むくらいの本だ。チェスを学ぶには、openingとかmiddle gameより第一にcheckmateのパターンを学ぶべきで、実際、二冊目として最善かもしれない。多分英語を読める必要すらない。

というわけで、わたしには少し易し過ぎ、チェックメイトだけなら10秒以内に答えられる問題がほとんどだが、とはいえ400問以上あるし、何より答が複数あるから、台風の間、そこそこヒマつぶしになった。

It was a great book for the time of the evacuation due to the typhoon "Haggis".

Ballantine Books (1996/4/30)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0345403070

2019年10月8日火曜日

"Sports Illustrated Swimsuit 2020 Calendar" [スポーツイラストレイテッド水着2020年カレンダー]

水着女性卓上日めくりカレンダー。今年一年使って、当初は失敗したかなと思ったが、結局気に入って来年も続行する。どう説明していいのか分からないが、エロくはないが美しい。机の上が常夏化して気分が良い。あと、日めくりなのに毎日当月のカレンダーが小さくついているのも良い。このシステムは他の日めくりでも採用するべきだと思う。ただ、職場で使えないのが残念だ。

A collection of nice swimsuits for your desktop.

Trends Intl Corp (2018/9/15)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1438868448

2019年9月27日金曜日

Liz Climo "The Little World of Liz Climo 2020 Day-to-Day Calendar" [リスクリモの小さな世界2020年日めくりカレンダー]

迷ったが、来年の職場用カレンダーはLiz Climoで続行だ。75 new cartoonsとあるから、大半は見たことのあるものにはなるとは思うが、Peanutsでも同じことではあるし…。Dilbertは、たまにWebで見ているが、基本的に見切りをつけた。xkcdが出してくれたら買うんだが。本当はこっちを自宅用にしてSports Illustrated Swimsuitsのほうを職場に置きたいのだが、人目があるんでね…。

I Will continue life with Liz Climo's calendar.

Andrews McMeel Publishing (2019/6/4)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1449498177