2018年6月28日木曜日

Andrew F. Cooper "The Brics: A Very Short Introduction" [BRICS:非常に短い入門]

目次:1.BRICSを構想すること 2.議論の余地のある発明 3.歴史的な出発 4.一緒につるんでいるいること 5.新しい開発銀行の設立 6.社会ではなく国家の認知としてのBRICS 7.BRICSの留まる力

BRICSという概念はゴールドマン・サックスの発明らしいが、どうも今一つ盛り上がらない…というのも、この本でも説明されている通り、G8みたくlike-mindednessがあるわけでもく、互いに対立している部分もあり、本人たちが公式機関化を避けて目立たず行動する傾向があったりで、結局、投資信託の名称くらいでしか聞かないからである…。ただ、本書によると、それでも一応多少は集団として影響力を行使することがなくもないというのもあるらしい。国内においては大体が市民活動に対して弾圧的で、中国に至っては未だに一党独裁であり、G8の住人からすると懐疑的になるのはやむをえない。本書は各国の国内事情というより、国際舞台でのBRICSの振る舞いに注目している。G8みたいな共同謀議を行うような気もしないが、少なくとも今のところは一定の影響力はあるようだ。

A good introduction to the shadowy club.

Oxford Univ Pr (2016/7/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198723394

2018年6月25日月曜日

Renee White, Sylvie Bouvier "Barron's SAT Subject Test French" [Barron SAT主題試験フランス語]

以前も別のSATフランス語の問題集を読んだが、こっちのほうが質量共に比較にならないほど優れており、こちらを読めば前のは要らない。こちらはリスニングも大量にこなせる。

それはそれとして、特にリスニングについては解説を読んでも納得しかねる問題が多々あり、これはこの本の問題ではなく、SAT自体がそういうものなのだろう。日本の大学入試で同じようなことがあれば、非難が殺到するのは間違いない。レベルとしては、やはり単語が難しいことを別とすれば、仏検二級くらいのものだろう。あくまで試験問題集なので、別にこれでフランス語の勉強をするような趣旨の本でもないと思うが、こんなのでもしないとわたしの場合はフランス語力が上がらない。

Le meilleur livre pour SAT French.

Barrons Test Prep; 4版 (2017/9/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1438077673

2018年6月20日水曜日

Stephen J. Davis "Monasticism: A Very Short Introduction" [修道院生活:非常に短い入門]

目次:1.定義 2.差異 3.規則と社会組織とジェンダー 4.聖人と精神性 5.現実と想像の空間 6.現代世界での世界的な現象

一応、主題別の目次になっていて、比較宗教学・考古学・歴史学というようなことで、宗教としてはキリスト教と仏教がメイン。実際には、歴史的・地理的な修道院組織の博物誌くらいの感じ。色々あっても全制施設の運営はどこでも同じなんだろう。何なら軍隊とか病院とか刑務所でも大して変わらない気がする。わたしとしては、時々僧堂に入りたいと思うこともあったが、実際に入っていた人の話が口を揃えて言うのは、イジメもあれば仕事もあり、世間と何も変わらないらしい。そんなことなら同志の集うシェアハウスみたいなほうが良い気もするが、それはそれで運営が難しいんだろう。というような内部の社会学的な事態はこの本では論じられず、制度的な建前のほうの研究がメイン。

About one kind of total institutions.

Oxford Univ Pr (2018/4/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198717645

2018年6月19日火曜日

Yujin Nagasawa "Miracles: A Very Short Introduction" [奇跡:非常に短い入門]

目次:1.奇跡とは何か? 2.宗教的文書の中でどのような奇跡が報告されているか? 3.なぜこれほど多くの人が奇跡を信じるのか? 4.奇跡を信じることは合理的か? 5.超自然的でない奇跡はあり得るか?

基本的には宗教上、特にキリスト教の文脈での奇跡だか奇蹟だかを扱っている。奇跡の定義とか博物誌的記述を別とすれば、人間の心理バイアスとかヒュームの懐疑論など。奇跡の真偽には立ち入っていないが、著者が否定派でないことは明白に思われる。奇跡を認知しやすい人間の性向があるのだとすれば、奇跡が起こったと主張することで利益を得る性向とかもあるだろうし、こういうことなら宗教の起源とか奇跡の利用法などにも踏み込んでほしいところだが、多分、この著者には無理だろう。「ムー」とかを読むのとあまり気分は変わらない。

Many interesting cases of alleged miracles.

Oxford Univ Pr (2018/1/23)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198747215

2018年6月14日木曜日

Timothy H. Lim "The Dead Sea Scrolls: A Very Short Introduction" [死海文書:非常に短い入門]

目次:1.文化的アイコンとしての死海文書 2.考古学的現場と洞窟 3.文書と断片について 4.ヘブライ語聖書への新しい光 5.正典と真正な書と文書 6.誰が文書を持っていたか? 7.文書収集物の文献的構成 8.第二神殿時代のユダヤの分派 9.死海文書のコミュニティ 10.分派コミュニティの宗教的信念 11.文書と初期キリスト教 12.最も重大な手稿の発見

死海文書というタイトルでは素人向けに胡散臭い本も多いので、これを読むのが最も無難だ。学者からすると相手にするのもバカバカしそうな話も、本書では丁寧に反駁している。かなり読みやすく、ユダヤ教や中東の歴史に詳しくなくても問題ないだろう。クムランの洞窟から見つかった巻物の中には、後世になって旧約聖書に収録される前の状態の文書も含まれており、場合によってはそのせいで伝統的な旧約聖書が訂正されたりしている。文書の内容自体だけでなく、クムランの考古学的研究や一般的なユダヤの歴史も詳しく記述されていて、文献学と歴史学と考古学の融合はとても面白い。別にわたしはユダヤ教にもキリスト教にも思い入れがないが、だからこそ、純粋に娯楽として楽しめるのかもしれない。

念のため、基本的に死海文書はキリスト教(とかいうユダヤ教の分派)より前に、エッセネ派の所有していた文書ということになっており、キリスト教の信仰とは関係がない。ただし、初期キリスト教徒が読んでいた旧約聖書が、今の我々の読んでいる旧約聖書と少し違うとしたら、その限りでキリスト教徒にとっても問題になる。ずっと後のグノーシスの文書みたいな奔放な話もないし、使徒が人類と対立する的な話もなく、ただある時期のユダヤ教の一つの分派の生活や信仰などが解明されるだけだが、一般教養として知っておいていい。なぜ翻訳されないのか不思議だ。

The best introduction to the Dead Sea scrolls.

Oxford Univ Pr; 2版 (2017/5/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198779520

2018年6月7日木曜日

Jean-Claude "Noir" [黒]

例によって舞台はアメリカということになっている。正直言って、これは何度読んでも意味が分からない。まず画面が黒くて人物の判別に苦労する。あと時系列も狂っているのだろうか。また気が向いたらメモを取りながら読んでみるが、それとも難しく考えすぎているのか。ただ、おそらくこのマンガのポイントはストーリーではなく、例によってフランス人の考える50年代アメリカの雰囲気なので、ストーリーを解明できたとしても、あまり感心しないだろう。

Je ne comprend pas ce qui se passe.

Bdartiste (10 avril 2012)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2919243075

2018年6月3日日曜日

Craig Jeffrey "Modern India: A Very Short Introduction" [現代インド:非常に短い入門]

目次:1.希望 2.植民地インド:貧困化 3.植民地インド:宗教とカースト分割 4.インドを動作させる?1947-1989 5.インド再考 6.社会革命 7.若者

インド人がこれを読んでどう思うのかどうか分からないが、差し当たり、ものすごくバランスの取れたインドの記述に思える。歴史・社会・経済・文化・政治について満遍なく記述されていて、流行りのボリウッドや一昔前のサイババも省略されていない。もし何らかの理由で就職試験などでインドのことを問われるのなら、まず、この本を読むべきなのだろう。この一冊でだいたいわかったような気にもなるし、読み物として完全に成立しているので退屈はしない。貧富の格差も酷く、昔からある「貧しいインド」のイメージも間違っていないようだし、植民地としての歴史も人口ピラミッドの構造も日本とかけ離れていてなかなか面白い。わたしとしては、インドは、昔新聞を読んでいたくらいの知識で行ったこともないし、特にインド人の知り合いもいないが、問題山積みながら、未来のある国という印象だ。

It seems to me a very well-rounded and very balanced book on India.

Oxford Univ Pr (2018/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198769347