2012年2月29日水曜日

Robert M. Bramson Ph.D. "Coping with Difficult People"

「困った人たち」との付き合い方というわけで、十年以上前にブームになったジャンルの元祖。こういうのは大抵元祖は越えられないんだけど、個人的には後追い本も読みたくなった・・・。

"difficult people"が分類されていて、それぞれの対処法が書かれているんだけど、ここで言う"difficult people"というのは、主として、対人態度がなっていない人のことを言う。つまり、傲慢だったり、陰口ばかり言っていたり、怒鳴ってばかりとか。これはなかなかの限定だ。

もっと根本的に困った人、たとえば完全主義者だとかmicro managerとか利己主義者だとかいうような問題は対象ではない。また、もっと具体的に困った人、たとえば、遅刻ばかりするとかストーカーだとか自分の非を絶対に認めないとかも対象ではない。

対象を限定しても、なお対処法はバラバラで、共通の要素は少ない。役に立つというより、痛快がって読まれているような疑惑もある。まあ、なかなか話しにくい個人的な問題を客観的に描いてくれるのは、それだけで気が楽になるということもあるのだろう。

この本のブームの後、バラバラの対処法からわずかな共通項を取り出したのが"assertiveness"ということになるんだろうか。この本がアメリカンな感じがするというのは、全ての対処法に共通して「はっきり言う」というのがあるからで、これが日本人の発想ではない。「ご不満な点もあるのかも知れませんが、わたしはこの提案が現在最善であると考えています。もう一度着席して最後まで話を聞いてください」「今おっしゃったことは当てこすりに聞こえましたが違いましたか?」もちろん常に直接対峙が良いとは全く言っていないが、assertiveとはこういうことだ。

といっても、assertiveness本は、問題を一個人に限定してしまう傾向があり、その時点で不自由だ。重要なのはもっと実用的な会話マニュアルだったり、フレーズ集だったりのはずで、この本も、そういうフレーズを拾えるのが主たる利点であった。フレーズというか「言い方を知っているかどうか」というのは、結構致命的なことで、知らなければグダグダになってしまう所でも、知っていれば冷静に、アメドラのように話せる。というか、アメドラの吹き替えのように話すことを心がければ、自動的にassertivenssが付属してくるような気がしてきた。何にしろ、色々考えさせてくれている時点で、これは良い本であった。

Classical book of this genre. In this book, "difficult people" means people who have bad habitual general attitude toward others. Apparent menace toward a particular person is out of its range. Or more concrete problems, such as "being always late", are also out of its range. This seems a great limitation, but still there are a range of difficult people and coping procedures... I guess the greatest common denominator would be "assertiveness". But Books on assertiveness tend to focus on only one person, you. That is not how assertiveness grows. What we need is just "phrases to use". And in that regard, this book is pretty good, though I want to read more.


2012年2月19日日曜日

Charles M. Schultz "Peanuts: A Golden Celebration: The Art and the Story of the World's Best-Loved Comic Strip"

これは相当昔に読んだ本だけど、今日和訳を発見したので、敢えて紹介する。Peanutsについて書いたことがなかったし。確か、これが出た後すぐに作者休業で亡くなったんだよな・・・。

PeanutsはDilbertと同様に、割と翻訳者に恵まれた感があるが、やはりマニアとしては原書にこだわりたいところだ。今から思えば、わたしが初めて洋書を買ったのが丸善で、Peanutsであった。以来、原書またはWebでしか読んでいない。

http://www.peanuts.com/

色んなeditionがあるのはアメコミの通例で、近頃は日本のマンガもそんなことになっているが、Peanutsの場合、やたら自己啓発染みた解説書が多いのが特徴だ。もちろん、全部無視する。作者はプロテスタントで、教会で活動していたこともあるようだが、キリスト教的な教えをコミックに注入しようとしたことはないと明言している。正直なところ、わたしの見解では、キリスト教的な解釈など、Peanutsに対する冒涜でしかない。

んで、"Charles M. Schulz: Conversations (Conversations with Comic Artists)"を読むとなると、これは相当なマニアと言えるが、マニアなら必読書だ。結局のところ、Charlie Brownみたいな人だったらしい。なんでこんな人が、わりと悲惨な離婚になったのか良く分からないが、古き良きアメリカの温厚なおじさんだったんだなあと。






2012年2月18日土曜日

Princeton Review "Word Smart"(4e)

基本的にはSAT用の単語帳とされているらしい。つまりアメリカの大学入試レベルということで、アメリカでは良くある類の本。単語の難易度ということでは、英検1級も少し越えているんじゃなかろうか。わたしですら、知らない単語が一割くらいあった気がする。つまり、ビジネスで英語を使うとかNY Timesを読むとかいう程度のことなら、この本は少し難し過ぎる。実用的な語彙ももちろん多いが、SATを受けた後、一生出会わない単語もありそうだ。

ちなみに、わたしは単語の丸暗記は苦手で、この本は例文が充実しているのが売りだが、それでもやはり厳しかった。ただこれは人によるんで、何とも言えない。わたしとしては語源系のほうが有り難いが、この本では、語源はほとんど問題にならず、単にアルファベット順に並んでいる。

A word book for SAT. I do not particularly like this book, since I prefer etymological explications to a bunch of sample sentences.

2012年2月14日火曜日

Donald Gillies "Philosophical Theories of Probability" (Philosophical Issues in Science)

これはわりと何度も読み返している本だ。確率理論とか統計理論は、第一に直感に反する事例が多いのが面白いのと、第二に神学的対立が多いのが面白い。この本が面白いのは後者のせいで、「確率とは何か」について様々な説を歴史的経緯も含めて紹介している。いろいろ文句もあるけど、考えるのは面白い。

・論理説・・・ケインズに代表される。無差別原理「同様に確からしい」事象に分割して確率を計算していく。分割の仕方が複数ある場合に簡単に矛盾に陥る。
・主観説・・・ラムジーなどに代表される。基本的にはギャンブラーの心の中に確率がある。わりと整然たる公理系を導く。
・頻度説・・・ミーゼスなどに代表される。反復した時の経験から確率を定義する。定義が狭すぎるのが難点。
・傾向説・・・ポパーに代表される。確率とは状況に内在する傾向性である。量子力学などを想定。

Great overview. I read this book once in a while. Philosophy of probabilities are most interesting because there are lots of counter-intuitive examples and (as of this book's case) there are lots of theoretical controversies despite the fact that it is an area of mathematics.

2012年2月8日水曜日

Ray Young, Sally Brock "Bridge for People Who Don't Know One Card from Another"

この本の良し悪しは分からない。わたしはブリッジの他の本を読んだことがないし、最も良心的そうな薄い本を選んだだけであった。本書はトランプには四つのスーツがあります、くらいから説明している。日本語では適当な本が入手しにくい。とりあえずプレイを始めるには十分と言えよう・・・。戦術にのめりこむとキリがないのは、麻雀と同じだ。

実はブリッジは、プレイのルール自体は全く難しくない。本書では、わりと早目に"Mini-Bridge"を紹介していて、これは切札の決め方や点数等を除けば、ブリッジと何も変わらない。習得するのに十分程度で済む。本によっては"Whist"を紹介していることもあるようだ。どっちにしろ、「ナポレオン」なんかより易しい。

オークションのルールも全く難しくない。点数は少し複雑だが、点数表があれば問題ない。大抵のデッキには、カードの一枚としてブリッジの得点表が入っている。何も知らない四人が集まって、ルールだけ覚えてプレイしても、ゲームは成立するし、そこそこ楽しいんじゃないかと思う。

難しくなるのは、敵味方の持札を推測しようとするからなのだ。オークションの経緯やカードの出し方によって持札が推測できるのは当然だが、味方に自分の持札を推測させるという面もあり、慣習に則ってオークションやプレイをしないと、味方まで混乱させる。これが面倒臭い。こういう慣習には一々合理的な理由があるが、初心者はひとまず丸覚えするしかない。

味方同士なんだから、手札を見せ合ってゆっくり検討すればいいんじゃないかと思うが、そういうことになっていないらしい。たとえば、プレイ中に味方に「スペードのエース持ってる?」とか訊いても良さそうだが、多分反則なんだろう。しかし、麻雀と同じで、いくらでも脱法手段がありそうなものだ。

で、慣習を丸覚えしたとして、次に、カードゲーム自体の難しさがある。ブリッジに限ったことではないが、カードゲームでは、それまでに誰がどのカードを出したかを覚えているのが決定的に重要だ。ブリッジでは、オークションの経緯も覚えている必要がある。別に覚えていなくてもプレイはできるが、強くなりたければ、これは最低条件と言える。麻雀のように捨牌を表示しておく習慣がないらしい。この条件をクリアした上で、初めて戦略がどうのこうのと言えるようになる。

そして、最後の難関が、「以上の条件をクリアしたヒマな四人を集める」ということになる。生きている間に生身の人間とブリッジをプレイするのは、ほぼ絶望的かもしれない。麻雀と同じで賭博が付き物のようだが、味方に殺意を抱く可能性がある分、性質が悪い。

An introduction to contract bridge. I do not know if this book is a great book because I have not read other bridge books. But I guess bridge is not a difficult game if you only want to understand the basic rules and some basic strategies. And this book suffice for a beginner.

2012年2月3日金曜日

Stephen Smith "Environmental Economics: A Very Short Introduction"

いわゆる環境経済学の入門書。現実よりは理論の解説。わたしには初歩的過ぎるというのもあるけど、わたしがバカにしている「前提条件の多過ぎる」経済理論だ。経済学部の初学者が英語の勉強も兼ねて読む分にはいいんではないかと思うが、実務的にはほとんど意味がない。別に環境経済学を学んだことがなくても、多少経済学をやった人なら、普通に推測がつく程度の話だ。経済学を全く知らない人なら、もしかして思想的に衝撃を受けるのかも知れない・・・。まあ直ぐに慣れてしまう、というか洗脳されてしまうわけだが。じゃあ最初から知らないほうが良いのかと言うと、もしかするとそうなのかも知れない。

Perhaps good for a novice student of economics. Just a bunch of theories which are too simple and demand too many premises. Not a practical book.

Nassim Nicholas Taleb "The Black Swan: The Impact of the Highly Improbable"

今頃こんなのを読んでいるのは、今読んでいる本がこの本に色々言及していて、ちと興味が湧いたから。なお、今読んでいるほうの著者についても、この本は色々言及していて、高く評価している。ベストセラーになった時に読まなかったのは、あの頃は金融市場の失敗を論う本が多くてウザかったのと、Popular Mathというか、特に統計学関係についてはうんざりしているから。だいたいが、「リスクは飼い慣らせる」というバカみたいな主張か、「統計学者はウソつきである」みたいな少しは面白い逆の主張であり、この本は後者だが、純粋に統計論としては、特に目新しい内容はなかった。ただ、ポパーとマンデルブロをそんなに高く評価するのは意外だ。そんなに言うのなら調べようと思う。

しかし、この本がウけているのは、そんな技術的なところじゃなくて、自己啓発書みたいな読まれ方をしているんだろうと思う。金融工学が詐欺なことは今では誰でも知っているが、徹底的にコキ下ろされる。分かりやすさのために話は戯画的に単純化されており、スーツを着た高給取りの正規分布原理主義者が徹底的にバカにされる。読者は大いに溜飲を下げ、気分も明るくなるが、生活は何も変わらないというような・・・。

とにかくベストセラーだから読んで損ということはない。"black swan"は一般名詞になっているし。だいたい、経済学を学び始めたころに誰でも素朴に思うのは「前提条件が多過ぎる」ということだが、どっぷり浸かっていくうちに、それを忘れてしまうようだ。こういう本はたまには売れないといけない。そして、また、そのうち忘れられるんだろうとは思う。それとも、著者が考えるように、この世はどんどんblack swanが増えていて、忘れたくても忘れられなくなるかな。

A multi million seller. There are two types of popular math book. On the one hand there are so many dull books that stipulate that we can manage risk. On the other hand there are a bit more interesting books that stipulate that statisticians are liars. This book falls in the latter category but I doubt it is also read as a sort of self-help book. Anyway perhaps partly owing to this book now we all know that computational finance is a big fraud. We mock well-dressed Wall-Street experts, feel good, and do not change our way of life.