たとえば、Shell一社でサウジアラビア一国の二酸化炭素排出量を越えているというような時に、従来型の国際機関-国-企業・私人というようなガバナンスには限界があるというような問題意識から書かれている。企業は規制の厳しい国からは逃げることができるし、途上国の住民を立ち退かせて森にしてカーボン・シンクなどと言い張ることもできる。
このような状況では、国以外に、コミュニティベースの運動や企業連合のようなものが重要になってくるというのが一貫した主張だ。HIVと同じで、似たような団体や標準が増えすぎている気もするし、果たしてどれだけ有効なのかも良く分からない。一方、ネオリベラルな思考に基づいた排出権取引のようなガバナンスもあるとかで、有効無効は別として、色々考えさせられる。
そして、もちろん、ガバナンス推進派と懐疑派との間の知識社会学的戦闘も描かれているが、筆者たちは基本的には懐疑派を科学的に問題にならないと考えているようだ。なんにしろ、この本は、温暖化問題に対する対策を記述するというよりは、新しいタイプのグローバル・ガバナンスの勃興に興味がある。その点に関しては、わたしももっと研究したくなった。
わたしは実は個人的には温暖化問題を真剣に考えていないのだが、二酸化炭素原因説が陰謀だという話より、二酸化炭素が原因じゃないというの説が陰謀だと言うほうが説得力がある。どっちにしろ多少の陰謀はあるんだろうけど、その辺りも少し記述がある。
純粋に温暖化問題について概要を知りたいという場合は、たとえば、Oxford Very Short Introduction Seriesの"Global Warming"をお勧めしたいけど、別に日本語でも色々あるだろう。
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