このタイトルを「犯罪心理学」と訳すと意味が狭過ぎる。犯罪の原因に関する心理学の他、法廷心理学、陪審員選び、精神鑑定、ウソ発見、証人の記憶の信憑性、刑務所や矯正施設での心理学、性犯罪者や薬物中毒者の処遇、プロファイリング等、要するに犯罪・刑事・司法のあらゆる分野における心理学の応用を概説する。
とにかく読みやすい。だいたいわたしは心理学という学問をあんまり信用していないが、犯罪心理学の泰斗だけあって、科学者としての良心が一々感じられる。科学的なカテゴリと、司法行政の現場でのカテゴリの間の矛盾にも敏感だ。「何にでも○○症候群とか付けるな」とか、「精神鑑定なんて当てにならない」と思っている人は読む価値があるだろう。読んでも疑念は晴れないが、しかし、こういうのが全然無いとマズいのも厳然たる事実というようなことは分かる。
特に英語圏では"プロファイリング"という言葉が濫用されて、まあそれで優秀な人間がForensic Psychologyに集まって来るのはいいけど、科学的に確実な範疇を越えて濫用されても困るというような、とても常識のある著者なので、安心して読めるだろう。
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