目次:1.微生物と共に生きること 2.どうやって微生物叢を確保して維持するか 3.微生物叢と栄養と代謝の健康 4.微生物叢と脳と行動 5.微生物叢と感染症 6.農業食糧生産における植物微生物叢 7.微生物療法と健康な微生物叢
"microbiome"が何なのかよく知らないまま読み始めてしまったが、要するに動植物に付随する微生物集団ということらしい。人間の場合は表皮・消化器・膣にいるバクテリアや細菌類ということになる。この本で主に扱われているのは腸内微生物叢と、植物の根の微生物叢だ。前者は心身の健康に直接影響するし、後者は農業への応用で大きな意味を持つ。
全体的な印象として、どうもまだ開拓され始めたばかりの分野らしく、明瞭な因果関係みたいなのはあまり出てこない。昆虫やねずみレベルの実験では、微生物叢が免疫系や性格に大きく影響しているのは判明しており、人間でもそうらしいことは推察されているが、それほどはっきりしたことは言えないようだ。たとえばASDとか肥満の人の腸内細菌叢は普通人と違うと分かっていても、それが原因なのか結果なのかもよくわからない。似たような話でアトピーや花粉症が激増しているのは現代人の腸内細菌叢が変化したからというのも、「おそらく」くらいの話でしかない。腸内には複雑に絡み合った微生物の生態系があり、地球の生態系と同じで、人の介入がどんな経路で何に影響するか分かったものではない。農業における土壌の微生物叢が農作物に与える影響も、同じようにそう簡単ではないようだ。
ただ、そういう応用分野の前に、微生物叢とホストの関係などの描写は色々世界観が変わってくる。母乳にはヒトには分解できないが腸内細菌叢を栽培するには有益な希少糖が色々含まれており、赤ん坊の免疫系が健全に発達するのはそういったものによる微生物叢との相互作用があるからである云々。なんかVSIの別の本で読んだ気がするが、人間の腸壁は常に腸内細菌と接しており、そんなもので一々炎症を起こしていたら身が持たないし、そこでのやりとりが人体の免疫系の健康維持のために必須みたいなこともある。ピロリ菌は後に胃ガンの原因になるが、子供のうちはピロリ菌がいることによって消化管が健全に発達するなど。
ヨーグルトなどのプロビオ製品についても言及があるが、やはりあまり根拠はないようだ。結局、複雑な生態系にたとえばヤクルト菌を投入したところで微生物叢がそんなに大きく変わる気もしない。胆汁酸というものは腸内細菌で二次胆汁酸に変化し、これがさらに腸から吸収されて人体に影響を及ぼすのが人体の通常営業、という話もあるが、気になって調べたら、ヤクルトのサイトでは二次胆汁酸は発がん性がありヤクルトの株は二次胆汁酸を作らないとか威張っている。
個人的には口腔内の微生物叢とか、他にも色々知りたいことはあるが、そこまで研究が進んでいないらしい。対象が複雑過ぎて、そう簡単に研究が進む気がしないが、監視しておきたい分野だ。
It's a very new field. I want to learn moore about microbiomes of human body, but I guess the research has just started off. It seemes even scientists do not know much.
Oxford Univ Pr (2023/2/24)
言語 :英語
ISBN-13 :978-0198870852
0 件のコメント:
コメントを投稿