モンゴル帝国興亡史。時代的にはチンギス=ハンの登場から、元・チャガタイ=ハン国・イル=ハン国・キプチャク=ハン国の崩壊まで。面倒くさい学術的な話は抜きにして、シンプルかつ痛快にモンゴル帝国の興亡を描く。地域的には東は朝鮮から西はハンガリー・ポーランドまで。中国・ロシア・ウクライナ・アゼルバイジャン・イラン・トルコなどは占領されている。エジプト・日本・ベトナム・ビルマ・ジャワなどにはモンゴルは撃退された。
タイトルが分かりにくいが、現代モンゴルとかは完全に対象外で、モンゴル帝国最盛期の最も面白いところのみをシンプルに叙述している本で、一気に読んでしまった。Oxford Very Short Introductionsの歴史カテゴリの中では間違いなく最も面白かった。ちなみに二位は"Russian History"だが、もちろん内容はかぶる部分もある。ロシアがタタール人(Golden Horde)から受けた影響については若干解釈が違うが、とにかく痛快で、予備知識はほとんどいらない。もっとも地域が広大なので世界地図はあったほうが良い。わたしも世界史に特に詳しいわけでなく、モンゴルについては日本でサムライたちに撃退されたとか、中央アジアの都市を次々蹂躙してたくらいの漠然とした知識しかなかったが、実際にはサマルカンドどころかバクダッド・シリアまで侵攻してエジプトを窺っていたくらいで要するに草原がある限りは進撃していたらしい。他方、密林や島嶼での戦闘には向いていなかったらしく、日本やベトナムには撃退されている。この本では軍事面だけでなく、特に文化面の交流もシルクロードを中心に深く描かれていて、そちらも非常に面白い。あいにくと日本はサムライたちがモンゴルを撃退してしまったが、やっぱりたった100万人の貧しいモンゴル人たちが史上最大の帝国を築いたというのはスゴいことだ。どんどんこっち方面の本を読んでいきたい。
As few as a million of poor Mongols built the world's largest empire throughout the Eurasian continent. Remarkable. Most brutal, yet military forces of Japan, Egypt &c succeeded to defeat the Mongols. There is always something to learn from the history. Rossabi depicts not only the Mongols military history, but also explains cultural heritage of the Mongols, which is also really fascinating. One of the best books in VSI.
Oxford Univ Pr (2012/5/4)
ISBN-13: 978-0199840892