CDショップの「ワールドミュージック」の棚に並んでいるような音楽に関する概説というか、音楽人類学的な雑駁な議論。要は民族音楽の話で、雑駁だが著者としては一貫して民族音楽の他者性の利用のされ方に関心があるようだ。世界音楽と言っても所詮西洋の観点からの整理に過ぎず文化帝国主義云々とか、国家主義者によって民族音楽が保護活用されて云々とか、逆に反体制派に「土着」とかいう名目で民族音楽が利用されて云々とか、まあそんなこんなで。特段画期的な考察があるわけではなく、現在の音楽流通の様子を眺めている。
個人的には、フランス語の勉強をしていると、やたらアフリカの音楽に学びとかいうミュージシャンのインタビューを聞くことが多く、もちろん旧植民地という事情があるのだが、正直なところ、ほぼ全員が同じようなことしか言っていない。それも今に始まったことではないのだろう。民族の独自性を称揚するはずの国歌が、みんな同じに聴こえるという絶望的な現実はよく考える価値がある気がする。もっと小さなレベルに行くと、どこの学校の校歌も同じに聴こえるのと同じ現象なのだろうか。このあたり、論理のメスの入りにくいところである。
It presents a wide range of phenomena of so-called "world music". Miscellaneous themes, but it seems that the author constantly is intrigued by various ways by which "ethnicity" is exploited for political causes.
Oxford Univ Pr (T) (2002/8/29)
ISBN-13: 978-0192854292