2012年12月31日月曜日

Paul Thurrott, Rafael Rivera "Windows 8 Secrets"

わりと早い時期に出たWindows 8の解説書。ユーザ向けであって、開発者向けではない。適当に分厚いし、今のところ対抗できる本はないようだ。まあ経験の長いSEなら、いじっていれば自然と分かることばかりだが、確定的な答が必要なら、本書は必須である。そのうち、もっとがっちりした本が出てくるかもしれないし、Win8自体が大幅に改訂される可能性もあると思う・・・。

The best book on Win8 for the time being.

Elizabeth Claire, Richard Greenwood "Three Little Words: A, An, and the (A Foreign Student's Guide to English Articles)"

英語の冠詞の解説&練習問題だが、まあ、この類の本としては普通としか・・・。理屈で習得できる範囲は網羅しているだろう。理屈に興味があるのなら、わたしの推薦は「謎解きの英文法」だが、日本語に限っても類書は山のようにある。

A standard textbook on the articles of English.

Princeton Review "More Word Smart"

やはり少し難しすぎる気はするが、前巻よりも難しいわけではない。というか、こっちの巻のほうが頻度的には高い気がする。ちなみにわたしも知らない単語はやはり一割程度ある。つまり、SATでしか出会わない単語なのだろう。

Good for those who are good at rote learning.

2012年12月27日木曜日

Geoff Johns, Jim Lee "Justice League Vol. 1: Origin (The New 52)"

アメコミはほとんど読んだことがないんだけど、間がないというか、全頁全力みたいなことで、読んでいて結構疲れる。しかし、昔の紙芝居みたいなアメコミからは随分絵も整理されて楽になったかもしれない。話自体は、まあよくある話としか・・・。わたしでも理解できるくらいだから、誰でも理解できるだろう。しかし、アメリカ人は常にしゃべりながらでしか戦えないのかね。

Great art and easy to understand. As far as I understand, some sort of unknown creatures are attacking the human race.

2012年12月25日火曜日

Joseph S. Nye Jr. "The Future of Power"

知らない人のために説明しておくと、ナイ氏はアメリカを代表する政治学者であり、かつ知日派として知られ、駐日大使の候補に名が挙がったこともある。というわけで、こういう本は出て直ぐ読むべきだが、遅くなってしまった。翻訳も当然出ている。

これは既に国際政治学の基本書と言える。アフガンやイラクでアメリカが露骨な軍事力に訴える局面が続いたが、力というのはそんな単純なものではなくて、実際には文化や価値観、public diplomacyを通したソフトパワーと、露骨な軍事力や経済力のようなハードパワーを組み合わせた、スマートパワーが大事だと言っている。そういう見地から将来を考えるとアメリカは当分中国なんかに負けませんよというような話だが、理屈自体はどこの国でも同じことなので、この理屈を元に日本の将来を考えることも可能だ。というか、それ以前に、public diplomacyの概念が日本では遅すぎる。台湾を始め東南アジアでは既に中国の強力な世論工作を受けており、本書のような理論は既に常識化していると言える。従って類書も多いが、主唱者の本はやはり読むべきだし、今後当分の間は、基本書の地位を維持し続けるだろう。

A famous, basic and indispensable must-read on international politics.

2012年12月23日日曜日

Alexander C. Diener, Joshua Hagen "Borders: A Very Short Introduction"

ISBN-13: 978-0199731503
Oxford Univ Pr(2012/9/3)

VSIにありがちなことで、タイトルが簡潔過ぎて意味が分からない。特に前半に境界にも色々な種類があるとか延々と書いているが、国境のことと考えて良い。

要するに、説明の過程で「国境」という言葉が出てくるような社会現象を延々と並べたてているようなことで、わたしとしては、特に刺激的な洞察はなかった。人文地理学というか、国境の文化誌というか。たとえば、国境管理の実際とか各地の国境線の引かれた経緯とかが詳しく書いてあったり、あるいは「現存在にとって境界線とは何なのか」というような哲学的な考察がされていれば面白いと思うが、そんなことにはなっておらず、中途半端な分かり切った一般論ばかりで、発見がない。と言っても、これでも斬新なことが書いてあるように感じる人もいるようなので、もちろん全否定はできないが、わたしとしてはVSIの中でもなかなかのハズレだった。何かの事情で、相当「国境」という概念に思い入れがある人には、もしかすると面白いのかもしれないが・・・。

Frankly speaking, this book bored me. A natural history of boarders of nations. No inspiring analysis, no curious facts. Maybe for high school students?

2012年12月14日金曜日

Martyn Lyons "Books: A Living History"

随分前からダラダラ読んでいたら、最近になって日本語訳が出た模様。「本の歴史」みたいな本は色々あるが、ひとまずこれが標準的と考える。本好きはこれを読んでおいて損はなかろう。個人的にはエルゼビア社の経緯が印象に残っているが、全体的に静かで平和な歴史なんで、かなり本が好きでないと退屈するかも知れない。図鑑ということになっているようだが、確かに写真が多いものの普通に通読してもなかなかのボリュームである。

それはそれとして、ボリュームという単語はラテン語"volvo"「回転する・巻く」の過去分詞"volumen"「巻き物」に由来し、英語の"volume"を日本語の「巻」に訳すのは偶然なのか必然なのか誰かの意図があったのか。自動車会社"volvo"はもともと軸受の会社である。そして巻線可変抵抗器あるいは音量も"volume"であるのも偶然ではなく誰か博識な人の意図的なものだったのかもしれない。そんなことはこの本には書いていないが、読んでいて色々余計な調べ物をしてしまう本ではあった。

A standard book of history of books including lots of photos for all book-lovers.

2012年12月12日水曜日

Jeff Kinney "Diary of a Wimpy Kid # 7: The Third Wheel"

ISBN-13: 978-1419705847
Harry N. Abrams (2012/11/13)

Movie DiaryとDo-It-Yourself Bookを別にすればシリーズ七作目。出版されたばかりだが、既に日本語訳が出ているようだ。例によって日本語訳は見てもいないが、こういうのは翻訳すると面白さが半減以上するのが分かっているので、無理にでも原書で読むことをお勧めする。そして、日本語タイトル「グレッグのダメ日記」は、今からでもいいから、「グレッグのイケてない日記」にしたほうが良い。つまり、アメトーークのあのノリなのである。

実際、本質的にはギャグなのだが、読んでて本当に悲しくなることがある。特に今回については、女子にモテないという話であり、本人はそんな面倒くさいことはあまり気にしない性質なのだが、一応工夫を重ね、そして報われないのであった。イケてないけど、本人は第一に怠惰であり、怠惰であるために様々な創意工夫があり、あまり友達がいなくても彼なりに楽しく生活しているのであった。子供がこのシリーズにハマっているとか自慢しているお母さん方は、一体自分の子供が何を読んでいるのか知っているのであろうか。

原書のサブタイトル"The Third Wheel"は「余計な奴」の意味。これと日本語訳のサブタイトル「どんどん、ひどくなるよ」を比較すれば、中身を読むまでもなくテイストの違いは明らかであろう。

Hilarious, yes, still, I sometimes feel really sad. I am not mature enough to laugh these things away.

2012年12月9日日曜日

Leslie Holmes " Communism: A Very Short Introduction"

ISBN-13: 978-0199551545
Oxford Univ Pr (2009/9/21)

日本語で共産主義というタイトルの本があったとすると、教義の面倒くさい解説を想像するし、英語でcommunismというタイトルの本があったとすると、共産主義政権下で庶民が如何に苦労したかという憂鬱なエピソードを想像する。実際The Soviet Unionはそんな感じだし。しかし、この本はそういう話も少しは含むが、基本的には共産圏の政治経済史だ。ロシア革命~ソ連崩壊、中国の繁栄まで、共産圏をテーマごとに横断的に解説。こんな話に誰もが納得する中立的な記述なんかあるはずがないが、わたしには十分冷静なように思えた。

こういう本を面白がる理由の一つに、そもそもわたしに世界史の知識が欠けているということがあるのかもしれない。何となくソ連と中国があまり仲が良くないのは知っていたが、何となく東欧はソ連が全部一枚岩の圧政を敷いているような気がしていた。実際には、ブロックの中でも色々齟齬があって、全部が全部ソ連の言うことを聞いていたわけでもないようだ。ワルシャワ条約機構がチェコに侵攻した時、ルーマニアは侵攻を拒否した。アルバニアやユーゴは、ソ連の助けなしに共産党が政権をとっているのでソ連の言うことを聞く義理がない。ソ連がアフガニスタンに侵攻したのは、現地の共産主義が酷過ぎるので穏当な共産主義をインストールするためであった。ベトナムがカンボジアに侵攻したのも同じことであった。

そんなことは常識だというような人には、この本は初歩的過ぎるかもしれないが、わたしとしては非常に面白かった。現に日本のごく近くに、未だに共産主義政権が約二か国ほど存在しているのだから、日本人的には勉強しておいて損はないだろう。歴史以外にも共産主義政府の運営方法なども易しく解説されている。それにしても、冷戦期というのは面白い。The Cold Warも面白かったし。

I know that the term "communism" has a very bad connotation in anglophone countries. Calling someone a "communist" may constitute a slander. In Japan, the situation is a bit different. Japanese intelligentsia tend to be left, as in Latin-America and maybe, in France. And now, as Holmes maintains, neo-liberalism has lost its legitimacy, one of Japan's communist neighbor is prospering, and the other neighbor is becoming more and more dangerous, we should know how communist thinking work.

Though there is no way to write on this theme so that everyone finds neutral enough, I found this book is well level-headed. It is not a simple anti-communist propaganda as is often the case with English books on communism, though it does not praise communism, either.

2012年12月6日木曜日

Serge Guinchard, Thierry Debard "Lexique des termes juridiques 2013"

フランスの法律辞書。まだそれほど使っていないが、非常に良い。まず版形がいいし、手触りが良いし、何より印刷が二色刷りで実に見やすい。これは辞書、特に法律辞書では超重要なことだ。かつ、"ACTU"ということで、最新の法律の動向も簡明に解説されているのも強力な利点である。Gérard Cornu "Vocabulaire Juridique (9e édition)"のほうが情報量は多い気もするが、こちらの利点は圧倒的で、先に手が伸びるのはこちらだ。

Très bon, très pratique, très clair. Surtout, très beau donc très facile à lire. C'est le point le plus important pour un dictionnaire, particulièrement si c'est un dictionnaire du droit, n'est pas?

2012年12月5日水曜日

Norman K. Denzin " On Understanding Emotion"

学生の頃に読んだ本で、「現象学的」という言葉に惹かれて読んだのだった。それに、デンジンという名前がかっこいい。ただ、わりと真面目に現象学を勉強していた身としては、あまりに現象学用語が簡単に扱われるのが、英語の簡単さと相まって拍子抜けした記憶がある。別にこれで象徴的相互作用論Simbolic Interactionismを見限ったりはしなかったが、「この程度か」と思ったのも事実だ。

当時は感情について何か社会学的に構成できないかと考えていて、今でもそういう人は多いのではないかと思うが、イマイチ冴えた研究がない。分かりやすいのは、「恥」とか「罪」とか「甘え」とかだが・・・。社会規範としての感情というのは、研究分野として可能性があると思うが、多分、現象学ということではないんだろうな。とは言え、そんなことを考えている人は、目を通しておいていい本。もっとも、この本の能書きに従っても、あまり何も生まれてこないと思うが・・・。

The name "Denzin" sounds cool. If you are interested in sociology on emotions, this book is a must-read. Though, I do not know if the instructions in this book are so productive....

2012年12月3日月曜日

Klaus Dodds "The Antarctic: A Very Short Introduction"

ISBN-13: 978-0199697687
Oxford Univ Pr (2012/9/7)

南極の入門書・・・だが、南極の自然環境についてではなく、地政学である。実際、この著者はGeopolitics: A Very Short Introductionの著者でもある。これは少し説明しないと分からない。

現在、南極大陸は、南極条約とかで採鉱とか軍事利用とかは禁じられているし、どこの国もどこにでも観測基地を作っていいし、飛行機で飛んでも良い。というわけで、日本では、南極大陸はどこの国の領土でもないというように教えられているし、地図上もそうなっている。だが、そうは教えていない国が世界には7つある。はっきり言うと、イギリス・アルゼンチン・チリ・ニュージーランド・オーストラリア・フランス・ノルウェーで、これらの国は南極条約を受諾しているが、領有権の主張をやめたわけではない。

この本の大半は、醜い領有権争いに当てられている。日本で南極といえば、アムンゼンやらスコットやら白瀬とかの冒険とか、昭和基地とかの科学調査活動が第一に思い浮かぶが、そういう活動も一々領有権争いと密接に関連していてうんざりする。幸いにして日本は南極大陸の領有権を主張していないが、この騒動と無関係ではない。一番大きいのは捕鯨で、オーストラリアの主張するところのオーストラリア領南極大陸の近海で捕鯨をしたというので国際司法裁判所に提訴されている。つまり、南極大陸の領有権問題自体は南極条約で棚上げされているが、大陸棚とか経済排他水域とかは未解決のままなのである。もちろん、日本はそもそも南極大陸がオーストラリア領であること自体を認知していないし、そんなあやふやな根拠で国際司法裁判所が領海権などを認めるとは思えないが、捕鯨そのものについては絶望的な少数派ということもあり・・・。

著者がイギリス人であり、この本がイギリスの本であることも覚えておくべきだろう。イギリスは南極大陸の領有権を主張している国の一つであり、その範囲がアルゼンチンとチリと重なっている。だからと言って、この本の記述が不公平だとかいうことではないが、たとえば、領有権を主張していない中国やアメリカで出版される本なら、ニュアンスが違ってくる可能性はある。わたしとしては、入門書としてはひとまず十分で、詳しく調査する用事が出来た時の備えになった。

A book on ugly contestations over sovereignty of Antarctica. Depressing, but an ugly truth.

Scott Adams "Dilbert 2013 Day-to-Day Calendar: I'd like to thank all of you for your utter apathy."

今年も一年使ったが、来年もやはりデスクトップはこれで。Dilbertカレンダーは何種類かあるけど、day-to-dayがお得。研究者・技術者のデスクに最適。何となくわたしの気分だけど、主人公Dilbertの身分相当の人でないと、似合わない気がしなくもない。たとえば、管理職とか女性とか営業とかのデスクにこれがあったら、ちょっと気持ち悪いかもしれん。Peanutsを使ってた時もあるけど、今となっては、わたしのカバー率が相当高くなってしまった。

My favorite one. Recommended for all Dilbert-like people. It would be odd if this calendar were seen in a room of a CEO, marketing, etc.