いわゆるクトゥルフ神話の代表作。ラブクラフトの作品は昔に大抵読んでいて、二流だとしか思っていなかったが、ふと思い出してもう一度これを読んでみたら、記憶にあるよりは面白かった。世界観自体は好きなんで・・・。
どの辺が二流かと言うと、最大の理由は、「なんでか良くわかないけどとにかく嫌な感じを受ける」という類の主観的な描写が多過ぎるのである。正しくは、hideousとかhorribleとかいう主観的な形容詞は最小限にして客観的な描写に徹し、読者にこそ主観的な恐怖を体験させるべきなのではないか。エロ小説の描写で「エロい」とか「淫らな」とかいう言葉を多用している状態を想像されたい。ラブクラフトの場合は、読者が受けるべき印象を、一人称の主人公の受けた印象として描写してしまう。あとは、読者がいかに自分で自分を怖がらせるかに掛っているわけだ。
他にも文句は色々あるが、基本的にわたしはSAN値が高いので、ホラーに対して厳しい傾向がある。この小説もハッピーエンドにしか思えない。しかし、この小説の価値はそういうことではなく、神話の入門ということにあるのだろう。その意味では必読書である。この小説を元にした日本語のテレビドラマ「インスマスを覆う影」は名作だった。やはりハッピーエンドとしか思えないが・・・。
Ia! Ia! Cthulhu fhtagn! Ph'nglui mglw'nafh Cthulhu R'lyeh wgah-nagl fhtaga....