2015年8月30日日曜日

David Blockery "Structural Engineering: A Very Short Introduction" [構造工学:非常に短い入門]

目次
  1. すべてのものは構造を持つ
  2. 形は機能に従うか?
  3. ストーンヘンジから摩天楼まで
  4. 構造を理解する
  5. 動かすものと揺らすもの
  6. 抵抗力

構造力学の入門書という体で、実際大家なんだろう。業界の愚痴や広大な抽象論から入るのはVSIの一つの典型だ。他方で結構高度な概念に踏み込んで説明しているところもある。わたしは初歩的とは言え物理も構造力学も多少やったことがあるから言いたいことは分かるが、完全な素人には説明不足なのではないかと思う。なかなか熱い思いを感じる本ではあり、わたしとしても、再確認できることもあったが、全体的な結論としては素人にはお勧めしかねる本である。多少工学の素養がないと厳しい。
Good reading, but a bit difficult for absolute beginners.
Oxford Univ Pr (2014/11)
ISBN-13: 978-0199671939
英語

2015年8月13日木曜日

John Finney "Water: A Very Short Introduction"[水:非常に短い入門]


  1. 水、どこにでも水・・・
  2. 水分子と相互作用
  3. 氷としての水
  4. 液体―そして期待としての水
  5. 説明されるべき特異性
  6. 生体分子としての水
  7. 過去と現在のいくつかの論争

ひたすら水の構造を解説する本。氷と言っても17種類あるとかで、色々大変だ。水には他の液体にはない様々な特徴があるが、一々構造から解説していく。詳しくは読んでもらうしかないが、基本的にはH-O-Hの曲がった構造、そしてさらに細かく見ると酸素が電気的に陰性に、水素がそれぞれ陽性になるところから隣の水分子と正四面体ができ六角形ができたりしてみたいな話がずっと続く。というようなわけで、水の文化史とか気象変動とか水戦争とかそんな話は全くない。最後には水に記憶があるとかないとか(優しい言葉をかけ続けると良い水がとかいうような)そんな話にもなるが、基本的にはハードな物理化学。ただ、話が上手いので読みやすいのは確か。
Physical chemistry of water(s). Very readable.
Oxford Univ Pr (2015/11)
英語
ISBN-13: 978-0198708728

2015年7月21日火曜日

Pierre Carbone "Les bibliothèque" (Que sais-je?)[図書館(クセジュ)]

目次
  1. 現実世界の中の図書館
  2. 媒体の経済の中の図書館
  3. 組織の管理の中の図書館
  4. 資産の保存と価値付け
  5. 文化の発展
  6. 教育と訓練の支援
  7. 研究と調査
  8. 情報と資料収集
  9. 図書館間の協力
  10. デジタル図書館
  11. 電子資料と図書館コンソーシアム
  12. オンラインサービス

基本的にはフランスの図書館界隈の現状をQue sais-je?にありがちな淡々とした調子で叙述している。ここ十年くらいの図書館業界は色々な混乱があるが、基本的にはIT革命、つまりネットとデジタル化(numérisations)に巻き込まれているということで、混乱が収束するまでまだ後十年はかかるだろう。もちろん、一時期の「小さな政府」みたいなこともあって、日本なんかは民営化も進んでいるが、フランスはわりとこの波に抵抗できたようだ。著作権への対応なども日本と随分違うが、今後の日本の図書館業界には、色々参考になることもあるのではなかろうか。特に深い考察や今後の指針が示されているわけではないが、フランスの図書館事情をコンパクトにまとめた一冊である。
それはそれとして、こういう本は翻訳すれば一定数売れるに決まっているように思うのだが。フランスの図書館事情を解説している本なんてほとんど出ていないのだし、最低でも日本にある図書館は各館一冊ずつは買うだろうし、志のある図書館員や司書課程の学生と教員も買うだろう。出版業界の人間も買うだろうし、情報科学界隈でも売れそうである。簡単に一万部くらい出そうな気がするが、甘いのかな。
Une bonne introduction pour les bibliothèque en France./
PRESSES UNIVERSITAIRES DE FRANCE - PUF(14 septembre 2012)
ISBN-13: 978-2130594550
フランス語

2015年7月14日火曜日

Frank Close "Nuclear Physics: A Very Short Introduction" [核物理学:非常に短い入門]

目次
  1. 大聖堂の中の蠅
  2. 核化学
  3. 強い力
  4. 奇数と偶数と殻
  5. 核の生成と崩壊
  6. 周期表を越えて
  7. 特異原子核
  8. 応用核物理

核物理学の概説。わたしとしては分かりきっている部分もあったが(特に化学とか星の中の反応)、多分、核子以下の水準での物理学の概説書としては、なかなかこれ以上の本も少ないのではないかと思う。というのも、化学の水準ならそこまで降りる必要がないし、核物理学自体、日本でも世界でもあまり人気の学科でもない・・・。個人的には明日MRI(著者はNMRと呼びたいようだ)の検査を受けることになっているので、ムダにタイムリーである。放射線を扱う人の他、化学系の人の基礎教養にも良いのではなかろうか。VSI随一の名著"Particle Physics"の著者でもあり、安心だ。この本の最後はなかなか酷い名言で締めくくられているが、是非最後まで読んで呆れて頂きたい。
本書中にも書いてあるが、VSIには本書と"Particle Physics"のほかにも核物理学関連の本があり、いずれも面白い。
  • "Nuclear Power"・・・原子力発電の色々な技術を解説。
  • "Nuclear Weapon"・・・これはどっちかというと政治が重い。
  • "Radioactivity"・・・放射線利用の概説。

Oxford Univ Pr (2015/10)
ISBN-13: 978-0198718635

2015年6月23日火曜日

Veronika Schnorr, Martin Crellin, Adelheid Schnorr-Dummler, Gabriele Forst, Raymond Sudmeyer "Mastering German Vocabulary: A Thematic Approach" [ドイツ語語彙攻略:主題別アプローチ]

5000語超のドイツ語単語集。Amazonでは絶賛されている本だが、類書が少ないんだと思う。二週間かかって全部読んだ。確かに良い本だが多分、最低で独検2級レベルからだろう。文法は完全に把握していなければ読めない。巻末に簡単な文法の解説があるが、この程度のことは完全に理解していないと本文が読めない。
この本の最大の利点は、例文が異様に充実している点にある。実際異様で、非常に初歩的な単語に対して付いている例文でも、理解するのに相当なドイツ語力を要する。この本は概して難易度の概念がなく、わたしは先頭から順に読んで行ったが、"sein"とか"vor"とか超初歩的な単語が最後のほうになって出てくる。後から読んだほうがマシだったかもしれないが、"haben"が出てくるのは真ん中あたりだった気が・・・。もちろん、この程度の単語を知らない人がこの本を読んでも非効率だろう。
難易度無視以外にも色々欠陥があり・・・
  • 若干古い。通貨はDMだし、IT関係の用語が完全に落ちている。
  • 名詞の複数形が書いていない。
  • 例文の英訳が逐語訳でないので知らない単語は別に調べないといけない。
ただ、これらの欠陥を補ってあまりある例文の充実ぶりというわけで、ドイツ語の文法は一通り終わった人なら読む価値はあると思う。
A good German vocabulary book. It has some drawbacks, including its relatively oldness (it lacks words for IT almost entirely), lack of plural forms of nouns and indifference to word frequency. However, the richness of example sentences compensates these faults and goes further.
Barrons Educational Series Inc (1995/08)
ISBN-13: 978-0812091083

2015年6月1日月曜日

Jonathan Slack "Genes: A Very Short Introduction" [遺伝子:非常に短い入門]


  • 1. 1944年以前の遺伝子
  • 2. DNAとしての遺伝子
  • 3. 突然変異と遺伝子変異
  • 4. マーカーとしての遺伝子
  • 5. 効果の小さな遺伝子
  • 6. 進化の中の遺伝子
  • 結論:遺伝子の様々な概念

遺伝子の解説書。最初の二章くらいは研究史と分子生物学の基本みたいなことで、日本で言えば高校の生物をちょっと超える程度。本題はその後で、1)分子生物学的な意味での遺伝子(DNA) 2)人口学的な意味での遺伝子(マーカー、犯罪捜査などに使う) 3)量的遺伝学的な意味での遺伝子(身長などの遺伝を決定する超複雑な変異など) 4)進化論的な意味での遺伝子(自然淘汰などとの関係) 5)人間の行動などを研究する社会生物学などが順に解説される。
印象に残るのは、要するに「複雑過ぎて永遠の謎」みたいなことが予想外に多いということだ。たとえば、血友病なんかは問題の遺伝子が特定されているが、こんなのは珍しい。最も熱い話としては、白人と黒人の間のIQの差がどの程度遺伝子のせいなのか、あるいは遺伝子なんか全く関係ないのか、科学的には判定できない。環境だの文化だのを別としても関連する遺伝子があまりに多過ぎて分析に堪えない。もちろん、IQが遺伝するの明らかだが、遺伝の影響を証明するのと実際の遺伝子を発見するのは全然違うことらしい。もっと単純な話、たとえば身長ですら遺伝子がよく分からない。統計解析の話はほとんど解説されていないが、要するに、関連する遺伝子が多過ぎて、どれだけデータがあっても有意な回帰式がほとんど作れないんだろう。実験が困難とか社会文化要素がとかいうこともあるが、それ以前に何より数学的に解析不可能なようだ。
そんなわけで、世間では遺伝子操作で超人を作るような話もたまに聴くが、どうやらこの本を読む限り、知能の高い人間どころか、身長の高い人間すら設計できないようだ。親の身長が高いと子の身長も高い傾向があるのは誰でも知っているが、それとこれとは全く別のことということは、本書で何度も強調される。地味なテーマだが、遺伝子に対する考え方がアップデートされた。
Genes are not merely sequences of DNA. Everybody knows that taller parents tend to born taller children, but specifying the genes responsible for this heredity is quite another thing, or, if I correctly understand this book, computationally impossible, because there are too many genes.
Oxford Univ Pr (2014/12)
ISBN-13: 978-0199676507

2015年5月26日火曜日

François Gaudu "Les 100 mots du droit" [法律用語100選(クセジュ)]

法律100語というところだが、もちろんフランスの法律である。と言っても、日本の法律はもともとがフランスの法律の輸入品であり、日仏の事情の違いはあるものの、この本で解説されるような基本概念については、ほとんど違和感がない。きちんとフランス法を学ぶ気ならこんな本を読むより基本書をきちんと読むべきだが、もともと日本の法律にある程度詳しくて、フランスの基本的な法律用語を押さえておくくらいのつもりなら、ちょうどいい。ためしに短い一項目だけ訳してみた。文字通り訳すと読みにくいので若干意訳気味。
Meuble(動産)
フランス法ではsumma divisio、つまりすべての物体を分類するカテゴリーを確立することが好まれる。そういうわけで「すべての物体は動産または不動産である」。不動産は民法典によって厳密に定義されており、不動産でない物体はすべて動産である。従って、動産のカテゴリーに含まれる物には、共通の意味がない。たとえば、債権―人が給付を受ける権利―や「有価証券」―株、債券などがある。同様に、知的財産権―特許、商標、著作権・・・―も動産と考えられる。
動産と不動産の区別からくる規定の違いのため、今日では廃れたが、不動産のほうが動産より価値があるという考えが生まれる。また、概して不動産の売買は動産の売買よりも厳格な形式に従う。さらに、"lésion"、つまり実際の価値との比較で、合意された価格と実際の価値の相違が大きい場合、不動産の売買は無効になることがある。lésionは元の民法典の時代の表現では7/12、すなわち50%以上でなければならない。これに対して動産の売買では、lésionは無効の原因にはならない。
Je ne sais pas si les Françaises savent le fait, mais les droits japonais étaient essentiellement importés de la France. Ce livre aussi sert à savoir les droits japonais.
Puf (2010/10/17)
ISBN-13: 978-2130582946

2015年5月24日日曜日

Inc. Penton Overseas "Speak in a Week Flash! German: 1001 Flash Cards" [一週間で話せるドイツ語:単語カード1001枚]

これは冊子ではなくいわゆるドイツ語の単語カード。昔買ったのが出てきたので一応やってみたけど、やはりあまり良い買い物ではなかった。1)そもそもわたしはこの手の丸暗記が苦手。2)それほど非常識でない気もするけど1001語の選択基準が不明。3)名詞の複数形、動詞の分離・非分離等の基本情報が全く載ってない。単語カードという商品は、紙・電子を問わず、どういうわけか、割と雑な造りのものが多い気がする。ただ、こういうのが得意な人にとっては、類似の商品も少ないことだし、書いていないことは辞書を引けばいいわけだから、悪くないのかもしれない。

I cannot recommend this product, because it lacks vital information such as plural forms of nouns and detachable/undetachable prefixes of verbs.

Penton Overseas(2008/03)
ISBN-13: 978-1591259497

2015年5月22日金曜日

Thomas Piketty "Le capital au XXIe siècle"[21世紀の資本]

これは世界的なベストセラーであり、日本語訳も大層売れて時間も経っているから、今更内容を説明しなくていいだろう。要は格差拡大の構造的な理由を解明している。かなり大部な本だが、ほとんど退屈する部分もなく読めた。

第一に内容が素晴らしい。普段、わたしが肌で感じていることを明確なデータで示してくれている(日本もヨーロッパも状況に大差ない)。格差社会がどうとかいう話は根拠不明の感情的な言い争いになりがちなところ、最善のデータを提示することで論争のための土台を用意してくれる。この本の影響で、今後はムダな感情論が減ることを願う。

第二に、一度は社会科学を志したことのあるわたしとしては、社会科学とはこういうものだと感動すると同時に、「これは俺には無理だったな」と思わされる。実は言っていること自体は、少なくともわたしは何となく分かっていたことではある。わたしは個人的な事情で、億万長者から生活保護世帯まで、色々な社会階層の人たちを見てきた。しかし、それをこの形、つまり、実証的であると同時に説得的である形にまとめるのは、超人的だ。

第三に、わたしは仕事柄、公文書や行政データに多少詳しいが、ピケティがこれだけのデータを集計・分析するのにどれだけの労力を費やしたかと思うと、めまいがする。手下とか学生とかに手伝わせたとしても、高度な計画性が必要な一大事業である。本書の中で、統計データが利用できることが決定的に重要と何度も繰り返されるが、微力ながら何か貢献できればなあと思う。

大部だが読んで損はない。若干クドい部分はあるものの、分かりにくい話ではない。日本語はかなり気持ち悪い文体に訳されているようで非常に残念だが、それでも多分、巷に蔓延る便乗本よりはマシだろう。大きな本屋で一通り日本語の便乗本を見たが、読むに値するようなものはない。ある本なんかはピケティの解説と称しながら、適当に開いたページに「日本では1%と99%の格差よりも正社員と非正規の間の格差のほうが重要である」とか、よくもこんな恥知らずなことが書けると吐き気がした。これは極端かもしれないが、本来ピケティに論破されているはずの連中が、ピケティを無理矢理捻じ曲げて「解説」と称している例が多い気がする。日本の状況には絶望したくなるが、別に難しい話でもなく、原書を読めば誰の目にも明らかなことだ。

Très bien écrit et passionnant. 1)Je connais personnellement des gens de couches sociales très pauvres à celles très riches. Cette oeuvre offre les preuves concrètes pour des délibérations. 2)Quand j'étais étudiant, je rêvais de devenir un scolaire de sciences sociales. Maintenant, je réalise que je ne suis pas assez intelligent grâce à M. Piketty. 3)Je m'occupe d'information du gouvernement japonais. J'imagine que M. Piketty doive avoir travaillé beaucoup pour obtenir les données.

Seuil (30 août 2013)
ISBN-13: 978-2021082289

2015年5月21日木曜日

Ed Swick "Practice Makes Perfect Intermediate German Grammar" [練習が完全を生む:中級ドイツ語文法]

目次・・・1主格と対格 2冠詞と形容詞 3与格 4不規則現在 5属格 6与格対格の前置詞 7再帰代名詞と複数形 8接頭辞 9不規則過去 10完了 11助動詞と二重不定詞 12否定と命令 13語順と未来 14比較級 15最上級 16混合変化動詞 17数字 18関係詞 19受動 20不定詞句 21接続法 22文

これは同じPractice Makes Perfectシリーズの"Basic German"に続けてやった。だいたい三か月半かかったようだ。数か所、答に間違いがあったが、些細なことだ。わたしとしては、特に、冠詞・形容詞の変化が分かりやすく習得できたのが印象に残る。多分、ドイツ語の問題集として、このシリーズ以上の物はないだろう。

ただ、このシリーズ、洋書にありがちな話で体系がどうなっているのか出版社のサイトを見ても分からない。わたしは"Basic German"と"Intermediate German Grammar"しかやっていないが、多分、最初の二冊として、このルートが最善だったようだ。前者は完全な初心者が一通り基礎ドイツ語を身に着ける。後者は中級文法ということだが、ここまでやればほぼ文法は完了と考えていいだろう。もちろん、語彙、特に結構な数の不規則動詞を覚えて使いこなすのはまた別の問題である・・・。

シリーズの他の本をreviewとかを参考にしながら調べると、

  • Sentence Builder・・・初級文法終了程度。文の言い換えとからしい。
  • Pronouns and Prepositions・・・初級文法終了程度。ドイツ語の代名詞と前置詞がそんなに難しいと思えないのだが。
  • German Vocabulary・・・初心者向き。語彙の提示と、語彙を使う練習問題。わたしはこの手の語彙本はダメだ。
  • Complete German Grammar・・・入門らしい。多分、"Basic German"とカブっている。
  • German Conversation・・・個人的には会話に興味がない。
  • Problem Solver・・・中級文法の復習らしい。
  • Verb Tenses・・・動詞の変化に特化しているようだが、ドイツ語の動詞変化はそんなに大変かなぁ・・・。
主として語彙力・読書量不足のために、春の独検2級に受かる気がしないので、そうすると上の中からまた何かをやると思うが、Problem Solverくらいか。

A very good intermediate workbook. I believe I mastered complete German grammar needed to read newspapers, with aid of a german dictionary.

McGraw-Hill (2013/8/9)
ISBN-13: 978-0071804776

2015年5月12日火曜日

Philip V. Mladenov "Marine Biology: A Very Short Introduction" [海洋生物学:非常に短い入門]

目次

  1. 海洋環境
  2. 海洋生物学的過程
  3. 大洋の沿岸域の生物
  4. 極海生物学
  5. 熱帯の海洋生物
  6. 潮間の生物
  7. 大洋からの食べ物

海の生き物の概説ということだが、もちろん色んな生物を解説できるはずもなく、個別の生物に着目しつつも生態系全体の描写に傾いている。個人的には熱帯の賞のサンゴの生態などは初耳だらけだった。VSIのDesertを思い出すが、あちらには環境破壊に対する批判みたいな話はほとんどなかったが、こちら"Marine Biology"は、ちょくちょく批判が挟まる。というのも、現実に人間の影響抜きに海洋生物学を考えられないという差なんだと思うが。わたしとしては、海洋生物については、時たま水族館に行く程度の興味しかないところだが、その程度でも面白いし、実際、深海などには面白い生き物がいっぱいいる。特に環境問題に関心のあるムキにもお勧めだ。

A good overview of the ecology of sea, with examples of interesting species.

Oxford Univ Pr (2013/10)
ISBN-13: 978-0199695058

2015年5月11日月曜日

Peter Atkins "Chemistry: A Very Short Introduction" [化学:非常に短い入門]

目次

  1. 起源、視野、構成
  2. 原理:原子と分子
  3. 原理:エネルギーとエントロピー
  4. 反応
  5. 技術
  6. 達成
  7. 未来

VSIでのこの手の「一般的過ぎるタイトル」がたいていそうであるように、前半は日本で言えば、せいぜい高校生の教科書レベルである。後半からは、大学ぽくなってくるが、色々な先端分野を渉猟するようなことで、特に深いところは語られない。まあ、理系の大学一年生が高校の復習と英語の学習を兼ねて読むくらいか。こんな基礎的な説明でなく、もっと化学の最前線をというムキには、同じ著者の"Physical Chemistry: A Very Short Introduction"をお勧めしたい。

A very basic introduction for beginners.

Oxford Univ Pr (2015/5/1)
ISBN-13: 978-0199683970

2015年5月8日金曜日

Stephen Smith "Taxation: A Very Short Introduction" [税:非常に短い入門]

目次

  • 1. なぜ税があるのか
  • 2. 課税の構造
  • 3. 誰が担税するのか
  • 4. 課税と経済
  • 5. 脱税と執行
  • 6. 税政策の諸問題

なかなか面白くてわりと一気に読んだ。多分、日本の大学なら「租税原論」みたいな話かもしれないが、そこまで堅苦しくなく、特に予備知識も必要ない。特定の国の税金事情についてではなく、公平性と効率性の対立を軸としつつ、租税に関する一般的な原理的な話が主だ。データはOECDからのものが多い。

3章の税負担の帰着の問題や4章の死荷重の問題は経済学部なら初歩的だが一般にはあまり理解されていないところ。他にも色々面白い論点があるが、生活必需品(食品など)の消費税率を下げるのが色々な意味で得策でないという議論には、なかなか啓発された。税の実務などには全く役立たないが、税制の設計なんかについては色々考えさせられる。個人的な事情として、勤め人のわたしとしては、自営業の彼女が何かと領収書をためているのを「なんだかなあ」と常に思っているわけだが、この事態は日本に限ったことではないらしい。さらにどうでもいいが、今年はわたしも医療費控除が発生するので、同じように領収書を溜めるハメになっている。まあ、そんなことでもなければ、普段は税金のことなんか意識にも登らないわけだが・・・。経済学の学生のほか、税金について何か強い思いがある人、たとえば「消費税は逆進的でけしからん」とか「サラリーマンは損をしている」とか思っている人は読んで損はない。

Theories and policies of taxation, told chiefly in regard to the dilemma between efficacy and equity. Very readable and fascinating.

Oxford Univ Pr (2015/06)
ISBN-13: 978-0199683697

2015年5月2日土曜日

Benjamin Bolker, Marta Wayne "Infectious Disease: A Very Short Introduction"

伝染病の概説。最初のうちは数学モデルとかで、わたしとしてはあまり興味の持てないところだったが、伝染病を理解するために基本的な概念が解説されている。次に個別例に入ると一気に読みたくなる。取り上げられるのはインフルエンザ・HIV・コレラ・マラリア・Bd。最後のBdは両生類に感染するもので、一般的に興味があるかどうか分からないが、カエルの激減が気になるムキには重要な伝染病だ。最後にそれ以外の伝染病がまとめて取り扱われる。執筆時点ではエボラが大問題だし、結核やチフスも深刻だ。ここも詳しく説明が欲しかったけど、短い本なんで仕方ない。学問的な入門書というより、日本の新書に近く、一般的な啓蒙という方向性が強い。

An fascinating introductory case studies on infectious diseases, including influenza, malaria and HIV.

Oxford Univ Pr(2015/08)
ISBN-13: 978-0199688937

2015年4月14日火曜日

Peter M. Higgins "Numbers: A Very Short Introduction"

厳密な証明のない数論の入門書というか、全体の見通しを示す本。大半の部分は紙と鉛筆がなくても読める。類書も多いところだが、VSIに収録というところで値打ちがつく面もあるだろう。基礎知識としては、日本なら高卒くらいで十分だ(英語が読めればの話だが)。目立った特徴がないので推薦し辛いのだが、入院中に読んで、やはり数学は面白いと思った。

A standard introduction to number theory. I do not see anything extraordinary about this book, still I enjoyed it. Well-written.

Oxford Univ Pr (2011/3/22)
ISBN-13: 978-0199584055