Origami:From Surface to Form (Amazon.co.jp)
日本の本屋で手芸とか趣味の棚にあるような折紙の本というより、数学書の棚に置いてあるたぐいの折紙幾何学とか折紙工学とか呼ばれるジャンルの入門書。色々な折り図も紹介されているので、単に折紙の本としても読めることは読める。ただ、説明がかなり不親切だったり不正確だったり誤記誤図も多くて、折りたいだけの人には勧められない。わたしはこの本に出てくる作品は一部の異様に難しいものを除いてほぼ全て自分で折ってみたが、相当苦労した。実際、ある程度数学力がないと解明できない折り図も多い。日本なら初等幾何学の好きな中学生くらいでも本気を出せば解明できるかもしれないが、普通無理だと思う…。
そんなわけで薄い本だが読み終わる(折り終る)のに二か月以上かかった。一般人にはお勧めできる本ではないし、もっと優れた折り紙の本もあると思うが、わたしにとっては人生を変えた本とまで言えるかもれしない。今まで折紙なんかまったく興味がなく、子供の頃に折った記憶もほとんどないが、今部屋に折紙の本と立体幾何学の本が積み上がり、数百枚の折紙が散らかっている。理論の説明も結構あるが、読んでいる時間より、考えたり折ったりしている時間のほうが圧倒的に長い。印象に残った具体的な作品をいくつか記録しておく。
Magazine box。なんでもない基本的な作品だが、単純な折り方で立体が構成されたのが衝撃だった。
Water bomb。要するに紙風船。これも基本的だが、今までに折った記憶がない。自分で分析して分かったが、この本も含めて、たいていの作品は一般的な指示通りに折ると誤差が大きい。多分、異様に器用な人間を想定しているのだろう。
正八角形の折り畳み。これは理解するのに少し手間取ったが、折り畳みの楽しさがある。誤差を縮める折り方を開発するのに試行錯誤した。
Icosahedron。特に正方形の紙からの正二十面体。作り方は全く説明不足だが、解明して組み上げた。そもそも20unitsも必要ない…。数学の本にはよく正二十面体の図は載っているが、こうして自分の手に取れるのは素晴らしい。この本では五つの正多面体のうち正十二面体の折り方だけ載っていないが、別途作った。正二十面体は多少固定が必要だが、正八面体は簡単に無限に作れるので暇つぶしによい。
WXYZ。これは多面体折紙の最高傑作。折り図や完成図は意味不明だが、自力で考えながら組むのは、そんなに難しくはない。実は完成品を見ても意味が分からないくらいだが、要は4つの正三角形が三次元で交差する形になる。本書には説明がないがユニットの組み方で光学異性体が存在する。だからこんな名前なのかもしれない。既にもう五個か六個作った。
A4の紙から帯を切り出して編み上げる立方体。これは本書に寸法が書いていないので、自分で計算しないといけない。ここまで本書についてこれた人なら自力で計算できるのではないだろうか。画用紙を使ったほうが良い。
Corrugation。いわゆる波形。特にwater bombを基準にしているほうは簡単で、A4の書類でも畳める。Miura-oriみたいに簡単に広げたりはできないが。折り図は意味不明だが、ここまで来た人なら折れる。