目次:1.早く老いる細胞がどのようにあなたを老けて見せ、感じさせ、行動させるか 2.長いテロメアの力 3.テロメラーゼ:テロメアを補充する酵素 4.ほころび:ストレスはどのように細胞に入り込むか 5.自分のテロメアを気にしろ:否定的な考えと弾力的な考え 6.青色が灰色に変わる時:鬱と不安 7.テロメアを鍛える事:どの程度の運動が十分か 8.疲れたテロメア:疲弊から復活へ 9.テロメアは重い:健康な代謝 10.食事とテロメア:細胞の健康に最適な食事 11.テロメアを支援する場所と顔 12.妊娠:細胞の老化は子宮から始まる 13.子どもの頃は一生影響する:幼児期がどのようにテロメアに影響するか
テロメアという言葉がどれくらい一般に知られているか分からないが、要するに生物の老化を決定する細胞内の構造である。若ければ若いほど長く、歳を取ると短くなる。ただ、人によって、つまり、遺伝的・環境的な様々な原因によって、実年齢より長かったり短かったりする。というか、どちらかというとテロメアの長さこそが実年齢というべきで、これと暦年齢との差が本書の主題である。
だいたい二つの部分があり、テロメアとテロメア―ゼ(テロメアを回復させる酵素)についての判明している科学的知見と、テロメアに良い生活習慣などの説明が交互に来る。読者のかなりの部分が、後者にしか興味がないと思われるが、その件に関しては、率直に言って、特に斬新な知見もなく、"LOHAS"の一言で済むようなことだった。つまり、ストレスを管理し、たばこは吸わず、酒を控え、適度に運動し、瞑想をし、有機野菜を食べ、肉食を避け、オメガ3脂肪酸を取り、愛情のある生活をし、質の良い睡眠をとり、近所の人と仲良くし…。要するに世間で言われているようなとても意識の高い生活を推奨しているだけだが、背後にテロメアに関する疫学的な知見と、ノーベル生理学賞という説得材料が後に控えている点がこの本の売りなんだろう。
強いて世間の常識と少しずれていると思われるのは、体重自体をあまり問題にしていない点だ。体重自体より代謝とかダイエットのストレスのほうが問題であるとかいう言い分で、体重増加が代謝に関する重要な情報であることを強く言わない。もう一つ目立ったのは、特に前半でマインドフルネスを非常に重用している点で、これはDepression: A very Short Introduction"でもそうだったが、流行りなんだろう。
個人的には最後のほうのテロメアの遺伝とか胎児期~幼児期のストレスでのテロメアの損傷に関する知見がこの本の最大の収穫で、暗澹たる気持ちになったが、社会運動を別にすれば、個人が自分ではどうしようもないことである。格差社会はテロメアに及んで文字通り遺伝すらしている。世界的に売れている本らしく、日本でも「テロメア・エフェクト」という分かりにくいタイトルで訳されている。意識の高い生活をしたいが意志力が足りない人は、この本を読めば自分を説得する材料が増えるかもしれない。
All doctors recommend almost same style of life and this book is not an exception. In a word, "LOHAS". One outstanding feature of this book is a strong recommendation of "mindfulness" to control stress.
Grand Central Publishing (2017/1/3)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1455587971
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