2017年2月27日月曜日

Dan Roam "Draw to Win: A Crash Course on How to Lead, Sell, and Innovate With Your Visual Mind" [勝つために描く:視覚的知性によって導き、売り、革新するための特訓コース]

目次:1生活が懸かっているように描く 2最も良い絵を描く人が勝つ 3まず円を書いて名前をつけよう 4目を導けば頭はついてくる 5「誰」から始めよう 6導くためには目的地を描く 7売るためには一緒に描く 8革新するためには世界をさかさまに描く 9訓練するためには物語を描く 10分からない時は描く

要するにビジネスの場で「もっと絵を使え」という本。絵と言ってもイラストまで行かず、「図解」くらいだろうか。あくまでビジネスだから「描くことは芸術ではなく思考である」ということで通している。絵の具体的な描き方としては、棒人間の描き方が少し載っているくらいで、別にこの本を読んでも絵自体が上達することはない。というか、この本が要求する程度の絵(図)は、教えられなくて誰でも描ける。

では、この本に何が書いてあるかというと、前半に視覚の重要性を解いているほか、後半は、そこらの安いビジネス書に書いてあることと大して変わらない。ただ一点、何かと「絵(図)を描け」ということを強く訴えている点が違う。昔、「人生がときめく片づけの魔法」というベストセラーがあって、わたしも感心したけど、あの本も、具体的な片づけ方の方法という意味では他の本と大して違うことは書いていない。ただ、「片づけよう」と思わせる力がスゴかった。それと同じで、この本についても、この本が言っている絵の描き方はとても簡単なことだが、実践している人は非常に少ない。そして、スゴくやる気にさせる。

絵が多くて非常に読みやすい本でもあるし、ビジネス・仕事術・プレゼン術みたいなことに興味のある人は読んで損はないと思う。わたしとしては、普段は絵も描かないし、こんなビジネス書には手も伸ばさないが、なんか妙に魅かれるものがあって手を伸ばして、正解だった。以来、何かと絵を描くようにするようになって、まあ、それでもなかなかクリアできない問題もあるが、少し視野が開けた気もする。

After having read this book, I have been drawing diagrams everyday. I hope it help me to get out of the troublesome situation that I am now in.

Portfolio (2016/9/13)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0399562990

2017年2月19日日曜日

Madeline Y. Hsu "Asian American History: A Very Short Introduction" [アジア系アメリカ人の歴史:非常に短い入門]

目次:1.帝国と移民 2.人種とアメリカの共和制 3.周縁で生きること 4.戦争の試練 5.帝国主義と移民と資本主義

主題はタイトルの通り。特に戦前までは中国人・フィリピン人のほか日本人がほぼ主役と言って良い。特に戦前はアメリカも人種差別が酷く、日本からの移民にとってもなかなか苦難の歴史で、日本人は全員読んでいいくらいの話かもしれない。この件については、高校の歴史の教科書でも記述が足りないところだ。というのも、当時のアメリカを含む人種差別の酷さは、それが主たる原因とは言えないかもしれないが、日本が太平洋戦争を始める一つの理由にも挙げられるし、日本人が知らなくていい話ではない。

この本はトランプ政権が誕生するわずか前に出たので、それ以降のことは触れられていない。一通り騒動が収まって数年後くらいには第二版で追記されることになるのかもしれない。現状では、日本政府は、アメリカの入国規制について「国内問題である」としてコメントを控えているようなことで、それも仕方がないかもしれないが、この本を読めば、戦前の日本政府が人種差別については強く抗議していたのと比較できる。当時は有色人種の国で国際的に発言権があったのが日本くらいなので、国際連盟とかの歴史を紐解けば、そういう日本の闘いももっと明らかになるが、この件はとにかく現代日本人に知られていない。

個人的には実はUCLAに所蔵されている日本人収容所の記録文書類を調べたことがあり、その時は収容所内部の生活を見ていただけだったが、こういう広い視野から見るのはとても大切なことだ。この本で扱われているのは「アジア人」というくくりだが、実際には、日本人のほか、中国・朝鮮・インド・フィリピン・ベトナムその他で、みんなそれぞれ出身国の関係もあり、状況が異なる。ただ、アメリカ人はセンサスを始め「アジア人」としか認識していないこともあるし、日本人は、かなりの割合を占める。現状のトランプ政権の移民政策を論じるなら、こういう過去のアメリカの移民政策の歴史、そして日本政府の対応も知っておくべきだろう。少し英語が難しいところもあるので、翻訳で広く日本人に届けばいいと思うのだが。

This book put the Trump's border control policies into the perspective.

Oxford Univ Pr(2016/12/7)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0190219765

2017年2月10日金曜日

Apa Editors "Berlitz Hide This Spanish Book For Lovers" [ベルリッツ恋人のためのスペイン語の本]

早い話が恋人のためのフランス語の本のスペイン語版で、男女が知り合ってセックスしてからお付き合いするまでに必要なフレーズ集。例によって装丁からお洒落だから、特に女性はお持ちになられては如何か。バレンタインの贈り物に最適とかなんとか。

ただ、個人的な話だが、ドイツ語を勉強しているという30代女性を拙いドイツ語で飲みに誘おうとする50代男性を目撃したことを、ふと思い出した。美男美女なら成り立つんだろうが。

Not very practical for me, though it can be useful for handsome guys or sexy girls who do not need to talk much. Ideal for Valentine's gift maybe.

Hide This(2006/1/30)
言語: 英語
ISBN-13: 978-9812468482

2017年2月8日水曜日

Pénélope Bagieu "Cadavre exquis" [たえなる屍]

タイトルはシュルレアリスム用語らしいが、内容との関係が分からない。主人公は22歳の女の子で、日本で言えば、キャンペーンガールというところだろうか。なかなか大変なお仕事だ。失業者の彼と同棲しているが、毎日詰まらなそうな感じである。ある日、とあるアパートでトイレを借りたところ、住人が孤独な有名作家で、彼といい感じになって彼に乗り換えることになる。そこに元妻とかいう編集者が現れて、ここまでは普通に有り得る話だが、この作家、実はかなりのわけあり人物で…。

わたしとしては、この作者の絵が好きだし、読んでいて楽しかったが、一般論としては、まず「なんやねんこの終わり方」という読後の感想だ。こういう佐村河内的なことが実際に可能かという話は別としよう。そして道徳的にどこうみたいな野暮なことは言わないことにしよう。それにしても、最後の終わり方は、流れ的に不自然過ぎて、わたしとしては付いていけない。特に主人公が突然別人になっており、伏線はあるものの、弱すぎる。変貌するならもう少し頁数が欲しかった。ただまあ、わたしが鈍いだけでこれで成り立っていると思う人もいるのかもしれないし、少なくとも大半は面白くて一気に読んでしまったから、お勧めできないわけではない。ただ、わたしなら、この作者ならジョゼフィーヌとかのが最初に読むには良いと思う。

Juste un seul problème: je ne comprends pas les transformations des deux héroïnes. Je ne suis pas assez délicat, comme notre écrivain peut-être?

Folio (27 octobre 2011)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2070444953

2017年2月7日火曜日

Berlitz Publishing "Hide This French Book for Lovers" [恋人のためのフランス語の本]

簡単に言うと、特にセックスとその前後のためのフランス語フレーズ集。男女は問わない。流れとしては、どっかのバーで知り合う→セックス→付き合う→結婚→妊娠→離婚みたいなことらしい。フレーズの量は大したことがないが、イラストも装丁もお洒落で、フランス人あるいは双方共フランス語を話せる恋人のベッドルームに置いておくとロマンチックかも知れない。差し当たりわたしには用のない本のようなものの、読んでいて心が和むし、これはこれで言語の一分野であり、勉強になる。

全くの余談だが、昔、フランス語の勉強をしようとしてフランス映画を見ようとしたところ、字幕付きで安く手に入るのがポルノ映画ばかりで、まあお洒落なんだろうと思って見始めたところ、確かにお洒落ではあるが、コトの性質上、ほとんど会話がなかった。性交シーンは基本的に音楽が流れているだけだし、そうでないシーンでも、よくて主人公の女の独白が少々ある程度で、ほとんど勉強にならない。考えたら当り前のことで、外国語の最高の上達法は、外国語を話す恋人を作ることだとよく言われるが、単にセックスに必要な外国語力なんか、この本程度のことかもしれない。フランス語を学び始めて数か月も経てば、この本は読めるだろう。

A cute book for the bedroom, if you both speak a little French.

Hide This (2006/11)
言語: 英語
ISBN-13: 978-9812469793