2017年2月19日日曜日

Madeline Y. Hsu "Asian American History: A Very Short Introduction" [アジア系アメリカ人の歴史:非常に短い入門]

目次:1.帝国と移民 2.人種とアメリカの共和制 3.周縁で生きること 4.戦争の試練 5.帝国主義と移民と資本主義

主題はタイトルの通り。特に戦前までは中国人・フィリピン人のほか日本人がほぼ主役と言って良い。特に戦前はアメリカも人種差別が酷く、日本からの移民にとってもなかなか苦難の歴史で、日本人は全員読んでいいくらいの話かもしれない。この件については、高校の歴史の教科書でも記述が足りないところだ。というのも、当時のアメリカを含む人種差別の酷さは、それが主たる原因とは言えないかもしれないが、日本が太平洋戦争を始める一つの理由にも挙げられるし、日本人が知らなくていい話ではない。

この本はトランプ政権が誕生するわずか前に出たので、それ以降のことは触れられていない。一通り騒動が収まって数年後くらいには第二版で追記されることになるのかもしれない。現状では、日本政府は、アメリカの入国規制について「国内問題である」としてコメントを控えているようなことで、それも仕方がないかもしれないが、この本を読めば、戦前の日本政府が人種差別については強く抗議していたのと比較できる。当時は有色人種の国で国際的に発言権があったのが日本くらいなので、国際連盟とかの歴史を紐解けば、そういう日本の闘いももっと明らかになるが、この件はとにかく現代日本人に知られていない。

個人的には実はUCLAに所蔵されている日本人収容所の記録文書類を調べたことがあり、その時は収容所内部の生活を見ていただけだったが、こういう広い視野から見るのはとても大切なことだ。この本で扱われているのは「アジア人」というくくりだが、実際には、日本人のほか、中国・朝鮮・インド・フィリピン・ベトナムその他で、みんなそれぞれ出身国の関係もあり、状況が異なる。ただ、アメリカ人はセンサスを始め「アジア人」としか認識していないこともあるし、日本人は、かなりの割合を占める。現状のトランプ政権の移民政策を論じるなら、こういう過去のアメリカの移民政策の歴史、そして日本政府の対応も知っておくべきだろう。少し英語が難しいところもあるので、翻訳で広く日本人に届けばいいと思うのだが。

This book put the Trump's border control policies into the perspective.

Oxford Univ Pr(2016/12/7)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0190219765

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