2024年5月20日月曜日

Glennie Kindred "A Hedgerow Cookbook" [生垣料理本]

A Hedgerow Cookbook (Amazon.co.jp)

簡単に言うと雑草料理本で、世間の評判はかなり良い。しかし実際に料理をしているというよりは、読んでいて楽しいということだろう。実際にこの本を参考にして料理をするとなると、まず、雑草の見分け方が全く書いていない。火を通すにしても、素人が雑草とかキノコを食べるというのは結構危険なことだと思うが…。あと、完成したレシピが載っているわけではなく、基本的な調理法しか書いていない。料理への応用は各自研究せよということらしい。そしてやはり同じ温帯でも日本とは少し植生が違う。わたしもまあまあ雑草が好きだが、やはり野草はアクが強い。参考にはなるが、ガチ勢には色々足りない本だ。

Wooden Books (2000/1/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263036

George Wingfield "Glastonbury: Isle of Avalon" [グラストンベリ:アヴァロンの島]

Glastonbury (Amazon.co.jp)

例によって事実上の観光案内だが、これが一番開き直っていて、普通に散歩コースまで載っている。アーサー王だのイエスが来ただの色々適当な伝説が積み重なっているが、ほぼ出鱈目だろう。古い町には違いない。象徴的な丘は確かに異様だが、実際には若草山くらいだろうか。

Wooden Books (2007/10/16)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263197

2024年5月18日土曜日

Eli Maor, Eugen Jost "Pentagons and Pentagrams: An Illustrated History " [五角形と五芒星: 図解歴史]

Pentagons and Pentagrams (Amazon.co.jp)

1. 五 2.φ 3. しかしそれは神聖なのか? 4. 正五角形を作図すること 5. 五芒星 6. 五角星 7. 敷き詰め 8. 結晶の中の五回対称性の発見 9. ああその五角形

目次から分かるような五角形に関するよもやま話。五角形というのが微妙にマイナーで、ちょうど一冊の本を書きやすいのかもしれない。内容的には日本の高校生くらいなら読めるが、考えないでさらさら読めるような本でもない。しかし、ここまで詳しく五角形について知りたい人も少ないような気もする。わたしはというと、折り紙で正多面体を作っている時に、正十二面体だけ異常に難しくて気になったという経緯。と言っても、直接折り紙に応用できるわけでもない。美術作品などに黄金比を発見するのを批判しているクダリは高く評価したい。五角形好きにはお勧めできる。というか実際この本くらいしかないかもしれない。

Princeton Univ Pr(2022/9/27)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-0691201122

Nicole Borelli, M. Jean-Marie Muracciole "150 expressions françaises illustrées et expliquées" [イラストと説明フランス語150の表現]

150 expressions françaises (Amazon.co.jp)

フランス語の慣用表現を150集めたもの。例えば表紙の絵は"être comme un poisson dans l'eau"。何語でもこの類の慣用句集はあるもので、現実にはそれほど頻繁に出会うわけではない。実際わたしもほとんど知らなかったし、今後も出会う気がしない。表紙にはB1-B2とあるが、実際にはC1レベルの試験対応というところじゃないだろうか。B1で読むのはしんどいかもしれない。実用的には試験対策以外に読む理由のない本の気がする。純粋に趣味で読む分には、一ページにつき一句ずつ解説と用例が載っているし、最後には丁寧に練習問題もついているから、読みやすい本には違いない。

ELLIPSES (2015/11/24)
言語 :フランス語
ISBN-13 :978-2340007574

2024年5月14日火曜日

E. M. Cioran "Histoire et Utopie" [歴史とユートピア]

Histoire et Utopie (Amazon.co.jp)

目次:1.遠方の友人への手紙 2.ロシアと自由のウイルス 3.暴君学校 4.怨恨のオデュセイア 5.ユートピアの機構 6.黄金時代

20世紀の中盤から後半にかけての基本的にパリ在住のルーマニア人哲学者だが、知っている人は少ないだろう。古い言い方で「カルト的な人気を誇る哲学者」みたいな感じ。基本的に暗いというか、書いていることが絶望的である。それもショーペンハウアーみたいな静かな絶望より遥かに攻撃的であり、人間性というものをひたすらこき下ろしている感じ。ショーペンハウアーはまだ諦観の中で静かに暮らそうとするスタンスだが、こいつはとにかく黙らない。

この本は一言でいえば、人間というものは根本的に腐っているので、ユートピアなんか構想しても無意味という話。時代背景もあり、終わっている共産主義とか不毛な西側みたいな話が多い。さらに過去を夢見るのも未来に理想社会を描くのも同じく無意味とか、要するに全部こき下ろしているだけ。どれがまだマシとかいう話すら出てこない。

あまり他人に勧めたくなる本ではない。最もついていけないのは、筆者が人類の一般的な性質として想定しているらしい嫉妬の感情の強烈さだ。ただ、例えば、人間は何の制約もなければみんな暴君になるというような考え方は分かる。善悪の問題ではなく、それはそうなんだろう。そして、そうでなければ社会も成立しないような気もする…にしても筆者みたいに人間を断罪しても何にもなりませんね…とかいくらでも考えることはある。

なんでこんな本を読んだのか理由は忘れたが、多分、反出生主義の流れで引っかかったんだと思う。ここのところ、アメリカの自己啓発書ばかり読んでいたが、ああいうのは今の社会を前提にしてその中で楽観的にせいぜい自分のセコい利益を図ることしか考えていない。この本は逆に悲観的というのを通り越して絶望的だが、遥かにスケールは大きい。たまにはこういう本で中和してバランスをとったほうが良いかもしれない。

Editions Gallimard (20 mai 1960)
Langue: Français
ISBN-13 : 978-2070214594

2024年5月7日火曜日

Hugh Newman "Goebekli Tepe and Karahan Tepe: The World's First Megaliths" [ギョベクリ・テペとカラハン・テペ:世界初の巨石遺跡]

Goebekli Tepe and Karahan Tepe (Amazon.co.jp)

遺跡シリーズだがこれは異色でトルコ。巨石にこだわっているようだ。やはり新石器時代という扱いだが、イギリスの遺跡より古い上に出土品が洗練されている気がする。まだ発掘途中らしいが、相当昔から人類はこんなことをしていたらしい。人類学などではよく言われることだが、根本的に労働力が余っていたんだろうか。

Wooden Books (2023/10/15)
言語 : 英語
ISBN-13: 978-1907155543

2024年4月18日木曜日

Hector McDonnell "Orkney: Megalithic Marvel of the Northern Isles" [オークニー:北部諸島の巨石遺跡]

Orkney (Amazon.co.jp)

オークニー諸島は歴史的政治的に色々ややこしいこともあったりするようだが、この本は基本的に新石器時代の墓に注力している。まあまあ有名な観光地らしいが、このシリーズにしては真面目な発掘調査報告書みたいな感じがある。ここに観光に行く時は、相当ヒマというか余裕があるというか、幸せな時だろうというような感じ。変な都会に行くよりいいかもなあ。

Wooden Books (2020/5/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263289

2024年4月12日金曜日

Mark Mills "Ancient English Cathedrals" [古代イギリスの大聖堂]

Ancient English Cathedrals (Amazon.co.jp)

イギリスの観光案内シリーズの一つ。アルファベット順に並んでいる。各聖堂の中のイラストと歴史など。一々色んな歴史があるものだ。イギリスの小説なんか読んでいると、教会でなくても古い邸宅に謎の地下室とか謎の歴史伝説が設定されているが、日本ではあったとしてもどうもドラマチックでない。あと、イラストで見る限りすべて広くて異常に天井が高いが、これで「瞑想に適している」は、わたしとしては無理がある。日本で言えばららぽくらいの商業施設の吹き抜けくらいの高さなんだろう。わたしも天井が高いのは好きだが、どう考えても空調が効かない。日本にも有名な建築家が建てた「光の教会」とかいう完全コンクリの教会が絶望的に寒くて有名だが、もしかすると教会というものは本質的にそうなのかもしれない。わたしは子供の頃は教会に通っていたこともあるし、今は週一くらいで寺に通っているが、天井が高いと言っても二階分くらいで、瞑想とかいうことなら、それくらいが妥当な気がする。建物の構造が瞑想の概念に影響しているかもしれない。

Wooden Books (2006/2/15)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263418

2024年4月11日木曜日

Michael Schneider "Proportion: In Art and Architecture" [芸術と建築の中の比率]

Proportion (Amazon.co.jp)

タイトルの通りの比率の図鑑。昔の数学の教科書に載っていたような、なんでもかんでも黄金比を当てはめている図よりは相当マシだが、本質はそういうこと。自然物ではなく設計された人工物の話なんで、説得力はある。にしても神奈川沖浪裏に線を引いているのは初めて見たが。正直わたしはあんまり感心しないが、面白いと思う人もいるんだろう。

Wooden Books (2022/11/1)
言語 : 英語
ISBN-13 :978-1907155482

2024年4月10日水曜日

Howard Crowhurst "Carnac: And Other Megalithic Sites in Southern Brittany" [カルナックと南ブルターニュの他の巨石遺跡]

Carnac(Amazon.co.jp)

Wooden Booksはたいていイギリスの遺跡を扱うが、これはフランス領らしく珍しい。しかし、内容はシリーズの他の本と同じくやはり遺跡の発掘調査報告書と謎の直線群と想像。これだけ読んでくると、だいたい全部同じに見えてくる。差が分かるほど詳しいわけでもない。この本もわたしも。

Wooden Books (2018/10/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263968

Philippa Lewis, Miles Thistlethwaite "Portals: Gates, Stiles, Windows, Bridges, & Other Crossings" [ポータル:門・踏み越し段・窓・橋とその他の横断]

Portals (Amazon.co.jp)

あまり見慣れないテーマだが、想定外に面白かった。要するに、二つの領域を往来できるようにする構造の図鑑。これだけ聞いても面白そうに思えないと思うが、馴染みがなさ過ぎて魅力が説明しにくい。もしかしたら建築系の人はこんなことを考えているのかもしれないなあ…というような考察が色々。たとえば15世紀~16世紀の本のタイトル頁にはよく門が描かれていて、読者を新しい未知の世界へといざなう、みたいな話は、なかなか掴まれる。良い本だった。

A fascinating little book.

Wooden Books (2016/8/31)
言語 : 英語
ISBN-13: 978-1904263944

2024年4月9日火曜日

Gerald Ponting "Callanish and Other Megalithic Sites of the Outer Hebrides" [カラニシュとアウターヘブリディーズの巨石遺跡]

Callanish (Amazon.co.jp)

イギリスにありがちな謎のモノリス遺跡の一つ。ストーンヘンジにも劣らない迫力に思えるが、観光地として少し不便なんだろうか。まあ行ったところで風景自体は「ふうん」にしかならないと思われるが…。やはり新石器時代の遺跡でよくわからないことが多い。謎の伝説やどこまで本当かわからない天文学との関係とかleyとかはこのシリーズの定例だ。もちろん観光に行くなら先に読んでおいたほうが良い。

出版社 : Wooden Books (2000/1/1)
言語 :英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1904263081

2024年4月5日金曜日

D.P. Sullivan "Leys: Secret Spirit Paths in Ancient Britain" [レイ:古代イギリスの秘密の霊的道]

Leys (Amazon.co.jp)

色々な謎が解けた一冊。Leyというのは適当な翻訳語がない。面白くない言い方をしてしまうが、疑似科学/pseudoarchaeologyの一種で、各地に散在する古代遺跡に、やたら直線を当てはめる趣味を指す。比較的近距離の単一の遺跡内の直線の場合もあれば、イギリス全土に散らばる遺跡群に直線近似みたいなことをする場合もある。最初の提唱者はそこまででもなかったようだが、幽霊だとかUFOが目撃された的な話が乗っかってきて、かなり楽しい世界が積み上がっているようだ。

というわけで、これまでWooden Booksのイギリス遺跡シリーズで出会ってきた説得力のない謎の直線にはこういう背景があったようだ。わたしもまあまあ疑似科学は好きだが、日本ではあまり聞いたことがない。開発の余地があるように思われる。地形的に直線を引きにくいのだろうか。勉強になった。

Wooden Books (2005/10/25)
言語: 英語
ISBN-13 :978-1904263388

2024年4月4日木曜日

Nick Maggiulli "Just Keep Buying: Proven ways to save money and build your wealth" [ただ買い続けろ:節約して富を築く方法]

Just Keep Buying (Amazon.co.jp)

普通の個人向け資産構築ガイド本で、似たような本は米国にも日本にも山のようにある。数値例がやたら多いのが特徴だが、要はS&P500をひたすら買ってろというようなことで、近頃はそんな話ばかりだし、今更新情報はない。普通に山崎元さんの本でも読んでいれば、実用的にはそっちのほうが上位互換なのではなかろうか。そっちは読んでないから知らんけど。

ただいくつか考えることはある。一つはFIREに対する考え方で、「退職=世界にとって自分がどうでもいい存在であることを認めること=結構な精神的打撃」というクダリだ。そうかもなあと思う。しかし、冷静に考えると、社会に何も貢献していないという意味ではわたしは既に退職しているようなものだ。ではわたしには関係ない気もする。人間の脳というのはある程度ストレスとか嫌なことがある前提で進化してきているので、出勤とかいう概念もなく完全に平和に暮らすのは不健康なのかもしれないとかも考える。

幸福のバスタブ曲線の話。世界のどこのどんな状況のどんな文化でも、幸福度は20代半ばから50代までが最低という有名な話で。本書は情緒的に説明しているし、他にも色々な説を読んだことがあるが、わたしとしては単なる生理現象ではないかと思っている。単に加齢に伴うホルモンの変化のせいでは…。ともかく、理想と現実にギャップを感じて人は不幸になるし、成長もするし、社会を変えようとするんだろう。幸せになったら成長は終わりですよ。

金持ちが自分が金持ちということを感じていないという話。これは著者の体験談にリアリティを感じるというのは、わたしも似たような経験があるからだ。ただわたしの場合は社会性がないので周囲と比較する習慣がないし、その代わりに頻繁に統計データを見ているから、客観的な状況を見誤りにくい。

などと考えることはあったが、そんなに新情報も新考察もなく、上位互換みたいな本もほかにあるだろう。一応読んだから記録まで。

Harriman House Pub (2022/4/12)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-0857199713

2024年4月2日火曜日

Christina Martin "Sacred Springs" [聖なる泉]

Sacred Springs (Amazon.co.jp)

イギリスの各地にある泉の観光ガイドのようなもの。この泉という文化が日本と違い過ぎて、そこが勉強になる。多分日本の泉はほとんど温泉になってしまうし、そもそも水が豊富で井戸なんかどこでもある。イギリスではそんなことではないようだ。実際、西洋のおとぎ話にはやたら泉が出てくるし、インチキ西洋中世物語の類、例えばドラクエとかでも泉はやたら重要スポットみたいに扱われる。日本人にはない発想だ。ここに紹介されているような泉は一々いい感じの伝説などがついている。日本の温泉の弘法大師がどうたらみたいな話より少女趣味で良い。Dressing、つまりRPGのダンジョンの中にある泉みたいな敷石や枠や門などによる整備も日本で見たことがない。

関係ないけど、「ダンジョン」という現実には稀な構造がRPGの世界では普通なのにははっきりとした理由があり、世界初のコンピューターアドベンチャーゲームとされるADVENTに由来する。泉は少なくともダンジョンよりは現実にもよくあるようだ。

Wooden Books (2006/2/15)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263456