目次: 1.コミュニケーションとしての文化 2.動物における距離調整 3.動物における混雑と社会行動 4.空間の知覚:遠距離感覚器-目と耳と鼻 5.空間の知覚:近距離感覚器-肌と筋肉 6.視覚空間 7.知覚への導きとしての芸術 8.空間の言語 9.空間の人類学:組織化モデル 10.距離は人なり 11.異文化間文脈でのproxemics-ドイツ人とイギリス人とフランス人 12.異文化間文脈でのproxemics-日本とアラブ世界 13.都市と文化 14.proxemicsと人類の未来
"proxemics"という概念が提唱された本だが、翻訳が難しい。Wikipediaでは日本語で一応「近接学」という翻訳になっているが、多分中文の「空間行為学」のほうがマシだろう。簡単には、空間の知覚には人間の全感覚器が関与しており、しかも文化の差がかなり大きく、それを記述して解明していこうと試みる学問ということになるだろうか。著者は文化人類学者で、初版1966年ということで相当古いが、今でも主に建築学科の学生が読まされているらしい。確かに昔、近接心理学とかパーソナルスペースという概念をやたら語る人がいたのは、この本のせいだったんだろう。わりと生協の本屋とかでも原書も翻訳書も常に置いてあったし、昔から目には入っていたが、建築学にも文化人類学にもあまり興味がなく、タイトル的にも惹かれないので、ずっと手にしていなかった。
最近建築家の人がこの本に触れていたので、急に気になって読んでみたが、まあ確かに読んでよかった。最初のほうの動物の話はあまり興味がないが、特に日本庭園とか絵画における距離感の描き方の分析は勉強になった。日本庭園なんて、なんか無意味に気取った錦鯉を泳がせておく金持ち趣味くらいにしか思っていなかったが、本書によると、散歩して筋肉の動きなどで空間を感じるために設計され尽くされているらしい。画家の空間の描き方なんかも、言われてみればということが色々ある。この本を読んで、その場で自分のいる周りの空間を見渡すと、見え方が変わってくる。世界観が変わると言っても言い過ぎではないかもしれない…。
建築家の人は常にこういうことを考えているんだろうし、建築学の書棚にはこういう主題の本はほかにもいろいろあるのかもしれないけど、わたしとしては斬新な考察だった。やっぱり色々興味なさそうな分野の本も読んでみるものだ、という感想。
I do not know much about this field, namely "proxemics", architecture or cultural anthoropology, but I found this book is fascinating. Nobody can escape from influencies of proxemics.
Anchor(1990/10/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-0385084765
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