2019年8月24日土曜日

Jamie A. Davies "Synthetic Biology: A Very Short Introduction" [合成生物学:非常に短い入門]

目次:1.生物学:分析から合成へ 2.合成生物学はどのように為されるか 3.合成生物学と環境 4.合成生物学と保健 5.工学のための合成生物学 6.基礎研究のための合成生物学 7.生命を創ること 8.文化的影響

これもなかなか楽しい本だった。"Genomics: A Very Short Introduction"と対になるような本で、Genomicsのほうは基本的にDNAを読むだけだが、こっちはDNAを書いたり編集したりしている。ただ、読むほうの技術に関しても、こっちの本のほうが分かりやすく書けている感じだ。前半はやはりDNAを編集する技術解説をしているが、後半は好き勝手に生物を改変している。自己修復する建物くらいならともかく、勝手に生えてくる建物とかやりたい放題で楽しい。こういう話が日本語で説明されると、改造人間とかバイオハザードとかグロテスクなほうに強調されがちだが、そういうのと比較すると、この本はネガティブな面がunderplayされているような気もする。一応最後に取ってつけたように倫理問題なども論じられているが…。この辺りは宗教の違いも感じるところだ。わたしの感覚では適当なたんぱく質を組み合わせて生物を作れたらもうそれで生物を作ったと言っていいような気がするが、一切生物に由来しない無機物から作って「生気」のようなものが生命にとって不要であることを証明しないと気が済まないらしい。

Hmm... DIY bio-tech would be my favorite hobby....

Oxford Univ Pr (2018/10/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198803492

2019年8月17日土曜日

Margaux Motin "La Tectonique des plaques" [プレートテクトニクス]

相変わらず30女の生活ということだが、全く意外でもないが前作から離婚したらしく、シングルマザーの日記というようなことになり、絵はまあ上手いんだけど品はなく、いよいよサイバラ相当という…。まず30代シングルマザーという人種に興味があるかというところで結構選別されると思われ、この品の無さは著者が自分を良く描きすぎるせいかとも思うが、まあ、ちびまる子ちゃんを筆頭に女性マンガ家はみんなそうな気もするが、しかしたとえばPénélopé Bagieuにそんな印象はない。もっとも自分がシングルマザーで著者に共感できる立場ならこれくらいに描いてもらったほうが良いのかもしれないみたいな。ただ一つ、これは弁解不能だと思うが、一々英語が入ってくるのは、わりと色々な人のカンに障るのではないか。

Je ne veux pas lire l'anglais ici....It gets on my nerve.

Delcourt (8 mai 2013)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2756041957

2019年8月11日日曜日

Margaux Motin "La théorie de la contorsion" [ひねりの理論]

前作に比べて絵は見やすい。要するに30女(夫娘あり)の日記ということに変わりはなく、別に面白いことも言っていないが、こういう人の主観を体験する価値があるというような。下ネタも普通に生活の当然の分量は入っている。一つ、考えたら今時は筆記体を読めない人のほうが日本でも多いかも知れない。自分でも筆記体でサラサラ書くわたしでも時々読みにくいくらいで。

Comme ci comme ça.

Marabout (22 septembre 2010)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2501063876

2019年8月10日土曜日

Margaux Motin "J'aurais adoré être ethnologue" [民族学者になりたかった]

30女の日常というマンガ。一コマ集に近く、特にストーリーはない。あんまり笑えないし、品格は西原理恵子相当というところで、絵は嫌いではないが字が汚いというような。ただ、題材が面白いというか、珍しいということがあり、意外に30女の視点というのは世間的に取り上げられていないのか、単にあまりわたしの目に留まっていないだけなのか。フランスでもPénélope Bagieuのコピーみたいな言われ方をされたりして、30代女の生活ということでは "Ma vie est tout à fait fascinante"も同じだが、こっちは既に夫と娘がいる。そのせいかどうか、より下品というか、こっちのほうが実態なのかもしれない。ただ、下品とは言うものの、フランスというだけでお洒落に見えるムキもあると思われ、翻訳したら一定数売れるとは思う。

La vie d'une femme de 30 ans....

Marabout (13 mai 2009)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2501061636

2019年8月8日木曜日

John Archibald "Genomics: A Very Short Introduction" [ゲノム学:非常に短い入門]

目次:1.ゲノム学とは何か 2.生命の本をどう読むか 3.遺伝子とゲノムの理解 4.生物学と医学の中の人ゲノム 5.進化ゲノム学 6.ゲノム学と微生物の世界 7.ゲノム学の未来

これは中々熱い本だった。前半はどうやってDNAのヌクレオチド配列を読むかの技術的な説明。この本は難しいという評判だが、恐らくこの部分で引っかかるのだろう。少なくとも高校の生物の教科書に書いてある程度の細胞の構造くらいは知っていないと厳しい。とは言え、高校生でも理解できる話だと思うがなあ…。実際のところ、DNAの二重螺旋を剥がして端から読んでいくのがそんなに簡単なはずがないが、あまり具体的な方法の説明は聞いたことがなかった。しかし、これこそがゲノム解析/工学の基幹となる技術であり、ここをスキップすることはできない。

後半は具体的な各種応用分野の解説。結構面白い話が山積みだった。まさに無限に未踏の世界が広がっている感じだ。例えば海苔を消化できるのは日本人だけとかアルゼンチン人が遺伝子レベルで砒素に強いとかどうだろうか。人類の進化のクダリも面白かったし、ウイルスとか微生物の話は常に面白いし、全体的に退屈な部分はなかった気がする。この方向、個人で何かできるわけではないが、少し読書を進めていこうかと思う。

A very exciting field.

Oxford Univ Pr (2018/5/22)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198786207

Jeff Kinney "Diary of an Awesome Friendly Kid" [素晴らしくフレンドリーな子供の日記]

たまたま本屋で見かけて気が付いて買ったが、"Diary of a Wimpy Kid"のスピンオフ企画。副題は"Rowley Jefferson's Journal"で、Gregの友達のRowleyの日記という体裁。日本語訳が出ていないが、ここまでずっとほぼ同時に翻訳を出しているのだから、出さない意味が分からない。まあ、児童書というわりに、教育上よろしい本かどうか疑問だが…。もう十年以上続いているシリーズだが、すぐに読めるので初巻から読み始めてもすぐに追いつく。英語学習者にもお勧めしている。

この巻は一応RowleyがGregの伝記を書くという体裁になっていて、何かイベントがあるというより日常の細々した話の集積。だいたいRowleyはGregより一段頭が悪い善良な子という設定だから、たいていがGregの悪行の描写になり、我々はRowleyをお人好し=良い奴と認識するが、どうもアメリカ人的にはお人好し=バカという認識で、Gregがヒーローみたいなことになるらしい。このあたりにドラえもんがアメリカで流行らない理由があるのだろう。彼らにとってはジャイアンこそがヒーローであり、それを卑怯なのび太がやっつけている図になって全然痛快ではないのだろう。従って連中はこの本についてはずる賢いGregのほうに感情移入するらしい。

しかし、わたしとしてはこの図ではRowleyのほうがわたしに近く、どうもRowleyが可哀そうというか、冗談が過ぎて笑えないところがあるのはこのシリーズの通例ではあるが。だいたいこのシリーズは、洋物には珍しく意識低い系クズ人間を主人公にした点が画期的なのであり、頭が悪いだけで善良なRowleyが迫害されるのはどうかと思う。彼もやられっぱなしではないので、その点は少し安心だが。色々思うことはあるが、ほとんどの人は特に気になることもなく楽しめるんだろう。

Well, I am rather on Rowley's side.

Harry N. Abrams (2019/4/9)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1419740275