2018年2月22日木曜日

Emmanuel Guibert "Va & vient" [行ったり来たり]

フランスのマンガ、いわゆるBDと言っていいんだろう。ハイセンスかつシンプルな絵で非常に短く、かなり感銘を受けたけど、ネタバレせずに紹介するのが難しい。一コマごとについているフランス語の文も短くシンプルで、初学者でも理解可能だろう。というか、全くフランス語ができなくても、意味を推定できるかもしれない。短いながら三部構成と考えられ、最初、シュールなコントでも始まるのかと思ったら、第二部でエロくなり、なんだこれはと思ったら、第三部できちんと話が収束する。こういうのは、やはり第二部から前後を考えているのだろうか。さらっとエロを描いているところは、やっぱりフランスだと思うが、よく考えるとただの下品な下ネタのような気もする。BDの常で絵の質だけは大丈夫だ。日本で翻訳出版するなら、そのままの体裁で、フランス語もそのままで、最後のページに小さく翻訳文をまとめて載せておく感じだろう。一つだけヒントとして、このタイトルも第一部・第二部・第三部にそれぞれ異なる状況で出てくるが、第二部では性的な意味になるわけで…。

Je ne sais plus quoi dire...

L'Association (22 mars 2005)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2844141699

2018年2月11日日曜日

Robert Jones "Branding: A Very Short Introduction" [ブランド:非常に短い入門]

目次:1.ブランドの勝利 2.ブランドとは何か 3.ブランドの歴史 4.ブランドはどのように作用するか 5.ブランドビジネス 6.ブランド事業 7.ブランドの倫理 8.ブランドの未来?

ブランドをめぐる商売、特に広告業界のあれこれ。類書と違うのは、ブランドが客に対してもつ効果のほか、従業員に対してもつ効果についても紙幅をさいている。自社製品に自信があるなら、製品に自社名を明示するはず、と考えるので、わたしも元々ブランド品には興味があった。たとえばIntel Insideみたいな広告はこの範疇だが、この本が考えるブランドは、そういう古典的な枠を超えて、漠然としたイメージ、例えばHonda="The Power of Dreams"とか雰囲気的なところに中心がある。

LVMHみたいな高級ブランドでなくても、ブランド商売の裏側を見るのは勉強になる。折しも某区立小学校の標準服がアルマーニに監修されたとかで問題になっている。この小学校が銀座というそれ自体がブランドみたいな場所にあるわけで、校長がバカで、制服もブランド品にしたかったのだろう。個人的には、銀座の路面店はアルマーニ以外にもっといい趣味の店もあるし、是非ユニクロに監修してもらうべきだった。このように、消費者もムダにブランドに振り回されているので、業界の裏側をこの本で知っておくのは自衛のためにも重要だ。特段衒学的なところもなく、気軽に読める本だ。就職活動にも会社のブランドが影響する、というのはこの本の中心的な主張の一つだが、特にブランド性の高い会社や広告業界に就職する学生は読む価値がありそうだ。

それはそれとして、この本を読んだ収穫の一つは、Superdryという世界的なブランドを知ったことだった。日本に触発されたデザインが売りとかで、商品にはJapanとか書いてあったりするが、実際には製造元は日本と全く関係がなく、というか、日本人はそんなブランドを知りもしないし、書いてある日本語はほとんどデタラメだし、謎の簡体字だったりするが、日本以外の全世界で売れているらしい。本書の説明では、ハーゲンダッツが北欧と何も関係がないように、Superdryも日本と何も関係がないが、ブランドというものは雰囲気なので、それで成立しているらしい。面白過ぎるし、高級ブランドには違いないし、物自体はしっかりしているから、早速発注した。

I am a native Japanese speaker and I have never heard of the brand "Superdry". Japanese letters on their products are pretty bizzare but they have strangely ironical appeal to me. Their strange Japanese letterings might irritate some Japanese people, but I find that very amusing.

Oxford Univ Pr (2017/8/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198749912

2018年2月8日木曜日

Charles Forsman,‎ Max de Radiguès "Hobo Mom" [流浪の母]

フランスのマンガ、いわゆるBDの中でも薄いので、気軽に手に取って読んでしまった。内容はというと、マンガ本体にはあまり説明がなく、最初に書いてあるhoboの説明を読まないと分からない。要するに、放浪癖があって適当にブラブラしながら働いている人が結構世の中にはいて、この主人公はたまたまママで、昔の男と子供のところに戻ってきてまた去っていくというだけのことらしい。何か起こるのかと思って読んでいたが、ただそれだけのことで、細かい事情も分からないが、何となく詩情を感じてくれということのようだ。カリフォルニアとか言っているので舞台はアメリカなんだろう。フランス人の考えるアメリカの風情なのか。わたしはというと、この方面の繊細さが欠けているので、何コマかのエロシーンが記憶に残った。放浪するママも性欲は普通にあるらしい。絵はシンプルで良い。BDにありがちな描き込み過ぎて読むのがしんどいのとは真逆で、日本のマンガに近い。フランス語も易しい。

Très sympa. Simple.

L'employé du Moi (16 septembre 2015)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2390040101

2018年2月6日火曜日

James Young "A Technique for Producing Ideas" [アイデアを生み出す為の技法]

「アイデアのつくり方」という訳書も出ている。非常に短いので一瞬で読めるし、ここで解説する意味もないくらいだ。古い本で、広告業界では古典なんだろう。何でも知って置けとか京大カード的な道具を使えとか、思考の整理術的なことが書いてある。その類の本を読んだことのある人にとっては目新しいことはない。というか、この本がその類の本の原典らしい。わたしとしては、自分が創造的な人間だとも思っていないし、アイデアマンを職人の上位に置く思想に対して共感もしていない。カードで整理みたいなことは、今ならマインドマップみたいなことだと思うけど、まあ、何でも描いてみることはいいことだ。そういうことならDraw to Winはとても良い本だった。

A classic. Very short and easy to read.

Stellar Editions (2016/3/4)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1987817461

2018年2月4日日曜日

Pénélope Bagieu "Ma vie est tout à fait fascinante" [わたしの生活は全く素晴らしい]

30代独身女性の日常一コママンガ集。まあ他愛もない話だけど、30代独身女性の共感を得るのかもしれない。別にフランスも日本も変わらんと思う。翻訳したら売れるかも知れない。多分、フランス語原文とのバイリンガルで出版すれば、フランス語の学習者層に浸透すると思われる。こんなの、別に日本の漫画家でも描けそうなものだが、どうもお洒落である。なんでもそうだけど、日本人が同じことを描くと、もっと強いオチを要求されそうだ。

Très amusant.

Livre de Poche (2009/1/11)
言語: フランス語
ISBN-13: 978-2253131557