目次:1.メランコリアの非常に短い歴史 2.現代:鬱病の診断と分類 3.鬱病のリスクがあるのは誰か? 4.鬱病のモデル 5.治療の進化 6.現在の論争と未来の方向 7.現代社会における鬱病
ほぼ目次の通り、鬱病に関する色々な方面からの解説。1,2章は歴史。3章は疫学。4章は生理学や社会学や心理学などの様々な方向からの病気の原因のモデル化の概観。5章は抗鬱剤とか行動療法とか精神分析とか様々な治療。6章はたまに話題になる「本当に抗鬱剤に効果があるのか」とか代替療法などの概観。7章は鬱病の経済的効果など。
この本を手に取る人のかなりの部分が、自分または身近に鬱の人がいるということだと思うが、序文でも断られている通り、患者サイドにはあまり実用的な本ではない。どちらかというと病院や医療行政の関係者向きだろうか。実のところ、わたしも鬱にはかなり詳しく、知識としては、この本で改めて知ったということは少ない。しかし、入門書としては、いろいろな論点を取り上げていて適切だと思う。わたしが少し驚いたのは、著者がわりとマインドフルネスに期待をかけていることだった。
あと、わりと最近言われるようになったことで、行動療法などのセラピーが脳の構造を変化させるという点は改めて考えさせられる。あと、胎児や幼児期の環境が脳・内分泌器官の成長に影響するという点も個人的に気になるところだ。当たり前だが、脳というものは常に変化していないと機能しない。英単語一つ覚えるだけでも、それに対応して脳のどこかの構造が変化しているはずだ。幼児期にストレスに晒されているとコレチゾルの分泌が強化されるとか、いかにもありそうな話だ。しかし、大人になってからでも、学習によって脳の構造を変えられるというのは勇気づけられる話。
そういうことでは、ある程度鬱病に詳しいと自負する人でも、知識をアップデートするには良いのかもしれない。もちろん、遺伝もあるが、遺伝子が環境によってONになったりOFFになったりするというのも最近言われるようになってきたことだし、特に鬱病の人には希望を与える本かもしれない。
あと、全く関係ない話だが、何年か前にVSIから"Depression"というタイトルが出るという告知があって、Amazonで予約していたら、三年ぐらい待たされた挙句キャンセルされた。改めて企画した本だと思うが、あれは何だったんだろう。
Very good reading. What surprised me was that the authors seem to have a positive opinion for "mindfulness".
Oxford Univ Pr(2017/3/3)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0199558650
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