Oxford Univ Pr(2012/11/25)
ISBN-13: 978-0199606412
わたしの周りでは数年ほど前から特に国際機関関連で「ガバナンス」という言葉が流行りだし、ちょうどVSIで出たので読んでみた。結論から言うと、研究分野としては「面白いテーマではあるが深入りしたくない」というようなことだが、身の周りについて考えてみると、多分、誰でも思い当たる節があるし、誰でも色々考えることがありそうだ。わたしも自分の業界について色々考える材料ができた。というわけで、これはVery Short Introductionで読むのが最適なテーマである。
わたしの理解した限りで「ガバナンス」とは何かを解説しよう。従来、学問の世界では、「統治」というものは、ヒエラルキー・権力・従属関係を前提に、法律・規則・命令などの強制手段によって行われるものということで研究されてきた。しかし、20世紀の終盤頃から、グローバリゼーションだとか新自由主義だとか小さな政府だとかで、ヒエラルキーよりも、市場やネットワークといった構造のほうが重視されるようになった。それに伴い、統治の方法も直接的な強制よりも、市場原理や個人間の交渉や暗黙のプレッシャーなどに重点が移されるようになった。この重点の移行を明示するために流行した言葉が"governance"である。
統治を市場原理に任せてしまうのは分かりやすい。やり過ぎて酷いことになっているのは新自由主義に流れた国ではどこも同じだ。ネットワークの統治の例を挙げると、食品安全基準を強制するのに、法律を使わずに、生産者を明示しない商品はヤバいというような社会的雰囲気を作り上げるとか、一つの問題に縦割り行政でなく官民多数の組織をオーバーラップに構わず協調して取り組むとか。良く言えば柔軟な対応だが、もちろん責任者が不明になる欠点もある云々。今書いたのはほんの一例だが、本書では、具体例として、特に、企業統治(特にCSR, Corporate Social Responsibility)・政府・国際問題の三分野を説明している。なかなか興味深い上に、誰でも自分の会社・業界について考える材料を得られるのではないかと思う。
A concise overview about "governance", which I have been hearing around since several years ago. Easy to read and provides lots of ideas which you can use in your field of specialty.
0 件のコメント:
コメントを投稿