Quantum Entanglement (Amazon.co.jp)
目次:1. 量子力学の負の空間 2. 哲学に挑む実験 3. もつれた光 4. 日常的な想定の厳密な矛盾 5. 相対論との和解 6. 直接観察が唯一の現実なのか
まずタイトルの説明自体が難しいが、要は量子力学の予測とそれを確認する実験において、常識的には考えられない結果が出ているという話。その実験で破られる常識とは、基本的に二つあり、①観察してもしなくても物体の状態は確定している(Realism: 実在論)②二つの物体が光速を越えて互いに影響することはない(Localism: 局所論)。特に後者については量子力学と相対論が矛盾すると言われるところだ。
マニアックな話だし、物理学でも工学でもそんなに中核的な話ではない…と思うが、世間でもたまに量子暗号とか量子テレポーテーションという話も出てくるし、状況自体は理解しておいて損はないと思う。ちなみにこの本自体はそんな応用的な話はない。ひたすら本質の説明だ。
著者としては、応用よりも現象の不思議さ(spooky)に注目しているようだが、実はわたしはそんなに不思議に思えないところもある。最後のほうに哲学的な話も出ているが、わたしの場合はQBismが自然に思えている。Higher Dimention解釈とか超決定論については、科学ってそういうのはなしでやってるわけですし…。
ともあれ、量子もつれについては日本語でも色々な解説があるが、わたしの知る限り最も懇切丁寧なのがこの本だ。と言っても、この本が言っていることを理解するのも簡単ではない。別にこの本を読むために量子力学のテクニカルな計算を理解している必要はないし、数学も必要がないが、純粋に論理構成が難しい。読むだけでなく、紙と鉛筆は用意して自分でパズルを解くようにしたほうがいいと思う。
The MIT Press (2020/2/18)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-0262538442
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