2024年5月28日火曜日

Laugh "Bender Heaven: The UK Traveller's Good Home Guide" [曲げ木天国:UK旅行者のための良い家案内]

Benderに適当な日本語訳がないが、本質的には適当な弾力を持つ木を曲げてUの字みたいにして両端を地面に埋めて、それを一定数並べて上から布をかけるとテントみたいになるというようなことだ。イラストは豊富に載っているから見ればすぐにわかる。最終的には薪ストーブをテント内に持ち込んで煙突が外に出ていたりする。さらにその周辺事情というかキャンプ術みたいなのも紹介されている。ものすごく楽しそうだし、ほとんどマンガのような気もする。イギリスでできる以上は日本でもできそうだが、実際には…と思ってしまうな。まず場所が問題で、日本でそんなことができるところというと山になり、山となると熊が出る。イギリスにはこんなことができる場所がそんなにあるのだろうか。多分、富豪の館の巨大な敷地の一角に、実はまっとうな建材を使ったそれっぽい物を作るのがせいぜいだと思う。それはそれで楽しそうだが。宿泊施設にするとバンガローと変わらないか。給水設備とかトイレとか考えだすと、どんどん夢が壊れていく。

A lovely little book. In reality, however, do not take it seriously. It is not so practical.

Wooden Books (2008/3/20)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263692

2024年5月20日月曜日

Glennie Kindred "A Hedgerow Cookbook" [生垣料理本]

A Hedgerow Cookbook (Amazon.co.jp)

簡単に言うと雑草料理本で、世間の評判はかなり良い。しかし実際に料理をしているというよりは、読んでいて楽しいということだろう。実際にこの本を参考にして料理をするとなると、まず、雑草の見分け方が全く書いていない。火を通すにしても、素人が雑草とかキノコを食べるというのは結構危険なことだと思うが…。あと、完成したレシピが載っているわけではなく、基本的な調理法しか書いていない。料理への応用は各自研究せよということらしい。そしてやはり同じ温帯でも日本とは少し植生が違う。わたしもまあまあ雑草が好きだが、やはり野草はアクが強い。参考にはなるが、ガチ勢には色々足りない本だ。

Wooden Books (2000/1/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263036

George Wingfield "Glastonbury: Isle of Avalon" [グラストンベリ:アヴァロンの島]

Glastonbury (Amazon.co.jp)

例によって事実上の観光案内だが、これが一番開き直っていて、普通に散歩コースまで載っている。アーサー王だのイエスが来ただの色々適当な伝説が積み重なっているが、ほぼ出鱈目だろう。古い町には違いない。象徴的な丘は確かに異様だが、実際には若草山くらいだろうか。

Wooden Books (2007/10/16)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263197

2024年5月18日土曜日

Eli Maor, Eugen Jost "Pentagons and Pentagrams: An Illustrated History " [五角形と五芒星: 図解歴史]

Pentagons and Pentagrams (Amazon.co.jp)

1. 五 2.φ 3. しかしそれは神聖なのか? 4. 正五角形を作図すること 5. 五芒星 6. 五角星 7. 敷き詰め 8. 結晶の中の五回対称性の発見 9. ああその五角形

目次から分かるような五角形に関するよもやま話。五角形というのが微妙にマイナーで、ちょうど一冊の本を書きやすいのかもしれない。内容的には日本の高校生くらいなら読めるが、考えないでさらさら読めるような本でもない。しかし、ここまで詳しく五角形について知りたい人も少ないような気もする。わたしはというと、折り紙で正多面体を作っている時に、正十二面体だけ異常に難しくて気になったという経緯。と言っても、直接折り紙に応用できるわけでもない。美術作品などに黄金比を発見するのを批判しているクダリは高く評価したい。五角形好きにはお勧めできる。というか実際この本くらいしかないかもしれない。

Princeton Univ Pr(2022/9/27)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-0691201122

Nicole Borelli, M. Jean-Marie Muracciole "150 expressions françaises illustrées et expliquées" [イラストと説明フランス語150の表現]

150 expressions françaises (Amazon.co.jp)

フランス語の慣用表現を150集めたもの。例えば表紙の絵は"être comme un poisson dans l'eau"。何語でもこの類の慣用句集はあるもので、現実にはそれほど頻繁に出会うわけではない。実際わたしもほとんど知らなかったし、今後も出会う気がしない。表紙にはB1-B2とあるが、実際にはC1レベルの試験対応というところじゃないだろうか。B1で読むのはしんどいかもしれない。実用的には試験対策以外に読む理由のない本の気がする。純粋に趣味で読む分には、一ページにつき一句ずつ解説と用例が載っているし、最後には丁寧に練習問題もついているから、読みやすい本には違いない。

ELLIPSES (2015/11/24)
言語 :フランス語
ISBN-13 :978-2340007574

2024年5月14日火曜日

E. M. Cioran "Histoire et Utopie" [歴史とユートピア]

Histoire et Utopie (Amazon.co.jp)

目次:1.遠方の友人への手紙 2.ロシアと自由のウイルス 3.暴君学校 4.怨恨のオデュセイア 5.ユートピアの機構 6.黄金時代

20世紀の中盤から後半にかけての基本的にパリ在住のルーマニア人哲学者だが、知っている人は少ないだろう。古い言い方で「カルト的な人気を誇る哲学者」みたいな感じ。基本的に暗いというか、書いていることが絶望的である。それもショーペンハウアーみたいな静かな絶望より遥かに攻撃的であり、人間性というものをひたすらこき下ろしている感じ。ショーペンハウアーはまだ諦観の中で静かに暮らそうとするスタンスだが、こいつはとにかく黙らない。

この本は一言でいえば、人間というものは根本的に腐っているので、ユートピアなんか構想しても無意味という話。時代背景もあり、終わっている共産主義とか不毛な西側みたいな話が多い。さらに過去を夢見るのも未来に理想社会を描くのも同じく無意味とか、要するに全部こき下ろしているだけ。どれがまだマシとかいう話すら出てこない。

あまり他人に勧めたくなる本ではない。最もついていけないのは、筆者が人類の一般的な性質として想定しているらしい嫉妬の感情の強烈さだ。ただ、例えば、人間は何の制約もなければみんな暴君になるというような考え方は分かる。善悪の問題ではなく、それはそうなんだろう。そして、そうでなければ社会も成立しないような気もする…にしても筆者みたいに人間を断罪しても何にもなりませんね…とかいくらでも考えることはある。

なんでこんな本を読んだのか理由は忘れたが、多分、反出生主義の流れで引っかかったんだと思う。ここのところ、アメリカの自己啓発書ばかり読んでいたが、ああいうのは今の社会を前提にしてその中で楽観的にせいぜい自分のセコい利益を図ることしか考えていない。この本は逆に悲観的というのを通り越して絶望的だが、遥かにスケールは大きい。たまにはこういう本で中和してバランスをとったほうが良いかもしれない。

Editions Gallimard (20 mai 1960)
Langue: Français
ISBN-13 : 978-2070214594

2024年5月7日火曜日

Hugh Newman "Goebekli Tepe and Karahan Tepe: The World's First Megaliths" [ギョベクリ・テペとカラハン・テペ:世界初の巨石遺跡]

Goebekli Tepe and Karahan Tepe (Amazon.co.jp)

遺跡シリーズだがこれは異色でトルコ。巨石にこだわっているようだ。やはり新石器時代という扱いだが、イギリスの遺跡より古い上に出土品が洗練されている気がする。まだ発掘途中らしいが、相当昔から人類はこんなことをしていたらしい。人類学などではよく言われることだが、根本的に労働力が余っていたんだろうか。

Wooden Books (2023/10/15)
言語 : 英語
ISBN-13: 978-1907155543