目次:1.CBTの行動学的起源 2.CBTにCをつけること 3.CBTの背後にある理論 4.CBTのスタイルと構造 5.CBTの方法 6.CBTの応用 7.将来の方向性と課題
心理療法と呼ばれる治療みたいなものは色々あって、人によって思い浮かべるものが区々だと思うけど、わたしの場合はまず1960年代くらいでアメリカで流行ったような精神分析だ。だいたい患者はほとんど寝ているみたいな楽な椅子に座っていて、精神分析医はその後ろでメモを取っているみたいな…。一時期はまともな上流階級の人間は週一くらいで精神分析セッションを受けているみたいな感じだったらしい。まあ、現代日本でもメンヘルとかいうライフスタイルが存在して、それに近いのかもしれないが。
精神分析は相当色々な文献を読んだが、結局あまり流行らなくなったし、わたしも興味を失ったというのは、話としては面白いんだけど、現実に治療効果が低いのと科学的根拠が無さすぎるからで。あと、薬も発達したし、フロイトがアクセスできなかった脳科学の知見も増えてしまった。フロイトの知見が全部無意味とは思わないが、わたしとしては、未だに精神分析がどうこう言っている人たちを、未だにマルクスを読んで有益な知見を絞り出そうとしている人たちと同じような目で見ている。酷い場合は精神症状は全部幼少期の性的虐待のせいみたいな本が売れて、大量の冤罪が生み出されたとか。
それとは対極にあるというか、それに反発したように出てきたのが行動主義で、ここから本書は始まる。心理学といっても科学的でなければならないということで、まず、目に見える行動以外は非科学的なので研究しないという心理学が出てきた。当然すぐに行き詰まり、やはりCつまり認知の要素も必要ということになって少し緩和されたようなことだ。
本書で語られる対象は、主に強迫神経症のようで、多くの場合、患者は、認知というか事実の解釈が間違っているらしい。例えば「心臓がどきどきする」というのを「死ぬかもしれない」と考えてしまう間違った信念があり、この信念が間違いであることを患者に体感させるのが目標らしい。どうも話が雑過ぎるし、そんな知的な説得で群衆恐怖症とかが治るんなら楽な話に思われるが、多分実際に効果があるんだろう。鬱病におけるnegative thinkingも対象として挙げられているが、とにかく主題は「患者の持っている間違った考えを訂正すること」であり、そんな話ならそう言えばいいだけで、どうもCBTの必要性が良く分からない。患者自身が実験して確認するというのが重視されているが、それにしても別にセラピストはいらないような…。実際最後のほうでは読書療法とか言い出して、CBTの本を読むだけでも効果があるとかいう話になっている。
要するに本書を読んでも、全体的にちょっとわたしにはピンとこない話だ。ただ、これはわたしがそういう問題に縁がないからで、医療の現場では少なくとも精神分析よりは治療成績がいいんだろう。最新の療法としてマインドフルネスを使うMCBTとかいうのも出てきて、もちろんマインドフルネス自体がそもそも心理療法なんだろうけど、そう思うと、全体的に自己啓発書に書いてあることみたいな話も多かった。もちろん自己啓発書のほうがCBTから知見を引用しているのだと思うが、一応科学的という意味で自己啓発書を読むよりこの本を読んだほうが良いかもしれない。ともあれ、CBTの概説書ではあるので、これから治療を受けるとか、そんな理由でどんなものか知りたければ読んで損はない。
An overview of CBT. Maybe CBT is very effective and practical for some sorts of psychological disorder, which I do not understand much, even after reading this book....
Oxford Univ Pr (2022/7/28)
言語 : 英語
ISBN-13: 978-0198755272
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