これは面白くて二日で読んだ。実際、何度も映画になり、翻訳もされている。マッドサイエンティストが脳を培養器に浮かべている、という古典的なホラーSFの絵を確立した名作だ。1943年の出版らしい。
ネタバレしない程度に言うと、脳を生体外で生かす研究をしている医者が、事故で偶然生きている人間の脳を盗み出すことに成功して培養器で研究し始める。テレパシーで脳の思考を読み取ることに成功するが、この脳が元富豪かつ極悪人で、そのうち医者の体を乗っ取って犯罪的なことをし始めるという…。
良く言えばハードボイルド、悪く言えば何の工夫もない文章で、最初のうちはそんなに面白くないような気もしたが、どんどん謎が深まっていく。謎というのは脳の構造の謎ではなくて、培養器の中の脳が科学者を操って何をしようとしているのかという謎で、そんなに複雑すぎることもなく、わたしでもついていける話だ。
基本的にはこの医者の日記という形式だが、この医者自体がそもそもサイコパスで、サイコパスの主観手記はそれだけで面白い。ただ、後半になると、脳のほうがそれを上回るサイコパスぶりを発揮し始めて、医者は邪悪な霊に体を乗っ取られた正常人みたいなスタンスになり、それはそれで面白いが、面白さの種類が変わっている。
この小説は、児童向けにも何度も翻訳されていて、わたしも小学生の頃一度読んだ記憶がある。翻訳というより翻案に近かったと思うが、今原作を読んだ感じのほうが面白い気がした。
The horror SF with the image of "a brain in a test tube".
ISBN-13 : 978-1584450788
Pulpless.Com Inc (1999/7/4)
言語: : 英語