2020年9月25日金曜日

Charles M. Schulz "The Complete Peanuts Vol. 20: 1989-1990" [Peanuts完全版1989-1990巻20]

Olaf登場。フロリダに住んでいるというSnoopy父登場。スヌーピーは8きょうだいということになっているが、別に作者が深く考えている風でもない。Charlie Brownはblondという情報。さらにPeggy Jean登場。また四コマに戻ったりしてコマ数が自由になっている。Beagle Scoutsの点呼で"Woodstock, Conrad, Fred, Raymond, Bill"となっている。少なくともWoodstockは常にいるし、Harrietは女の子だし、Raymondは黒いのだけは守られている。

Peanutsを全部読み終わったら町田のスヌーピーミュージアムに行くつもりだけど、この調子では来年の夏くらいになるだろう。

Keep enjoying.

ISBN-13 : 978-1782115175
出版社 : Canongate Books Ltd (2015/3/5)
言語: : 英語

2020年9月24日木曜日

David Benatar "Better Never to Have Been: The Harm Of Coming Into Existence" [生まれてこない方が良かった:存在してしまうことの害悪]

いわゆる反出生主義というと第一に挙がる本だが、一般人にとってはテクニカル過ぎるというか、倫理学内部の議論が大半なので、あまり一般には売れないのだろうと思う。

日本に関しては「生んでくれと頼んだ覚えはない」みたいな反抗期の子供か、「子供を作るような社会環境じゃないので生みません」みたいな実は自分の利害を基準にした言い草が反出生主義を名乗っている場合が多い。それはそれで無意味な主張とは思わないが、その点でこの著者の考えの特徴は①功利主義的②生む側の利害ではなくこれから生まれる側の利害が判断基準③どんな状況でも非存在が存在に勝るという三点にまとめられると思う。

従って部外者、特に日本人からすると前提条件が多すぎるかもしれない。「生まれてこないほうが良かったなあ」みたいな話は論理というより単純な詠嘆であり、その主張を正当化するためにキリスト教圏ではこれくらい論証する必要があるのかもしれないが、仏教圏ではこんなのは常識に過ぎない。インドでは輪廻を脱して存在を消滅させるのが昔からの究極目標だった。我々が普通に考えれば、「既に存在しているので善悪を論じても手遅れ」「悪いのならせめてこれ以上の再生産はやめよう」「他人が再生産するのは残念ながら阻止できない」くらいだろう。

筆者の基本的な構成は「子供を作るのは既に存在している人間の利益のためであり、これから存在させられる子供にとっては害でしかなく、自分の利益のために他人に害を為すのは悪である」ということになる。一歩進めれば、政府は出産を奨励するべきではないし、子供を産んでその子供を人質に取って政府に金品を要求するような行為は許されないことになる。こうなると多くの人は黙っていられなくなってくるだろう。とすると、やっぱり、現行の法体系というか倫理体系の中でこういう主張をするのは無意味ではない。

障害者がどうとか安楽死がどうとか妊娠中絶がどうとか大量の論点があるのは誰でも分ると思うが、ただわたしとしては、そこまで議論の詳細に興味を持てなかった。結局のところ人口の再生産は自然現象だし、日本人が減っていると言っても、いずれ減少は止まると思っている。縮小再生産は人間/生き物の本質に反する。いくら論証したところで、出産は祝われ続けるだろう。社会正義のシステムは出産が善である前提で構築されていて、作り直すのは困難だ。むしろ背理法的に筆者の拠って立つ根拠が否定される可能性のほうが高い。ただ、真剣に倫理学の枠内で議論したい人にとっては必読書のように思われる。

Obvious is obvious. What we need is a method through which we stop existing.

ISBN-13 : 978-0199549269
出版社 : Oxford University Press(2008/9/15)
言語: : 英語

2020年9月3日木曜日

Andrew C. Scott "Fire: A Very Short Introduction" [火:非常に短い入門]

目次:1.火の要素 2.火の深い歴史 3.火と人類 4.火を封じ消すこと 5.新しい技術と火政策 6.火と気候変動

例によって酷いタイトルだが、この本は基本的には森林や草原の自然火災と生態系との関係について語っている。なので、この"Fire"は「火災」と訳すべきなのかもしれないが、こんなタイトルを付けたために多少都市火災とか戦争における火とかも適当に触れられているくらい。日本語版を出す時はよくよくタイトルを考えたほうが良いと思うが、翻訳する価値があるというのは、こういう話を日本語の本でもその他の情報でもほとんど聞いたことがない。多分、環境運動家でもほとんど知らないのではないか。

なんでも自然火災は陸生植物が出現して以来普通のことらしく、それは古い地層の研究からも明らかだし、今でも人工衛星でそこら中の自然発火の森林火災・草原火災が普通にモニターされている。例えばアフリカのサバンナは以前は人類が森林破壊をしてサバンナになったと信じられていたが、実際には人類が出現するはるか前からサバンナで、森林になる前に定期的に火災でサバンナに戻されていた。そして生物も生態系も定期的に火事がある前提で進化してきており、環境保護のために消してはいけない山火事も多い。

とは言え、著者が詳しいらしいイギリスやアメリカ、オーストラリアなどでは、住宅をどんどん森の近くに建てる傾向があり、火災に対する対策も必要だ。この本を読んでいる間にもカリフォルニアで大火事があったが、日本ではもうドーナッツ化現象とかいう時代ではないが、アメリカは相変わらず郊外志向らしい。イギリスの場合は泥炭火災とかもあるらしく、対策も論じられている。

でその対策の一つとして昔ながらの伝統的な野焼きや焼き畑が結構推奨されていて、実際読んでいると有効というかそれしかないようにに思えるが、非科学的な環境保護運動家とかがヒステリックに反対するのだろう。大体そんなことだが、こういう話はあんまり聞いたことがなかった。

A book on the fire hazards and the ecology.

ISBN-13 : 978-0198830030
Oxford Univ Pr (2020/9/1)
言語: : 英語