2017年6月23日金曜日

Collins Dictionaries "Collins Easy Learning Spanish Grammar" [Collins簡単学習スペイン語文法]

スペイン語文法をコンパクトにまとめたもの。大学の第二外国語くらいならこれ一冊で十分かと思われる。"Collins Easy Learning xxx Grammar"は今までフランス語とドイツ語を読んでいるが、スペイン語も同じフォーマットで非常に良い。言語の文法って、大変なようで、要するにこの程度の話なのだ。参考書として使うのでも良いが、早いうちに通読してしまうのが良いと思う。

Read this book through when you have studied Spanish for a while. Of course you need to practice a lot, but the essentials of Spanish grammar is all here. It is not a big deal.

HarperCollins UK; 3版 (2016/7/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0008142018

John C. Maher "Multilingualism: A Very Short Introduction" [多言語使用:非常に短い入門]

目次:1.多言語世界 2.多言語使用を勧める理由 3.多言語使用、神話、論点 4.人々、言語、危険な物 5.個人の多言語使用:一つの心と多数の言語 6.政治、言語、国家 7.アイデンティティと文化 8.共通語、混合、人工言語 9.絶滅危惧言語

社会レベル・個人レベルでひたすら多言語使用を推奨する本。この著者の念頭にあるのは、単一言語環境に生きている単一言語しか話せない人間、要するに英語圏の英語話者なんだろう。

まず、多言語使用がどれほど普通のことであるかが説かれる。本書によると、世界人口の2/3が少なくとも二言語以上を話すらしい。従って、多言語使用が普通であることは、少なくとも世界人口の2/3にとっては周知の事実でしかないが、公用語自体が二言語以上ある国も含め、とにかく大量に例が挙げられる。さらには、こんな有名人もマルチリンガルだとか、マルチリンガルの子供のほうがモノリンガルの子供より学業成績が良いとか、多面的に物事を考えられるとか、果ては就職に有利とか、マルチリンガルの美点が大量に書き連ねられる。もちろん、我々は気分が良いが、モノリンガルの人が読んだら気を悪くしそうだ。

この件については"Translation"もそんな感じだったが、ちょっと引っかかる。もちろんわたしもマルチリンガルであるに越したことはないと思っているし、頑なに日本語とか英語しか話さない・方言すらバカにするような人種はバカにしているが、この本はマイナス面を明らかにdownplayしている。実際、多言語環境で育ってどの言語も十全でなく困っている子供もいるし、身の回りを見てもマルチリンガルを鼻にかけている種類の帰国子女はむしろ学業成績が低い。何より、著者は言語を習得するのに必要な労力について何も言わない。

後半は社会学的な記述が始まり、少しは厳しい現実が語られる。社会的に地位の高い言語も差別される言語もあるし、国家による強制もあるし、使用されている言語の数はどんどん減っている。しかし、ここでも筆者は基本的に明るい面を強調し、アイルランド語の復興とかエスペラントなどを肯定的に見ている。全体的に言えるのは、世界の言語情勢を客観的に解説する本というよりは、多言語使用を煽る本と言える。外国語を学習しようとする人には、良い動機づけになるだろう。個人的には、わたしも筆者にほぼ同意だし、さらには言語統制機関、日本で言えば国語審議会とかNHKアクセント辞典などに何の敬意も持っていないが、Oxford Universityという出版社にしては、煽り要素が強い気がした。

I am afraid that monolingual people would be offended reading this book. If you are a multilingual or are studying foreign languages other than your mother tongue, this book is for you.

Oxford Univ Pr (2017/6/22)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198724995

2017年6月20日火曜日

William Tardy "Easy Spanish Reader" [簡単なスペイン語読本]

目次:1.Enrique y María 2.Historia de México 3.Lazarillo de Tomes (Adaptacíon)

スペイン語の初級のリーダー。一通り文法を終えた後、一週間程度で読み終わった。アメリカの高校では三年かけて読むという話だが、そんな大層なものではない。第一章は、外国語の初級読本の定跡通り、金持ち高校生のリア充生活を読まされる。この点は少し引くが仕方がないだろう。第二章はメキシコの歴史の概説で、内容的にもなかなかしっかりしている。隣国のことだから、スペイン語を学ぶアメリカ人ならこれくらいは知っておくべきだろうか。第三章は16世紀の悪漢小説ということで、これも普通に面白い。メキシコの歴史が血塗られているし、第三章も始まりが陰惨なので少しうんざりしたが、最後まで読めば納得できた。

各節毎に簡単な設問があり、解答も巻末に完備している。特に先生がいなくても読んでいて退屈しない本だ。版によっては音声CDがついていたりするようだが、わたしの第二版にはついていなかった。ただ、もともとスペイン語の聞き取りで苦労したことがなく、この点についてはどうでもいいかと思っている。アメリカはもちろん、日本のスペイン語学習者にも割と広く読まれている本みたいなので、読むのにさして時間がかかるわけでもないし、読んで損はないだろう。多分、接続法が分からないくらいでも読めるんじゃないかと思う。本文横と巻末に単語の説明もあるし、辞書がなくても読めるくらいだった。

A very good introductory Spanish reader. After finished the grammar, I read this book through within a week.

McGraw-Hill Education; 3版 (2015/7/13)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0071850193

2017年6月4日日曜日

Antulio J., II Echevarria "Military Strategy: A Very Short Introduction"[軍事戦略:非常に短い入門]

目次:1.軍事戦略とは何か 2.絶滅と混乱 3.消耗と疲労 4.抑止と強要 5.テロとテロリズム 6.断頭と標的殺害 7.サイバー戦力と軍事戦略 8.なぜ軍事戦略が成功したり失敗したりするのか

目次に挙げられる概念を実例を用いて説明していく本。別に説明してもらわなくても語義から自明であるというようなものだが、それぞれの戦略の概要と実例と使用上の注意というところ。学問上、概念の明晰化自体に価値があるのかもしれないし、軍事に疎い政治学方面の人には有用なのかもしれない。逆に戦争、というか戦争ゲームに興味のある人には、ちと政治寄り過ぎて抽象度が高過ぎるだろう。ただ一つだけはっきり言えるのは、この本は、英語が非常に明快でスラスラ読める。英語力と世界史の大雑把な知識さえあれば、中学生でも理解できそうだ。この類の本としては割と珍しいと思われるが、暗殺やテロもしっかり戦略的に扱っている。

この類の洋書を読んでいて一つ残念なのは、古代中国の戦争へのアクセスが全くない点である。軍事戦略と言えば、古代中国に膨大な蓄積があるが、西洋の著者がほとんど言及しないのは、読者に馴染みがないから避けているというより、そもそも、著者も知らないのだろう。「孫子」だけは、この本でも頻繁に引用されるが…。

Explications of the strategic concepts such as annihilation, terrorism, etc..

Oxford Univ Pr (2017/2/6)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0199340132

2017年6月1日木曜日

H. G. Wells "The Time Machine" [タイム・マシン]

SFの古典。タイムマシンの発明者が西暦802701年の地球(というか自宅だった場所の近所)を探検してくる話。古典的名作として名高いし、古典ながら退屈なところもないし、英語も特に難しくないし、とても面白かった。特にSFに興味がなくても読む価値はある。

ウェルズの小説を読むのは宇宙戦争透明人間に次いで三冊目だが、一々考えさせられる要素がある。まず、タイムマシンの動作の描写だが、完全に映画の早送りと巻き戻しのイメージで考えられている。タイムマシンという概念が発明されるには、映画の発明が決定的だったのだろうか。ドラえもんのタイムマシンはそんなことになっていないし、浦島太郎のタイムスリップはただ時間が経つだけで文明が進歩したりしていない。

それはそれとして、わたしとしては、苦痛のない世界に生きているとバカになるという説に大いに頷いた。VSIの何かで、「猫は安楽に生きているので、厳しい環境で生きているネズミに比べてバカ過ぎて実験に使えない」と書いてあったが、実際そうなのだろう。わたしの周りにもお金持ちの子女でWeenaみたいな容姿も性格もスゴくいいがバカという連中もいたし、不登校で親にも責められず安楽に暮らしている子供は、やはり性格は良いんだけど歳のわりに異様に幼かったりするし…。やはり智慧が発達するには、ある程度不条理あるいは不当に厳しい環境が必要なのかもしれないと思ったりした。と言っても、わたしが育った環境を是とはできないが…。仏教では天上界なんかに生まれると幸せ過ぎて道を求める気を起こさないとも言う…。わたしもここ数年は安楽に暮らし過ぎている気配があり…。そして下層階級は、ここまで酷くなくても、やはり下層階級である。要するに個人的に思い当たるフシが多すぎる。

この小説の最も人気のある論点は格差社会の最終結果というところだが、特に西ヨーロッパの階級社会は昔も今もこの話はフィクションではないのだろう。最後のほうで更に人類滅亡後と思しき未来に進むのは、一瞬蛇足感があったが、作者としては、人類の未来よりもっと大きな世界を描きたかったのだろう。まあ、80万年後があんなことになっているのなら、人類は滅亡したほうが良いだろう。そう考えると、結局、現代は奇跡的に素晴らしい時代なのかもしれない、などと思ったりした。

This classic novel offers very profound insights into the human nature. Not just an amazing imagination.

Heinemann (1970/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0435120092