2017年6月1日木曜日

H. G. Wells "The Time Machine" [タイム・マシン]

SFの古典。タイムマシンの発明者が西暦802701年の地球(というか自宅だった場所の近所)を探検してくる話。古典的名作として名高いし、古典ながら退屈なところもないし、英語も特に難しくないし、とても面白かった。特にSFに興味がなくても読む価値はある。

ウェルズの小説を読むのは宇宙戦争透明人間に次いで三冊目だが、一々考えさせられる要素がある。まず、タイムマシンの動作の描写だが、完全に映画の早送りと巻き戻しのイメージで考えられている。タイムマシンという概念が発明されるには、映画の発明が決定的だったのだろうか。ドラえもんのタイムマシンはそんなことになっていないし、浦島太郎のタイムスリップはただ時間が経つだけで文明が進歩したりしていない。

それはそれとして、わたしとしては、苦痛のない世界に生きているとバカになるという説に大いに頷いた。VSIの何かで、「猫は安楽に生きているので、厳しい環境で生きているネズミに比べてバカ過ぎて実験に使えない」と書いてあったが、実際そうなのだろう。わたしの周りにもお金持ちの子女でWeenaみたいな容姿も性格もスゴくいいがバカという連中もいたし、不登校で親にも責められず安楽に暮らしている子供は、やはり性格は良いんだけど歳のわりに異様に幼かったりするし…。やはり智慧が発達するには、ある程度不条理あるいは不当に厳しい環境が必要なのかもしれないと思ったりした。と言っても、わたしが育った環境を是とはできないが…。仏教では天上界なんかに生まれると幸せ過ぎて道を求める気を起こさないとも言う…。わたしもここ数年は安楽に暮らし過ぎている気配があり…。そして下層階級は、ここまで酷くなくても、やはり下層階級である。要するに個人的に思い当たるフシが多すぎる。

この小説の最も人気のある論点は格差社会の最終結果というところだが、特に西ヨーロッパの階級社会は昔も今もこの話はフィクションではないのだろう。最後のほうで更に人類滅亡後と思しき未来に進むのは、一瞬蛇足感があったが、作者としては、人類の未来よりもっと大きな世界を描きたかったのだろう。まあ、80万年後があんなことになっているのなら、人類は滅亡したほうが良いだろう。そう考えると、結局、現代は奇跡的に素晴らしい時代なのかもしれない、などと思ったりした。

This classic novel offers very profound insights into the human nature. Not just an amazing imagination.

Heinemann (1970/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0435120092

0 件のコメント:

コメントを投稿