2015年7月21日火曜日

Pierre Carbone "Les bibliothèque" (Que sais-je?)[図書館(クセジュ)]

目次
  1. 現実世界の中の図書館
  2. 媒体の経済の中の図書館
  3. 組織の管理の中の図書館
  4. 資産の保存と価値付け
  5. 文化の発展
  6. 教育と訓練の支援
  7. 研究と調査
  8. 情報と資料収集
  9. 図書館間の協力
  10. デジタル図書館
  11. 電子資料と図書館コンソーシアム
  12. オンラインサービス

基本的にはフランスの図書館界隈の現状をQue sais-je?にありがちな淡々とした調子で叙述している。ここ十年くらいの図書館業界は色々な混乱があるが、基本的にはIT革命、つまりネットとデジタル化(numérisations)に巻き込まれているということで、混乱が収束するまでまだ後十年はかかるだろう。もちろん、一時期の「小さな政府」みたいなこともあって、日本なんかは民営化も進んでいるが、フランスはわりとこの波に抵抗できたようだ。著作権への対応なども日本と随分違うが、今後の日本の図書館業界には、色々参考になることもあるのではなかろうか。特に深い考察や今後の指針が示されているわけではないが、フランスの図書館事情をコンパクトにまとめた一冊である。
それはそれとして、こういう本は翻訳すれば一定数売れるに決まっているように思うのだが。フランスの図書館事情を解説している本なんてほとんど出ていないのだし、最低でも日本にある図書館は各館一冊ずつは買うだろうし、志のある図書館員や司書課程の学生と教員も買うだろう。出版業界の人間も買うだろうし、情報科学界隈でも売れそうである。簡単に一万部くらい出そうな気がするが、甘いのかな。
Une bonne introduction pour les bibliothèque en France./
PRESSES UNIVERSITAIRES DE FRANCE - PUF(14 septembre 2012)
ISBN-13: 978-2130594550
フランス語

2015年7月14日火曜日

Frank Close "Nuclear Physics: A Very Short Introduction" [核物理学:非常に短い入門]

目次
  1. 大聖堂の中の蠅
  2. 核化学
  3. 強い力
  4. 奇数と偶数と殻
  5. 核の生成と崩壊
  6. 周期表を越えて
  7. 特異原子核
  8. 応用核物理

核物理学の概説。わたしとしては分かりきっている部分もあったが(特に化学とか星の中の反応)、多分、核子以下の水準での物理学の概説書としては、なかなかこれ以上の本も少ないのではないかと思う。というのも、化学の水準ならそこまで降りる必要がないし、核物理学自体、日本でも世界でもあまり人気の学科でもない・・・。個人的には明日MRI(著者はNMRと呼びたいようだ)の検査を受けることになっているので、ムダにタイムリーである。放射線を扱う人の他、化学系の人の基礎教養にも良いのではなかろうか。VSI随一の名著"Particle Physics"の著者でもあり、安心だ。この本の最後はなかなか酷い名言で締めくくられているが、是非最後まで読んで呆れて頂きたい。
本書中にも書いてあるが、VSIには本書と"Particle Physics"のほかにも核物理学関連の本があり、いずれも面白い。
  • "Nuclear Power"・・・原子力発電の色々な技術を解説。
  • "Nuclear Weapon"・・・これはどっちかというと政治が重い。
  • "Radioactivity"・・・放射線利用の概説。

Oxford Univ Pr (2015/10)
ISBN-13: 978-0198718635