ほぼタイトル通り、世界の様々な織物の種類や作成方法の図解であり、工学的な興味も大きいが、神話や民俗風習との関わりを文学的に解説している部分が大きい。いきなり、世界樹イグドラシルのウルド・ヴェルダンディ・スクルドから始まっているし、織姫も鶴の恩返しも出てくる。これを読んでもアパレル業界的な意味で特に役立つわけでもないし、「布に詳しい人」になるわけでもないが、それでも万人にお勧めできる。
というのは、この程度の紡績や機織りの仕組みは、ごく最近まで人類の全員が常識として熟知していたはずなのである。織機を見たことがないなどという人間は皆無だったに違いない。織らない民族は多分ないし、織物に神話的意味を見出さない民族もない。神話はもちろん、古典文学も、織物の仕組みが分かっていなければ理解できない個所は多数ある。そして、バベッジは織機からコンピュータを発明した。状況は恐らく簿記や歌舞伎に似ていて、実は日常語彙に徹底的に浸透しているが、その語源を誰も認識していないだけなのだ。
というわけで、恐らく類書も少なく、日本文化への言及も多いこの本がなぜ和訳されていないのか不可解だが、このシリーズとしては当りと言える。翻訳出版をお勧めしたい。更に本格的な布の研究書を読みたくなってきた。
A very cute book. Weaving is a traditional art and I believe that until fairly recently, all human beings, especially women, know these techniques very well. So if you want to understand classic literature you have to be acquainted with weaving. This book is an ideal introduction.
Wooden Books (2007/2/14)
ISBN-13: 978-1904263555
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