アメリカ連邦最高裁判所の概説。ただ、法学部的な意味での入門書ではなく、歴史とか、司法府と行政府・立法府とのせめぎ合いとか、最高裁裁判官の指名問題とか、世論との関係とか、基本的には政治的な面の解説だ。従って、そもそもアメリカの裁判制度とか、アメリカ法の体系とかがどうなっているのか知らない人は、多少勉強してから読んだほうが良い。日本では、こういうことはほとんど問題にならないので、面食らうかもしれない。
アメリカは行政府でも猟官制だし、司法府でも、裁判官の任命に当っては、下級裁判所でも一々共和党派か民主党派かで問題になる。結局、日本では、裁判官は中立な立場で法を解釈するという建前が、割と額面通り信用されているところがあり、本当はウソなんだろうと思うが、かといって、このアメリカモデルもどんなもんなんだろうか。たとえば、「妊娠中絶の選択は女性が単独で決定できる」というのが憲法違反かどうかというのは、少なくともアメリカでは明白に政治問題で、裁判官を民主党が指名するか共和党が指名するかは大問題になる。日本ではそれほどでなくても、それまでのそいつの判決記録を辿れば傾向は見えるはずだし、本当は調べるべきなんだろう。こんなのは純粋な法解釈というより、世間の空気を読むとか、個人の信念とかの問題のほうが大きい。
というような話が多く、最高裁がどのように粛々と業務を行っているのかという説明は少ない。生々しい現実ではあるが、法学部生のように現実を無視して黙々とアメリカの法体系やら司法制度を学びたいということなら、この本は違う。むしろ、ジャーナリスティックな本だ。
Not recommended for those who want to study the American legal systems seriously, in other words, irrespective of the reality. This book is rather realistic and journalistic. In japan, people rarely talk about this sort of issues, because we believe naively that justices interpret and apply laws neutrally. I suspect that in Japan justices tend to be influenced by general public opinions more than in the U.S.... This book is very illuminating for us.
0 件のコメント:
コメントを投稿