A Crash Course on Crises (Amazon.co.jp)
目次:1. 導入 2. バブルと信念 3. 資本流入とその(誤)配分 4. 銀行とその仲間たち 5. システムリスク・増幅・伝染 6. 支払い能力と流動性 7. 民間部門と公共部門の関係 8. 安全資産への逃避 9. 為替レート政策と回復速度 10. 新しい伝統的金融政策 11. 財政政策と実質金利 12. 結論
金融危機に関する10の考え方(2-11章)をまとめたもの。予備知識として経済学部で最初に教科書で学ぶ程度の知識は必要かと思われる。というか、教科書は正常な状態の金融経済の説明が主で、金融危機みたいな異常事態には深入りしていない。その部分を補完するような本で、それ自体面白いし、正常時の金融理論の理解も深まる。2-11章の各章はそれぞれ考え方の説明と実例から成る。
2...バブルと分かっていてもバブルに乗らざるを得ないことのゲーム理論ぽい考え方。
3...何らかの理由で生産性の低い部門に資源が優先配分されてしまうことによる経済低迷。
4...影の銀行によるリスク増大。
5...現代の銀行が他行を模倣することによるリスクの増大。
6...債務超過と単なる流動性不足の区別をすることの難しさ。
7...国が銀行を保証するが、その銀行が国債を保有していることによる悪循環。
8...安全資産の自己成就的性質による危機増幅。
9...負債が外貨建てで資産が自国通貨である場合の為替によるダメージ。
10...準備の飽和・量的緩和・イールドカーブコントロールとか要は日銀がやっていること。
11...危機時の財政出動に関する最新の見解。
改めて見直すと、一つ一つは別に新しくないが、整理されていて分かりやすい。それぞれの項目について原理的な説明と実例のセットというフォーマットも簡単で良い。専門家から見れば実態を単純化し過ぎということかもしれないが、基本的な「経済学論法」の学習という意味もある。
出版社 : Princeton Univ Pr (2023/6/6)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-0691221106
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