2024年12月22日日曜日

Howard J. Herzog "Carbon Capture" [炭素捕獲]

 Carbon Capture (Amazon.co.jp)

目次:1. 気候変動 2. 化石燃料 3. 炭素捕獲 4. 炭素貯留と利用 5. 実際の炭素捕獲 6. 負の排出 7. 政策と政治 8. 未来

タイトルの意味が分からない人が多いと思うが、要するに主に排気ガスから二酸化炭素を抽出して、大気中に放出せずにどこかに貯蔵する技術の解説。現実的には主に火力発電所やセメント工場などの煙道ガスからSOx・NOxなどを取り除いた後で吸収塔で二酸化炭素を吸収し、吸収した二酸化炭素は分離して地層処分することになる。初心者でも読めることになっているが、予備知識として基本的な化学工業の知識の他、火力発電所の仕組みを概念的にでも把握している必要があるだろう。

…と言っただけで、普通の人は色々な疑問が湧くのではないかと思う。①地面にCO2みたいな気体を埋めても漏れてくるんじゃないかとか、②CO2みたいな不活性な物質を分離するのは高価過ぎるんじゃないかとか、③そんなことができるんなら地球温暖化なんか簡単にキャンセルできるのに何でさっさとやらないのかとか。この類の疑問を持つ人なら読んで面白いのではなかろうか。

わたし個人としては、CCS(Carbon Capture & Storage)については公害防止管理者/エネ管/電験の勉強をしていた時に、時々情報は入っていた。と言っても、煙道ガス処理についてはSOx・NOx・煤塵が主で、CO2については煙道の前にそもそも発生を抑える話がこの類の技術の基本だ。そんなことでCCSの話が出てもあまり真剣に考えていなかった。実際、この本の著者も認めているように、最近あまり支持者のいない技術である。ただ、別に技術的に困難とか地球温暖化対策に対して無意味とかいうことではなく、単に政治的な理由による、という。

それとは少し違う話で、最近特に化学系の会社を調べていると、やたらアミンを全面に押してくる会社が多い。アミン類自体多様な用途があるが、一つには業界的にはCCSに未来を見ているのも理由らしい。煙道ガスからCO2を回収する方法は本書にも色々述べられているが、現在の主力はアミンを用いる方法で、煙道ガス中のCO2の90%以上を回収でき、回収されたCO2の純度は99%以上という。

というような話に興味を持てる人には良いCCS入門書だと思う。というか、これ以外に素人向けの本があるのだろうか。ところどころ書き方が整理されていないように見える部分もあるが、大した問題じゃないだろう。

出版社 ‏ : ‎ MIT Press (2018/8/17)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0262535755

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