目次と各章で答えられる疑問
- 最近の分野
- 知覚
- 物体を操作するために認識は必要か。
- 腕を切断した人が腕の感覚を持ち続けるのはなぜか。
- 言葉を読んだり聞いたりする時に色を見る人がいるのはなぜか。
- 注意
- 脳卒中の後、左側にあるものを無視する患者がいるのはなぜか。
- なぜ別のことに注意を向けると痛みが和らぐのか。
- なぜ運転中に携帯電話を使うと危険なのか。
- 記憶
- 記憶喪失になっても学校で学ぶ知識を覚えられるのはなぜか。
- 50代になって人の名前を忘れ始めるのはなぜか。
- アルツハイマー病の人が道が分からなくなるのはなぜか。
- 推論
- 種類の違う知的能力が相関するのはなぜか。
- 我々は言葉で考えているのか。
- 人類はなぜ賢いのか。
- 決定
- ぼうっとしていて失敗する時があるのはなぜか。
- 長期的には有利な報酬より短期的な報酬を選ぶのはなぜか。
- 道徳的推論の基礎は何か。
- 点検
- 自発的な行動が自由であると言えるのはどういう意味か。
- 難しい作業をする時にどのように間違いから学べるのか。
- 人はどのように他人の意図を推論できるのか。
- 行動
- 利き手と言語を扱う大脳半球になぜ関係があるのか。
- どのようにしてバイオリンの演奏を学べるのか。
- なぜ自分自身をくすぐれないのか。
- 未来
タイトルから分かりにくいが、上のような疑問に、主に健常者と脳卒中の患者の脳のfMRI画像によって答えていくというシンプルな本である。脳の色んな部位の名前を覚えるのが面倒である以外は、特に難しい話ではないし、何の予備知識もいらない。脳はみんな持っているので、誰にとっても他人事ではない。しかし、例えば、色の認識と形の認識は脳の別の領域でやっていて後から合成される、などという話は、自分でいくら主観を観察しても分からないことだ。
別にそれが分かったからといって、わたしの色と形の認識が変わるわけではないが、どうもこの類の脳科学の話というのは、世界観を揺さぶられる感じがして楽しい。結局、今わたしが見ているこの世界がどうやって構成されているのかという話だ。わたしとしては、今言った「見ているわたし」にも興味があるが、この筆者はその類の質問は哲学の領域の話で、科学の知ったことではないという立場だ。それにしても、fMRIや脳の損傷からの観察は興味深いし、哲学者でも心理学者でも、知っておくべきことだろう。類書を見ないので、翻訳したら売れる気もするが、ちと書きぶりがストイック過ぎるかなあ。自己啓発的な要素は全くない。
Many questions about human cognition are answered by analysis of healthy humans' and stroke patients' brains observed by fMRI. Simple, but enlightening.
出版社: Oxford Univ Pr (2016/12)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198786221
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