2016年6月10日金曜日

H G Wells "The Invisible Man" [透明人間]

古典的名作であり、実際相当面白い。「今読むとやっぱり古い」みたいな意見もあるようだが、わたしは全くそうは思わない。今、透明人間をテーマにした小説・マンガ・ドラマを作っても、こんなに面白くならないだろう。ユーモアもあり、怪奇もあり、謎の感動もある。

話は要するに透明になることに成功した人間の冒険だが、主人公の性格が狂っていて良い。利己的で、自制心が弱く、暴力的である。今だったら主人公を慎重な性格に設定して、透明であることを活かして悪と戦ったりしかねないところだ。夜神月には共感しないがグリフィンには共感できる。元々準備万端で透明になったわけではなく、衣食住の確保から苦労するが、基本的には盗みと暴力の壮絶なドタバタになり、喜劇なのか悲劇なのか判定が難しい。クライマックスでは一つの町を恐怖で支配するとか言い出し、その割に手始めにやることが個人的な復讐というのもこの主人公に相応しい。グリフィンは悪い奴だが、それに相応しい末路を迎えるわけで、謎の感動がある。

この小説を読む人は、自分だったらどうすると必ず考えると思うが、自制心が子供並で、屈強の肉体を持っている上に他人から監視されないとなれば、まあ、遅かれ早かれ、百人が百人こんなことになるんだろうと思う。その意味では、ほとんど普遍的な真理を描く名作文学である。世間でどう評価されているのかあまり知らないが、単なる「SFの古典」ではなく、もっと高く文学的に評価されても良さそうなものだ。訳は見ていないが、古典だし大体大丈夫たろう。

One of the best novels I have ever read. Griffin is a bad guy, sure, and if we contrive a modern TV series featuring a invisible man, we will create him as a hero fighting with evil forces or something. Nonsense. If we have only childlike self-control and a tough body suitable for hand-to-hand combat and are not be seen from others, sooner or later, we will all become Griffin. The Invisible Man tells us a universal truth. This is not only a classic SF, but also one of the great literatures in the world.

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