2026年1月14日水曜日

Spencer Johnson "Who Moved My Cheese ?" [チーズはどこへ消えた?]

Who Moved My Cheese ? (Amazon.co.jp)

チーズはどこへ消えた? (Amazon.co.jp)

20年前に日本で異様に流行った本だが、もちろん無視していた。世界中で売れているが、日本であまりに売れるので著者自ら日本語を習得して、最近でも経営コンサルとして日本をウロウロしているらしい。たまたまそれを聞きつけたのが読むきっかけになった。

本自体は短くてすぐに読み終わるから要約する意味がないが、要するに「変化せよ」ということである。時はちょうどバブル崩壊で「リストラ」という言葉が流行っていた。「自己責任」という言葉が流行り始めたのも同時期で、この本も本質は自己責任論である。変化しない奴は自己責任において滅びるしかない、という考え方だ。つまり企業の人事担当からすれば、非常に都合のいい本だったわけだ。変化(新規事業開拓とか部署移動とか解雇とか)を嫌がる社員は、この本の登場人物の"Hem"という扱いになり、嘲笑されていたのだろう。ついでに翻訳自己啓発書ブームもこの時期に始まったらしい。「七つの習慣」とかそんな流れだ。

シニカルに考えるとそんなところだが、当時の空気を思い出してみる。「会社に頼るな」とか「自己責任」とか「自分の市場価値を高めろ」とか宣伝されていて、小泉=竹中政権はそれを中核的な価値観としていた。その後デフレの長期化がはっきりし、リストラの終了した日本企業は守勢に入り、新入社員には「とにかく会社にしがみつけ」みたいな世界観が浸透した。

そして今、デフレ時代は終わり、インフレ時代となった。一般論としては最早会社にしがみつく必要はなく、転職すればするほど賃金が上がる世の中になっている。まだみんなデフレ時代の恐怖感から立ち直っていないが、バブル時代に成立していた「フリーター」という生活様式も復活しつつある。中国からデフレが輸出されてまた同じこと…という懸念もあるが、昔と違って労働人口の減少ははっきりしている。ダメ会社に勤続しているより、新しいチーズでも探しに行ったほうが良い感じになってきている。未来は分からないが。

その意味でまたこの本が復活するかもしれない。この本は最初は人事担当に訴えていたが、この間、宣伝文句は私生活の幸福という方面での売り込みに変化した。個人的には以上のようなことを考えた以上のことはない。こういう本はかならず名言が一つくらいあるものだが、一つ挙げると"What would you do if you weren't afraid?"だろうか。わたしにはさして響かないが。

最後にどうでもいい文句だが、書名の疑問文に対する答は一切ない。酷い本だ。

Vermilion (1999/3/4)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0091816971

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