2023年9月29日金曜日

Terry Pratchett "The Colour of Magic" [魔法の色]

1983年発表のイギリスのcomic fantasy。本書はDiscworldシリーズの第1巻ということになるが、シリーズはこの後40巻続き、全てベストセラーになり、映像化もされたようだ。

物語の舞台となるDiscworldは剣と魔法の世界で、あまり治安のよくない町にTwoflowerという能天気な観光客がやってくる。背が低くて小太りで眼鏡をかけていて(four-eyes)、首からカメラ的な物をぶらさげている。言葉が分からないが、話す時は会話集のような本を見て話す。これは当時の典型的な日本人観光客のイメージらしい。危機感もなく金をいっぱい持っているので強盗などに狙われることになり、当初、落第魔法使いRincewindも金目当てで近づいて持ち逃げしようとするが、ひょんなことからTwoflowerの護衛をしないといけなくなる。そこからのTwoflower & Rinsewindのドタバタ喜劇。

実質的にはラノベ相当と言っていいのかもしれない。寝不足になる系で、わりと一気に読んでしまったが、普段わたしが読むような小説とはかなり違う。

①タイトルの綴りからも明らかだがイギリス英語である。普段Holmesとか読んでいても米英の違いなんかほとんど気が付かないが、なぜかこの本についてはかなり引っかかる。時代なのだろうか。four-eyesという言い方にしても、Manolito Gafotas/Manolit four-eyesとここでしか見たことがない。

②物理的なアクションが多い。映像と違い、文章で読んでいると何が起こっているのか少し考えないと分からなかったりする。しかもファンタジーの世界なので、文章から現実を逆算するというより、TVシリーズならどういうコマ割りかとか、cartoonならどういう絵なのかという逆算になる。例えばThe LuggageというTwoflowerのペットみたいなのがいる。要するにマンガに出てくるchest/mimic(ドラクエのミミック)みたいなのだと思うが、猛犬みたいな動きもするし、実際の絵は読者のほうで適当に想像するしかない。

③伏線的なものがほぼ回収されない。設定やキャラが散りばめられているが、行き当たりばったりの印象が強い。もっとも、この後40巻もあるんだから、いくらでも設定や伏線は回収する時間はある。筆任せという意味では、わたしは中里介山「大菩薩峠」を思い出すが、最近流行りの考察系みたいなのより気楽でいいかもしれない。

④現実(1983年の英国)への参照が多い。一番印象に残るのは"to boldly go where no man has gone before"という有名なStar Trekのフレーズの参照だが、当時は誰でも知っていたとしても、今となっては相当なSFファンしか気が付かないかもしれない。Twoflowerが首からかけているカメラみたいな物は、中で小人が絵を描いているが、この話が成り立つにはポラロイドカメラが普通である必要がある。当時はまだデジカメがない。フラッシュ(実際にはサラマンダーの虫かご)を焚くのに時間がかかるのも重要なポイントだが、今の常識とずれる。

⑤とにかく中身がない。comic fantasyということでは、昔Alan D. Foster "Spellsinger"を何巻か読んでいたが、読後感がそれに近い。これを読んでもただ面白いだけで後に何も残らないし、人に語ることもない。では、なぜわたしがこの微妙に古い本を読んだのかという話になるが…。

詳しく知らないが、最近、Good Omensというテレビドラマが流行っているらしい。腐女子向けと思われ、わたしは見る気もないが原作がTerry Pratchettらしい。どこかで見た名前だと思ったが、わたしが長年やり続けているコンピュータゲーム"Nethack"の中で見る名前だった。

Nethackは1987年に発表されて改良され続けている昔ながらのフリーのRPGだが、ゲーム内の書店によくTerry Pratchettの小説が出てくる。RPGなので最初に主人公の職業を選ぶが、最も難易度の高い職業としてtouristが用意されている。これは完全にTwoflowerがモデルであり、ゲーム内にも特殊なキャラとしてTwoflowerが登場する…。

というような引っかかりがなかったら一生読まなかったかもしれない。改めて本屋に行くと、Terry Prachettの本は結構平積みされている。わりとケバい表紙のペーパーバックばかりだから今まで目に入っていなかった。そんなに真剣に読むものではなく、旅行中のヒマつぶしにでもというところか。そのうち次の巻"The Light Fantastic"も読むだろう。

A great overture.

Transworld Digital (2008/12/26)
言語: 英語

2023年9月22日金曜日

Arthur Conan Doyle "The Memoirs of Sherlock Holmes" [シャーロック・ホームズの思い出]

緋色の研究(長編)→四人の書名(長編)→シャーロックホームズの冒険(短編集)に続く第二の短編集。いわゆる正典で、間違いなく面白いし、特に世評に重ねて言うことはない。前から気になっているのは、Doyleという人は文体が一種類しかないのだろうか。作品の性質上、語り手はWatsonかHolmesか依頼人その他ということになるが、全員がほぼ同じ文体で、落語で言えば声色を使い分けないタイプだ。ともあれ、ホームズはこの本の最後の短編"The Final Problem"で終わりということになるはずだった。しかし、熱烈なファンから脅迫されたり、連載していた雑誌の売り上げが激減したりで、結局、また復活することになる。わたしとしてもこれでホームズ死亡と言われても急すぎると思う。次はバスカヴィル家の犬(長編)。

Who am I to review a holy canon?

Wisehouse Classics (2020/1/1)
言語:英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-9176376614

2023年9月7日木曜日

George Polya "How to Solve It" [いかにして問題をとくか]

数学の問題を解くための方法論や指導法みたいなこと。世界的に名著とされているので一応読んでみはしたが…。ちょくちょく挟まっている数学の問題の例は面白いところもあるから一応読めるが、はっきり言って退屈だった。なぜこの本がそんなに讃えられるのかは謎である。この本は名声が確立しているし、一応数学書だから褒めておいてレビュアーにとって損がない、というのは別として、数学の先生の指導法ということならもしかして役に立つのかもしれない。あと、ぱっと見、日本語はもっと読みにくそうだ。

Boring....

Penguin (1990/4/26)
言語:英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0140124996