2012年9月6日木曜日

Paul Krugman "End This Depression Now!"

この本については考えることが色々ある。どうでもいいことから始めると、「さっさと不況を終わらせろ」という残念なタイトルと売り文句で邦訳が出ているが、Amazon.co.jpに少し出ている訳者解説だけでも翻訳の質の想像がつく。この訳者は80年代ニューアカの生き残りか何かなのか。特に、内容が左派(とされている)であることを考えると、本書が誤解されるのが怖い。 もっとも、わたしは翻訳の中身は読んでいない。

内容は、要は、不況なんだから財政出動せよという、普通のことを言っているに過ぎない。もっとも、その普通が通らない世の中なので、わざわざこんな本が出て来るわけだが、真面目にマクロ経済を学んだ人には、特に斬新な内容はない。わたしはマンキューだったが、それでも普通に思える。スティグリッツは不平等の解消が景気回復につながるという点を強調していたが、クルーグマンの場合は本当にただ常識を述べているだけだ。唯一、ユーロ危機については、少し勉強になった気がする。

わたしは経済政策をどうこういう立場にはないが、純粋に政策的には、多分、ケインズ派が正しいのだろう。この本を手に取ったのは、別にノーベル経済学賞を信じているからでも、左派だからでもなく、単にクルーグマンへの批判がアホ過ぎるから興味を持っただけだった。実際、わたしは業務で高名なネオリベ経済学者の講演を聞いたりすることもあるが、内容がどうこう以前に、学者としての資質が疑われる。

ただ、個人的には、この本の冒頭の献辞"To the unemployed, who deserve better."から、既にうさんくささを感じる。言っていることは正しいとしても、こういう大義名分を持ち出す人間は、どうも信用できない。明らかにウけようとしているだけだし、ちょっと安さを感じる。ただ内容はごく普通のマクロ経済学なんで、初心者でも安心して勉強できるかと思う。

As a Japanese friend of yours, I can assure you that living in mild depression is not so bad after all. Deficit hawks should take a look at the situation in which Japanese government is currently placed. America is much larger and stronger than Japan. I just do not understand what Americans are afraid of. And you have great economists, which is not the case in Japan. Cheer up!


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