2025年8月23日土曜日

Pete Wharmby "Untypical: How the World Isn’t Built for Autistic People and What We Should All Do About it" [非典型的:どのように世界は自閉症者のために作られていないかとそれについてどうするべきか]

 Untypical (Amazon.co.jp)

世界は私たちのために作られていない (Amazon.co.jp)

ASD者によるASDの啓発書だ。基本的にASD者向けではなく、健常者向けに書いている。ASDとしての体験、そして社会への提言。ASD者・関係者にはお勧めというより必読書だし、関係ない(と思っている)人も読んで損はない。というか本当は全員に読む義務があると思っているくらいだが。

こういう本が出始めたのはここ十年くらいのことだろう。これまでほとんど読まなかったのは、話として悲し過ぎるし、こんな説明をどれだけ健常者向けに書いたところで、結局理解されないだろうという絶望のせいだ。それほどASDは社会から拒否され続けてきた。この本でもどうだろうかと思う。興味のない人はそもそも読まないと思うのでそんなに反発を食らうこともないと思うが。

この件については色々考えることがあり過ぎて、ここに書く気になれない。ただ、わたしはどのみち長くて数年以内に退職してヒマ人になる予定だ。何か有意義なことをしたいと思っていたが、ASD関係に関わっていくのがいいかもしれない。

出版社 ‏ : ‎ Mudlark (2023/3/16)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0008529260

2025年8月11日月曜日

Thomas Hull "Project Origami" [折り紙プロジェクト]

 Project Origami (Amazon.co.jp)

ドクター・ハルの折り紙数学教室 (Amazon.co.jp)

想定されているのが高校または大学程度の数学の教室で、折り紙を通じて数学を学ぶための実習のアイデアが数学教師向きに30解説されている。

ある程度折り紙の好きな人が見た場合、純粋に折り紙のアイデアとしては特に珍しいことは書いていない。と言って、別にこの本で何らかの数学が体系的に学べるわけではない。イメージとしては、たまたま折り紙の好きな数学教師が、自分の教えているところと関連のあるプロジェクトを一時間くらいぷっこんで来る感じ。「映える」授業という感じか。

もっともそれが生徒にウケるかどうかは謎だ。もともと折り紙という趣味がマニアックであり、我々は普通に解説しているつもりでも、一般人から見ると熱量にドン引き、ということはあり得る。折り紙好きとしては一度は読んでおきたい本だが、普通の人は折り紙なんか10歳になる前に卒業してしまうからな…。

結局、折り紙が好きな人と数学が好きな人がそんなに重なっている気がしない。月刊おりがみに数学のコーナーはない。確かに自分のことを考えると、初等幾何が異様に得意だったのは間違いないし、折り紙好きと無関係とは思わないが。

というわけで、なかなか誰にでもお勧めというわけにはいかない。本書の想定読者である数学教師とか、たまたま数学にも折り紙にも両方に興味のある人は読んで損はないと思う。天下のRoutledgeだ。

出版社 ‏ : ‎ Routledge; 第2版 (2013/2/11)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1466567917